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はなかり市の備忘録

5月11日(土)青森市・快晴・はなかり市

今年の冬「はなかり市」の存在を知った。
主催は若い世代のみなさん。実行委員長の成田安香音さんは、ぴょんぴょん跳ねる女の子だ。
青森の文化を若い世代が盛り上げていることに驚いた。これは絶対に参加せねば!と直感的に決めた。
文フリよりはなかり!
 自分も規模は小さいけれどイベントをよく企画するので、その苦労や熱意はよくわかる。絶対に応援したいと思った。それがわたしの役目だ。
 私が青森にいた頃は、アウガという駅前の商業施設のヴィレッジバンガード、古川の文化屋雑貨店などに好んで通っていた。(「うきぐも」のCDも数枚アウガで買った。)それが東京に憧れる私の精一杯の文化だった。

 私はただの土偶のTシャツを着たおばさんである。そんな私のZINEをSNSにあげたとて、友人たちが買ってくれるのがせいぜいだ。(友よありがとう。)しかも持っていった「グッモー!グッモー!」も「飲食ZINE」も説明しないと何が何だかわからない作品である。ノルドベースの説明だってなかなか難しい。だから当日は、お客様にたくさん説明し、興味を示していただけたり「ふーん」で終わったり様々だった。それでも説明し、対話するのは本当に楽しくて、嬉しい時間だった。さらには実際に買ってくださる方がいることに、心底感激した。

 手刷りの版画ZINE「アイデンティティ」は思いがけず数冊売れて、これはもう本当に嬉しかった。タイトル通り自分自身をさらけ出した。こんなのもう二度と作れない。版画を1枚刷るごとに「ブンバップ!」と叫んだ。
 背中合わせのご出店者さんである、イラストレーターのもなかさん(有名人)が版画を見て「いつもデジタルで描いてるので、1つ1つ違う手作りのアナログ感、いいですねぇ」と言ってくださったのが印象的だった。デジタルで描いている方ならではの視点だと思った。スーパーでもどこでも、割と世間の人は整った商品を選んで買おうとすることが多いと思う。私は大量生産のものより手作り品が好きなので、この手作りの揺らぎを好きだと言ってもらえるのは最高に嬉しい。

 深夜に一人版画を刷り、変なテンションで「ブンバップ!」と叫んでいたが、これは川村有史さんの歌集のタイトルである。湧き上がる自分のアイデンティティと、ブンバップ!という言葉がシンクロした。早く読みたい。当日は川村さんご本人からご著書を買うことができた。なんと川村さんも私の版画の動画を見てくださっていたらしく、お買い上げくださった。こんな嬉しいことはない。なんたって、ブンバップ!しながら作ったんだもの。川村さんはものすごくシュッとしておしゃれな方だった。でもすごく優しくて、ちょっとシャイで…短歌とは異質なように思えるけど納得の親和性を感じた。東京に戻って井の頭公園でブンバップを読んだ。生きること自体のむき出し感と、想像力を掻き立てられる言葉、脳裏に浮かぶ川村さんが、ぐるぐる。お母様の歌がどれも印象的。飲食ZINEとかカウリスマキとかブンバップとか、地を這うような、腹の底に地鳴りのように響く何かを感じる。直接ご本人から買えて本当に良かった。


 ノルドの名誉顧問である小友聡牧師の妹さんも来てくださった。ニコニコと可愛らしい方で、小友さんのことを「さとちゃん」と呼んでいた。なんて可愛い兄妹なんだ。さらには小友さんの教え子である青森市松原教会の池田牧師と妻で詩人の彩乃さんご夫妻ともお話しすることができた。詩人てすごい!「牧師と詩人本」を読んだら、初めて詩を書いてみたいと思った。

他にも、らむねくりという詩人のご夫妻、山田真佐明さんと山田彩緒さんの詩集もすごく心に沁みた。ノルドのみんなに紹介したい衝動に駆られ、東京の仲間の顔が浮かんだ。かれんちゃんの川柳も良かったし、ローカルから革命をさんの存在自体にしびれた。他にもたくさんありすぎてもう書ききれない。ぬまりさんにも会えた! 


 私は時々念力が使える。先月中学のバスケ部の顧問と実に30年ぶりに東京で再開した。その時話題にでた、美術の先生のことがずっと気になっていた。中学の時私の版画を褒めてくれた人物である。青森市に在住とのことだったので、はなかり市に偶然来るのではないかと根拠もなく確信していた。残念ながらはなかり市には来られなかった。イベントが終わって、らせん堂さんに向かってスタスタ歩いていたら、さくら野の前で、恩師とばったり遭遇した。「やっぱり会えましたね!」と言ったら、先生はなんのことだかわからずでも驚き喜んでくれた。私は版画を差し上げた。ほらね、会えた。

次はどこへ行こうか。
もっとZINEを作りたいと思った。
やっぱり私は直接販売したい。行商したい。逆に直接説明しないと1つも売れないだろう。
ダイレクトに繋がることの価値と、自分にはそれが合っていることをはなかり市で確信した。

お世話になった皆様、知り合えた皆様、本当にありがとうございました。はなかり市は陽だまりのように温かくて優しくて、居心地のいい居場所でした。
これからもよろしくお願いいたします。

ノルドベース
トモコ

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