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9年間灼熱カバディ1話から最終回まで追っていたオタクの心情

このnoteは灼熱カバディの武蔵野創先生作品にハマってから抱いてきた1人のオタクの気持ちを表現したnoteです。灼熱カバディを読んでる前提の記事です。このnoteのタイトルに興味を持って、読もうとするなら灼熱カバディは絶対読んだ方が良いです。
2024年7月末の最終話までマンガワンと裏サンデーで全話無料公開中です。8月以降もマンガワンなら1日8話ずつ無料で読み進めることができます。

灼熱カバディとは

マイナースポーツ『カバディ』にかける男子高校生たちの戦いを描いているスポーツ漫画。人間の『意志』や『感情』をカッコよく描かれている作品です。

2015年7月2日にマンガワンで連載開始、2024年7月23日最終回を更新し、9年間の連載が終了しました。WEB&アプリ漫画です。


灼熱カバディ作者、武蔵野創先生作品との出会い

武蔵野創先生は灼熱カバディがデビュー作ですが、私が武蔵野創先生の作品を知ったのはデビュー前の話になります。今から11年前、2013年のことでした。
そもそも、私が武蔵野創先生を初めて知ったキッカケが『有線戦線』という裏サンデー投稿トーナメントに出ていた作品でした。今でいうジャンプルーキーやDAYS NEOのようなところ、というか出版社がメインにするWEB投稿サイトの1番初めに実施したと思います。まさに先駆け。
裏サントナメは読切を投稿するのではなく、1話目を発表し読者投票で上位の作品を決定、後日その上位作品2話目を発表し読者投票で更に上位を決め、最後の生き残った上位作品で3話目を発表し、優勝した作品が「連載決定!」というものでした。読者は1週間程度、毎日投票できました。

『有線戦線』はその裏サントナメの第2回目に発表された作品でした。第1回目の裏サントナメの作品もおそらく見ていますが、記憶に残っていません。当時は現実のプレッシャーから逃げたくて私はWEB漫画を異様に読んでました。個人サイトのWEB漫画を読むのと同じように漫画家志望者の作品も読んでいました。ただし記憶に残ってるのはごく僅かです。商業漫画の方が圧倒的にクオリティが高いので、そっちの方がたくさん覚えています。ですが、裏サントナメの第1回〜第3回の上位作品は面白くて特に心に残っています。

『有線戦線』はゲームのような世界に入って戦う男女バディものでした。主人公の流一くんもヒロインの優ちゃんもカッコよかったなぁと記憶しています。ただ、正直その時は本編よりも場外乱闘になってるTwitterの方が面白かったです。トナメ参加者たちのやり取りだったり、お互いのファンアートを描きあっているのを眺めていました。当時、裏サントナメは優勝者だけが連載との話でしたが、第2回目は結局2位や3位の作品も連載決定となり、『有線戦線』は4位で連載化しませんでした。私の中では1位の『懲役339年』だけでなく、2位の『Helck』も大好きなので、結果に不平はありませんでした。どちらも単行本を購入し友達にオススメするくらい好きなマンガです。一方、Twitterでは武蔵野創先生が4位で連載にならず、当時の参加者さん同士イジられているのが印象的でした。それは第3回のトナメで特に顕著になりました。

2014年第3回トナメで発表されたのは、バスケ漫画『最低のリングスター』でした。
『最低のリングスター』は「151cmというバスケをするには最低の身長である、バスケに恋する主人公」と「同じく最低の身長である、倒したい人間のためにボクシングからバスケを始める主人公」のW主人公を中心とした男子高校生たちのバスケ部活物語です。とても面白かったです。もちろん、『最低のリグスター』より灼熱カバディの方が当然面白いのですが、『最低のリングスター』で描きたかった話が灼熱カバディに受け継がれてると思います。
『有線戦線』は正直言って、漫画家志望者の漫画だなと思っていました。作画はピカイチでしたが、ギャグ描写がワンピースの作画とまんま同じのところとか。もちろん、靴の裏や水の描き方が上手く、流一くんの機械化した脚をカッコよく描き、今後出てきそうな有名ゲームが元ネタのキャラはどんなんだろうと想像していましたが……「私は好きだけど、ヒットするのは難しそう」と思っていました。もし『有線戦線』が連載化していたら、単行本も買っていたと思いますが、ここまで熱心にハマっていませんでした。
しかし、『最低のリングスター』を読んだ時の感動と衝撃は今でも覚えています。そう。武蔵野創先生作品で灼熱カバディと出会った読者と同じくらい、私は『最低のリングスター』で、その感動を味わっていたのです。
『最低のリングスター』は、正確には武蔵野創名義ではなく、相川源名義での発表でしたが、作画で一瞬でバレていました。
そして、私は『最低のリングスター』が凄く面白く、大好きだと感じました。同時に漫画力の向上にビックリしました。ここまで成長できる漫画家がいるのだろうか。そのくらい衝撃がありました。多くの漫画と出会ってきましたが、この感覚を私に与えた人物は武蔵野創先生だけでした。この衝撃があるから、私は早々に灼熱カバディの単行本特典ペーパーを全て集めて、情報を集めていくようになりました。

『最低のリングスター』で、まだデビューをしてない武蔵野創先生を私は初めて漫画家志望者から漫画家と認識しました。
そして、何故こんなにも自分の胸を打つのだろうかと考えました。結局、私は『最低のリングスター』の主人公の1人のバスケに恋する星恒成くんが好きなんだと結論づけました。彼の1つ1つの行動が好きで、泣き顔と笑顔とバスケに恋する姿が大好きでした。星恒成くんの台詞「心血注ぐと、愛は物理的に帰ってくるんですよ」と言った時の表情がカッコ良くて、その意味が分かった後の「ね。帰ってきたでしょ。愛が」と笑う姿が大好きでした。イップスになりながらも愛を貫いたバスケをする姿に胸が高まりました。

しかし、『最低のリングスター』は連載化しませんでした。
結果発表には、『4位』、
そして『新作で連載決定!』の文字がありました。

どーして、こんな面白い作品を連載しないんだろうって、編集部を最初とても恨みました。「1位だけじゃなくて2位、3位も連載化した実績があるなら、4位も連載化しろよ、こんだけ面白いんだから…」と。
もちろん後からになってインタビューで武蔵野先生の「別の競技でスラムダンクを超えたい」や「描きたいことは競技が変わっても変わらない」などの思いを知りました。ただ当時の私は知りません。当時私が知っていたのはトナメ開催(読者投票期間)中、武蔵野先生のTwitterで「また4位は嫌だ!1番がいい」のツイートです。残念ながら武蔵野先生のTwitterアカウントは作画をもっと良くするためという理由で灼熱カバディ連載中に消えました。武蔵野先生の正確なツイート文面は覚えてませんが、デビュー前から1番を取りたがっていた武蔵野先生のことは覚えています。
また4位を取ったから、連載化しなかったんだ。自分の応援が足りなかったんだ。自分がちゃんと応援していなかったから。毎日投票するだけじゃダメなんだ。Twitterも活用して誰かに作品を広げられるようにならないと、自分の好きな作品も好きなキャラも一生見れないんだと、後悔しました。

ああ。次は、ちゃんと応援したいなと思いました。

だから、灼熱カバディが連載するって予告が出た時に、すごく嬉しくて泣きました。
武蔵野先生は成長度がすごい漫画家なんだぞ。
その頃には私は知っていました。
デビュー作である灼熱カバディが有名になったら、もしかしたら過去の作品が収録された短編集が出て、最低のリングスターがまた読めるかな、大好きな星恒成くんを知る人が増えるかな、と期待に胸を膨らませてました。

今度こそ、ちゃんと応援するって決めていました。

ただ、「ちゃんと応援するって、どーいうことかなぁ」と何度も思いました。コミティアで買った同人誌に「マイナージャンルの布教方法」があり、勉強しました。
『楽しそうにするオタクに、人は惹かれていく』
「なるほど」と思い、楽しくオタク生活をしようと思いました。
それは、もう9年間楽しく過ごしました。

リアルのカバディも、とても面白かったです。会場に足を運び試合観戦するのも、YouTubeでカバディ選手の解説を聞きながら試合観戦するのも、インドの迫力を感じながらプロカバディを観戦するのも大好きです。

2026年アジア大会名古屋開催で日本代表やインド代表の試合を観戦できるチャンスがあり、とても楽しみです。
灼熱カバディのおかげで楽しい思い出がたくさんありましたが、
一方で悔しい思いもしました。


悔しい思い

1巻が全然重版しなくて、焦って買い足して友達に単行本をあげました。当時、Twitterでは引きこもっていたんですが、積極的にツイートするようになりました。毎回複数ヶ所の書店で新刊の予約をしました。予約した書店で平積みしてない時には残念な気持ちを隠すのが大変でした。

単行本の重版を繰り返してる作品が宣伝費がいっぱいあって、書店に推されてアニメ化をして羨ましいと思いました。でも、それが当然だとも、その作品の読者の力が凄いんだとも思って、自分も頑張ろうと思い、読者1人の力でできる草の根活動だけしてました。

アニメにはなりましたが、1クールだけで低予算と言われているほどで、とても悔しかったです。あの制限の中、制作側は愛を込めて頑張ったと思います。一方で、やはり単行本の売上でアニメの予算が決まるんだと思いました。売上に貢献できるほどの応援が足りないと感じて悔しかったです。2クールできるくらい応援したかったです。でもアニメのおかげで灼熱カバディの読者が増えたことが嬉しかったです。

プレゼンするのが難しかったです。1日中ずっと考えていて、最後に「灼熱カバディ面白い」とTwitterに投稿した日もあります。
「1話から読んでの積み重ねが大事だから」
「ネタバレなしで読んで欲しいから」
「灼熱カバディで読んで欲しいから」
「この感動を伝えたいから」
9年間ずっと多くの灼熱カバディ好きの人たちと、「どう布教すれば良いのか」話をしてきました。完結後もTwitterのスペースで「どう灼熱カバディをプレゼンして、どう布教すれば良いのか?」話をしたので、今後もしそうな予感がしました。
私にはTwitterでバズらせて布教できるほどの力はありませんでした。結局、友達にオススメしたり、オフ会で1対1での布教で草の根活動しかできませんでした。

灼熱カバディを読者投票型の漫画賞に入れようと思って、たくさん漫画を購入したこともあります。ランキングに掠りもせず全然力になれませんでした。あの時「読者がもっといたら…」と何度も思いました。マンガワンで実施された読者投票型の全作品対象イベントでも、この思いをしました。

「この漫画はWEB漫画界で見開きがすごい漫画で、WEB漫画界の先駆者」と『別の漫画』がある漫画賞の審査員に紹介されていました。『別の漫画』は灼熱カバディの後に連載されている作品で、当時灼熱カバディ167話が公開されていました。漫画賞の審査員には読まれていない作品だとわかって、そこまで伝えられる応援ができなかったことに悔しい気持ちになりました。

『マンガワンじゃなかったら、もっと有名になっていた』
その言葉を見るたびに、1巻初動は打ち切りになってもおかしくない売上のことも、担当編集の小林さんが灼熱カバディをどんだけ支えていたか話を早口で喋るオタクになりそうで抑えていました。今月公開されたYouTubeのウラ漫の武蔵野先生密着動画のおかげでファンにマンガワンの小林さんだからできたことが広く伝わったのが良かったです。


『知名度が面白さに比例していない作品』
その言葉を見るたびに悔しかったです。でも、その言葉を言う人も悔しい思いをしてるのを知っています。それが1番悔しかったです。私は最初から灼熱カバディを知っていたから、その言葉が生まれる前から灼熱カバディが有名になれるほど応援したかったです。

『そんな応援しなくても良くない?』
『打ち切られなかったんだから、良いんじゃない』
「私がどんな想いで、やってきたか……星恒成くんは…」と思っては、この感情を伝えきれないので、やめました。また、言った人の背後に愛する漫画が見えました。

別に灼熱カバディが漫画賞を取ることで、誇りたいわけじゃなかったです。でも、「灼熱カバディがすごい漫画だ」と…「たくさんの人に読んでもらえるなら」と思って、「漫画賞を取れば誰かが灼熱カバディに出会う人が増えるかな」って…自分に無理なく、できる限りのことをしてきました。

だって、武蔵野先生が努力してきたのを知っているから。
すごい漫画だと知ってしまったから。
こんなにも好きになってしまったから。

でも、灼熱カバディ読んでいたら、全ての気持ちが吹き飛びました。更新時間になると、楽しかった気持ちも悔しい気持ちも全部忘れて灼熱カバディの世界に夢中になりました。
これを9年間、毎月、隔週、毎週どんどん面白くなる灼熱カバディを読んできました。最高の時間でした。

たくさんの良いこと

応援しながら、たくさんの良いことがありました。応援していると、同じく灼熱カバディが好きな人と出会い、楽しく遊びました。このnoteには悔しかった話を長々と書きましたが、それ以上に楽しかった思い出がたくさんあります。それは書ききれない程でTwitterに9年間残していきました。
灼熱カバディを一緒に語り合うのが楽しかったです。
色々企画してはご協力いただいて、ありがたかったです。どれもとても楽しかったです。近々では東京新聞に有志のファンで灼熱カバディへのエールを掲載しました。

古参新参話をネットで見かけては、ちゃんとした古参になれているか、いつも不安でした。ダメな面もありながら、それでも仲良くしてくださった方や見守ってくださった方にとても感謝しております。

最終回が近いと思った頃、私は相当凹んで、Twitterもできなくなるんだろうなぁと予測していました。でも、5月末にマンガワンと裏サンデーで灼熱カバディ全話無料公開が始まり、とても嬉しかったです。さらに、この全話無料公開施策が始まる時の武蔵野先生の言葉を見て、とても嬉しくなりました。

「支えてくれたみなさんの力を使った」

ああ。支えられていたら、いいなと思いました。
その1人になっていたら、とても誇りだなと思いました。

全話無料公開のおかげで、とても元気になりました。灼熱カバディを応援するのが、とても楽しいからです。どんどん読む人が増えていくのも嬉しくて、「凹んでる場合じゃねぇ!祭りだ!!」となり、ずっとお祭りの中にいる気持ちでした。
灼熱カバディは何度読んでも面白いマンガです。
灼熱カバディに出会えて、すげぇ幸せな読者だなと思います。
ゆっくりとでも、読者が増えるところまでを見れたのが幸せでした。

願うことなら、1人でも多くの人に私が感動した時間と同じように灼熱カバディと出会う経験をして欲しいと思います。

今度こそ、ちゃんと応援できていたなら、
とても嬉しいです。

終わり

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