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洞口依子のら猫書簡

モナミ・ヨシミへ

おーい、元気か?

梅は咲いたか 桜はまだかいな

春はまだだと言うのに、春はまだかなと、問うこの頃。君は沖縄で元気でいることと思いたいよ、なんてったって迅速丁寧な睡眠優先の君だからね。

ところで猫は元気かしら。

そう、あの豊見城で拾ったあの、仔猫ですよ。

まるで天から降ってきたようなあの子を拾ったあの春を思い出します。あれは、昨年の4月でしたね。夜中に大雨が降ったであろう那覇の朝でした。ベランダの窓を開け放ちいつものように掃除をし始めていると、どこからか、仔猫がミーミー鳴く声が。また島ねこが生まれてどっかで騒いでるんだろうくらいに放っておいたんだよ、だって、春は島ねこ出産祭りでしょう、それに私には東京にミス・ニャーリーもいるわけで、浮気なんかシヨウがものの口もきいてくれやしないあの恐さは君も知ってるだろう?ニャーリーは最近益々女王陛下並みに威張って益々元気だ、19歳説がある彼女からは想像出来ないくらいに。

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で、その仔猫の話の続きだが、ミーミー鳴きやんだかと思った頃に、私は下に停めていた車を発進させて、豊見城にある病院まで出かけたんだよ、15分以上かかったかな昨夜の雨が嘘みたいにかなり晴れて暑い日だった。遅刻しちゃならないとキビキビ車を飛ばして豊見城の病院に到着、車から降りて病院玄関に向かおうとしたら、件のミーミーが何処からともなく聴こえてくるじゃないか。何処探してもミーミーの正体は見当たらず。まさかと車の下を覗くと、小さい薄汚れた毛玉が丸まっているじゃないか。それが、あの仔猫との出逢いだったんだ。

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恐らくはまだ生後ひと月にも満たないであろうその容姿はニャーリーがうちにきた時に似ていたから推察はできた。私は困ってしまい、この暑さだし、埋め立て地のこの辺り周りは真っ平らで何もないし、とにかく死なれては困ると思い、咄嗟に手を差し伸べたら、待ってましたといわんばかりに私の掌にすっぽり収まったじゃないの。予約時間は迫ってるし、これもこれで困ってしまい、とにかく車の中にのせて、幼児虐待とかにならないよう、薄く窓を開けて、奴を伊勢丹のエコバッグに入れて、ちょっと待ってて貰ったんだ。それからは君も知るところだ。あちこちにでんわしたりして、里親探しが始まった。診察中も気もそぞろ、なにしろ仔猫が茹だるくらい暑かったんだあの日は。診察終えて急いで車に戻ると中に居るはずのあいつがいないじゃないか。慌てて探しまくると、また車の下にいるじゃないか。なんで?あの薄く開けたあの隙間から出たの?ってあそこまでよじ登る事が出来んの?なんか瀕死な声だしてたじゃん!?私はまた伊勢丹の袋に奴をいれて、抱きながら里親探しをしてくれる松川のまきやんちにむかったんだよ。つか、なんでこの仔猫は車の下にいるの?そもそも朝から家の外でミーミー鳴いていた声の正体は君で、ではなぜ君は私の車にいったいどうやって壺川からこの豊見城まで、しかも結構アップダウンもある道のりを、君はこの車のどこにしがみついていたの?つか、もうその生きるひたむきさ、必死さに、私は参ってしまったんだな。まきやんちに着いてからミルクをやるとゴクゴクのんで、彼が風呂に入れてやりノミをとり、那覇動物病院に連れて行き診察が終わる頃にはもう、しれっとしたり顔で、あたい、もう“のら”じゃないやーい!って顔してたのを私は見逃さなかったよ、こいつはきっと宇宙からきた宇宙猫だ、うちのニャーリーと同じく、宇宙からなんらかの使命をうけてやってくる宇宙猫の存在は薄々気づいていたから。

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てなわけで、縁あってきみんとこに仔猫はおさまるわけだが、年老いた穏やかな先住猫もいてマッチングには大変な苦労もあったよね。本当ありがとうございました。名前もつけてもらえて、わたしはお尻ばかり突き出して尻光線が発達したなかなかの強者だと思って、オシリーでいいじゃんと思ったが、可愛い名前をありがとう。しかし、あれは間違いなく宇宙猫だからな、お気をつけあそばせ。

じゃあまたね、ねこちゃんずと嫁と元気でいてよ。ご機嫌よくお過ごしなさってね。

バンクーバーより、依子 🐾

追伸

この変なアピールはどう見たって宇宙猫だろ。god bless you!

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