つかまり立ちGlyphs(第0回)
インストールと起動……の前に
Glyphsのインストールと起動はシンプル。
公式サイト https://glyphsapp.com/ から体験版をダウンロードします。サイトが全部英語なので身構えますが、アプリ内はかなり日本語化されているので大丈夫です。圧縮ファイルを展開するとアプリ本体が素っ気なく現れるので、それをアプリケーションフォルダにでもドロップ。以上。
あとはそのGlyphs.appを引っぱたけば起動……なんですが、ちょっと待ってください。
アプリは全機能を30日間使えますが、1日5分遊ぶとすると2時間半しか使えません。週末などに2時間ずつ足しても、合計ではせいぜい丸1日分くらいです。
だから「小学校で習う漢字全部」とかは潔く諦めて、雰囲気だけ嗅げれば儲けものなくらいの鼻息で急ぎます。
「グリフ」と「パス」
アプリを起動する前に、何となくでいいからイメージすると少し楽になるかもしれない概念が2つあります。
「グリフ」と「パス」です。
以下、オレのイメージを書きます。
まずはグリフです。
オレは、「学校などの下駄箱・靴箱・下足棚(と、その中身)」のような感じで捉えています。
我々ユーザが何らかのアプリで和文フォントを使おうとするとき、ユーザからの文字入力を直接受け付けるのはそのアプリだとしても、実際に漢字変換などの処理をするのは大抵、OS側に属する日本語入力担当のプログラムです。
例えばオレがアドビ幼稚園や聖モリサワ学院幼稚部新入生の野良具 利伏ちゃん(美少女)だとして、上履きに履き替えて教室に行きたいのですが、下駄箱の場所がわかりません。まずは受付や先生に聞いて自分の下駄箱の場所を教わってから、
・そこに上履きが入っていれば履き
・上履きがなければ裸足のまま
・下駄箱自体が見当たらない場合はまた受付に戻ってとりあえず来客用のスリッパを探し、あれば履き
・それさえも見失った最悪の場合は以後無視されて黙殺スルー放置
で、やっと教室(アプリ)に向かって歩き出せる、のような流れになるはず。
自分の下駄箱があって上履きが入っていれば「グリフデータを持っているからその形が返ってくる」、入っていなければ「空のグリフを持っているから空白が返ってくる」、下駄箱がなければ「グリフがないからアプリ側でテキトーによろしく」、思ってたのと違う形のが出てきたら「どこかにバグがあるかも or やっぱり別の素敵なフォント使おう」、チョコレートと手紙が出てきてしまったら「深刻なバグだ or 絶対ドッキリなのでカメラを探せ」です。
OSは入力を捌いて漢字変換し、フォント内でグリフを特定して、アプリに渡します。
アプリはそこに格納されているグリフデータを表示します。「字の形の絵」を、ユーザに見せます。
その、字の形の絵が、パス。
パスは「移動の軌跡」です。
……は?
PCなどのディスプレイ上で、画像の描かれ方は、大きく2種類に分けることができます。
ビットマップ画像(ラスター画像)と、ベクター画像。
ビットマップは、乱暴な言い方をすればドット絵、点描です。
あるマスはこの色、その隣はこの色、次は透明……と全部指定して1マスずつ潰していきます。ものすごく小さい粒がびっしり並んだドット絵です。デジタルカメラなどの写真はほぼ間違いなくこれです。
Adobeのソフトでは例えばPhotoshopが基本的にこれです。
Photoshop内での「文字をラスタライズ」みたいなメニューは、「ラスター画像(点描)にしてしまえば、以後は文字ではなくてただのドット絵として弄れますよ?そのかわり漢字変換とかはできなくなりますけども」という意味です。
一方、ベクターは、輪郭を指示してその中を塗りつぶします。この輪郭がパスで、今回使うのはこっちです。
輪郭は「境界線」なので、理屈の上では幅がありません。薄い紙や板にカッターナイフを入れていく感じです。刃先の移動の軌跡が、フォントでは文字の輪郭になります。ここからここまでまっすぐ、その先はこれくらい曲がり……のように指定していって、1周すると文字の形がスポンと抜けます。
ここで指示している輪郭はあくまで概念としての境界線(アウトライン)で、実際の粒々(ピクセル/画素)を1つひとつ置いていくわけではないので、拡大/縮小させても縁が乱れず、見た目が変わりません。理屈の上では。
もっとも、アウトライン自体を実際に印刷したり描画したりしようとすれば、線にも幅が必要ですからナイフではなく糸ノコで切っていく感じにはなりますし、拡大/縮小を繰り返せば誤差が蓄積されて若干変形してしまうケースはどうしても出てきます。それに例えば正7角形のように普通の10進法や2進法で割り切れないものはどこかで誤魔化してもいるんでしょう。でもまあ、パッと見でわかんなきゃセーフです。
Adobeのソフトだと例えばIllustratorが基本的にこれ。
Illustrator内での「文字をアウトライン化」みたいなメニューは、「輪郭にしてしまえば、以後は文字ではなく単なる切り絵の形の指示として受け取るから弄り放題ですよ?そのかわり略」。
以上はあくまでオレの勝手なイメージです。
もっと適切な定義は、デザイン業界や印刷/出版方面、あるいはソフト開発界隈ならいろいろあるはずですが、オレの技術や目的くらいだったら、今のところ、この認識で用は足りています。
ということで、文字のアウトライン(輪郭/パス)を、必要な字数分だけ描いていきます。
グリフを作る順番には厳格な制限やルールはありません。作る人や目的によっても違います。今は何しろ急ぐので、とりあえず10文字、というか、グリフを10個だけ最優先で確保します。
「aiあい、愛。」の9つ(記号も数えてます)と、スペース。
最低限これだけあれば、日本語の入力と変換は試せます。
では、今度こそ始めます。Glyphsを起動させてみましょう。
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