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上の口は餅食う口、下の口は鬼食う口

  nee さん、武富一門、みなさんお元気でしょうか?
 2022年もあとわずかとなりました。
 私は現在のらっと沖縄におります。
 正月支度に忙しい市場をのらのら歩いたり、ハヤシの母ちゃんターミーと早めの年越しそば&南部ドライブを楽しんだり、『シマ豆腐紀行』の著者である宮里千里さんのお宅に盆菜を鍋ごと持参で突撃お邪魔したりと、相変わらずの“のらのら”道猫まっしぐらな年の瀬であります。
 千里さんのお宅に盆菜を持参で押しかけましたが、非常にあたたかい歓待を受けました。まるでこれぞ琉球と言うような、アジア文化交易といいますか、中国のおせちと言われる盆菜を囲んで宮里家の手料理と、千里さんの土地のあちこちで採音したさまざまな「音」を楽しみながらの小惑星旅行をしたような宇宙ネコ気分の不思議な一夜でありました。あの金城の濡れた石畳の小径がますますそんな気分にさせるのもありますが、その家の醸し出す個性なのか、アジアのどこかにいながら、そこはどこでもないどこか、全く違う惑星に身をおいた気分でした。初めての盆菜に舌鼓をたんたか打ちながら早くも福がやってきたかのようなまだ大晦日にもならない不思議な一夜。
忙しかった2022年の締めくくりに相応しい、のんびりとありがたい時間でした。


持参の盆菜を振る舞う私、宮里千里さん宅にて
盆菜は縁起がいい中国のおせち



ふと、気づいたのが、千里さんのお家の近くには、ムーチー伝説で有名なあかぎの大木の金城御嶽、そしてホーハイ御嶽があるということ。そして奇しくも2022年はムーチーを食べる機会が2回もあるということ。こんな年もあるんだなあと、私も1人ムーチーを食べながらこれをのらのら書いております。それにしても、あのムーチー伝説は宮里家で聞いただけでも色々な解釈あって、さらに不思議な気持ちに。ホーハイという意味もあれはなんだろうなとずっと思っていたのですが、なるほどと溜飲下がり、私にも口はあるぞと。上の口は美味しいものを下の口は鬼を沈めさせてやるのだと、これって構造上女として生まれてきた宿命みたいなものなんか、まあ下の口はいつの時代も女の最も神聖であり最も凶器でもあるものだと、進駐軍がやってきた時代然り、振り返って考えてみるのであります。

あの頃から東京もすっかり変わっちまいました。
先日はオークラが消えてしまい、もう狸穴も、六本木も、私が親しんだ街の痕跡は消えつつありました。時代が変わるという一言で終わらせたくない思いもありますが、さんざん遊んだからもういいかと思う気持ちもあり、でも街の表情がガラリと変わってしまうのは、なんだか切ない気持ちに駆られました。


進駐軍のクリスマスカード
10代から良く通った道
朝、夜、昼と、ここはあまり変わらない気がする
オークラも消えた
麻布警察はとっくに建て替え


話はムーチーに戻ります。ホーハイ御嶽の話を耳にして、ホーハイ節や台湾のホーハイヤンとはどう違うのかとか、物事にはなんとなく表と裏の縫い合わせがあるのではないかとか、独りのらっと想像してみたり。千里さんとは、緊張したせいかあまりテキパキとお話しできませんでしたが、豆腐の本にまつわるお話もつながり、欲しかった本も千里さんに頂けたりラッキーな年の瀬であります。

オフショア、読みたかったんです

さて、長い長い2022年が終わります。
私にとっては、2021年から2022年が続いていて、それは将軍の撮影でカナダに2021年秋から今夏まで行ってたからという理由もあるものの、本当に戦場に出向いた感じの長ーい時間の終わりです。そして今年は私の指針であり星であった監督の訃報にもうなだれっぱなしで、もう映画に何を求めていいのか、自分が何をすべきなのか、しばし途方に暮れていたところに、冨永監督からお声がかかり、新作にちょっとだけ出演となりました。カナダ帰りの私に声をかけてくださったことは何よりも嬉しかったし、冨永作品に出られることは、私にとって映画に刻まれるという、まるで光の刻印をうけるようでもあり大変栄誉なことなのでもあります。将軍も然り、公開はまだまだ先になりますが、楽しみにしてください。

そして、今年は宮古島に救われた年でもあります。カナダから帰国して途方に暮れていた私に、寄り添ってチアアップしてくれたおかげで今の私がいます。心より感謝です。ネフスキーの本もできてよかったですね。海蛇との出会いでそれまで距離を置いていたネフスキーもちょっと近く感じました。この夏の宮古で得たものは私の活力となり、私の静けさにもなりました。心より感謝いたします。

2022年は主演作品の一般上映もありました。カナダにおりましたので、ネットでの舞台挨拶となりましたが、今作には黒沢清監督をはじめ、素晴らしいコメントを寄せていただき、そして上映に駆けつけてくださったお客様に心より感謝いたします。主演作品の上映は今後も続きます。もしかしたら春には沖縄上映もあるかもしれませんよ、その時はまたよろしくお願いいたします。

長くなりましたが、今年もあとわずかです。昨年はカナダでの年越しで、実感したのは、新しい年というのは、気分新たにまた挑戦できるという清々しさがあるのだなと思いました。古きをあたためて新しきを知るの蛍の光の歌詞じゃないですけれど。なんだか気持ちがほっこりとワクワクします。除夜の鐘の謐けさもいいんだけど、友や家族と古きにほっこり、新しきのワクワク感を分かち合いたいなあと思いました。

スティーブストンの日本人居留地の風景

私は個人的には、2022年は得られたものが大きかったゆえの、思考の年だったと思います。考えすぎも良くないですけど、まずは行動する前にしばし考えることも大事なのだと。そして考えるというのは、次に続けるための時間でもあるのだと。ですが行動あるのみ、やはり移動する民は強しという私の16歳くらいからの持論は変わらず、移動先ではまた新しい出会いもあったり、私はかなり外人サイズになりましたが、それもそれで面白がろうかなと思います。

冨永監督と

また来年もよろしくお願いします。
元気でね、 良いお年を。
依子

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