市内の中心部。アーケード周りは商店街の夏祭り。
隣町からバスに乗る帰宅途中に通りがかり、少し迷う。ここで下車する。
中央ステージよりフードコートそれぞれ、イベントスペースは親子連れに学生たち。それなりの人出が見える。
ただただ暑い日差しの真っ昼間。わたしは一直線に観光案内施設を目指す。

特設舞台は開演まで少し時間がかかるらしい。
そもそも始まりから全てを見る予定もなく(3時間近くの長丁場)。一方、この建物内で過ごすにはスマートフォンのバッテリー残が心もとない。
ひとまずスリープと省電力モードに切り替えて、ぼけーっと。
知り合いを誘ったLINEメッセージは、まだ向こうの既読が確認できず。
暇を持て余す一人だけの休日。
というか、知り合いからの返事を受信しうる状況もまた危ういか。

再度、外へ出る。
一個一個の各イベントスペース横を素通りしつつ。そうして次の瞬間、二十数年ぶりか、クレヨン片手に迷う自分がいた。

ペイントコーナー。
何でもいいから自由に描いてみよう。
その触れ込みを前目に面白がると同時に、お絵描き自体がしばらく覚えがないなあと固まる。
とりあえず自分の左手を写すことにした。

下書きの見た目は鳥のクチバシみたいになっていた。
まあ、いい。好き勝手に他の色も塗り重ねてみよう。
濃淡。よくよく手の甲が日に焼けているなと観察する。
焦げた色、茶色、オレンジ、ピンク。
これをやっていく内にだんだん楽しめてくるから不思議なものだ。

その後のLINE通知に気づくまでは時間差が生じて、結局は自由に歩き回っただけで終わる。
あちこちに七夕飾り、揺れる笹の葉。勢いよく回る風車。ミストシャワーにシャボン玉。
一枚くらいは残しておいてもよかっただろう。
もう終わった後で。

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