つかまり立ちGlyphs (第1回)
起動と、設定と、最初の1文字
Glyphsを起動してファイルメニューから「新規フォント」を選ぶと、ウインドウが1つ開きます。
アルファベットが並んでいます。ちょっと離れたところにspace。
ここにグリフデータを描き込んで、フォントファイルとして出力するのが当面の目標です。さしあたっては a と i 、特に簡単そうな i からやっつけます。
その前に、もう1つだけ。
ほんとすみません。長い前置きはこれで最後です。これ終わったら、この章の中でパスを描き始めます。
和文フォントを作るにあたっての具体的な設定(というか、お作法)の話です。
まず、「フォント情報…」を開いてください。違うウインドウが出ます。
この中の「フォント」タブで、フォントの主なスペックをざっくり設定します。
下半分、カスタムパラメータの「+」ボタンでフィールドを2行追加してください。
次に、それぞれのプロパティ(左側)と値(右側)を編集します。
・プロパティを1つダブルクリックし、ドロップダウンメニューから「glyphOrder」を選択
値をダブルクリックして以下のように入力します。
.notdef
space
これは、おまじないです。上の2行を(改行含め)丸ごとコピペでいけます。「新規値」は消してください。
OKボタンで確定すると、一覧の中では「.notdef, space」のようになるはず。
OSやアプリがフォントを使うとき、フォントファイルの先頭から2番目に空白のグリフがあることを期待して動作することが多いそうです。これを自動で設定してくれればいいんですが、してくれないので、そうするおまじないです。
なお、「中身が空白のグリフが2番目に存在する」ということが重要なので、.notdefとspaceの中身はこれ以上いじりません。いじるとしてもspaceの幅くらいです。パスを中に描き込むことはしません。
と言ってもグリフ「.notdef」は作ってませんが、フォントを生成すると自動でくっつけてくれます。だったら初めから順番どおりに入れておいてくれればいいのになあ。
・違う行のプロパティを、「ROS」に
値は、特に理由がなければ「Adobe-Identity-0」を選択しておきましょう。とりあえず欧文か和文かの区別で和文に入れてほしいだけならこうしておくのがいいみたいです。フォントを実際に使うアプリ上では、メニュー内の出現位置にも影響します。
次は「マスター」タブに移動してください。
「メトリクス」のあたりを編集します。
・アセンダー、キャップハイト、xハイト、ディセンダー
これも伝統的なおまじないです。それぞれ、
アセンダー:880
キャップハイト:760
xハイト:(500のまま)
ディセンダー:-120
にします。
これらの数字ですが、和文フォントを作る場合は「アセンダーは880でディセンダーは-120」と日本書紀に書いてあるそうです。フォントの中身がそうなっているのを期待して動作するアプリも多いようで、作る方がオレレベルだと、もう、そういうもんだ、と丸呑みしてしまうほうがいいみたいです。今は深く考えずに進めます。この話はどうせ後でまた出てきます。
xハイトは概ねアルファベットの小文字の高さのことなんですが作るオレが今は略。キャップハイト?まあ、まあまあまあ。
……余談ですが、日本書紀には「アセンダーとディセンダーの絶対値の合計が1000」とも書いてあるそうです。これは、下駄箱の規格の中での基準や高さや精度をどれくらいにするかみたいな話のようです。
どうやら本当は、Glyphs内のことであればさっきのフォントタブの右上「ユニット数(UPM)」との関係とか、できたフォントを使うOSやアプリ側から見れば他のフォントとの擦り合わせとか描画の都合とか、なんだか多方面にいろいろあるらしく。そのUPMはどうせデフォルトで1000が入ってますし、880と120を足せば1000なので、ここは見なかったことにして今はそのまま。
ここまでできたらファイル情報ウインドウを閉じ、メインのウインドウから一度保存しておきましょう。「New Font.glyphs」というファイルができます。後で適宜リネームしてもかまいません。
これ自体はフォントファイルではなく、その設計図です。中身はただのテキストなので、開こうと思えばテキストエディタで無理やり開けますが、呪文の羅列です。
このファイルは、Glyphsで次に別の和文フォントを作るときのテンプレートとして使えます。これをコピーして安全な階層に隔離しておくと次から少し楽になります。
「フォント」タブに戻り、改めて、フォントの名前を決めます。
・ファミリー名
いちばん基本的な名前です。
OSやアプリがフォントを識別するときに使われますが、「ファイル名」とはまた違うので、日本語や記号などは使えません。
・(カスタムパラメータで)フォントの和名
フォントを実際に使うアプリ内で真っ先に表示される名前です。
名前が New Font などのままでいい場合は不要の作業ですが、例えば日本語環境で「新しいフォント」のように表示させたい場合は和名を設定できます。
パラメータ「localizedFamilyName」をさっきのように追加し、値を編集します。ここは当然、日本語が使えます。値で言語と名前を設定しましょう。
なお、オレが個人的にやっているGlyphs自体の設定変更も一応書いておきます。これは作るフォント個別の設定ではなく、アプリGlyphsの動作に関することです。
オレは、Glyphsの環境設定で「Lion 以降の保存仕様を使う」のチェックを外しています。オレの環境では、これがオンのままだと、何かの拍子にフォントを正常に出力できなくなることが数回ありました。
多分、オレがOSのメンテナンスを怠っているので環境が汚れて細かい澱が溜まっているんだろうとは思います。Time Machine利用時の自動バックアップとの相性が悪いような気がするんですが確証ありません。英語やドイツ語がわかる方は公式サイトのForumで検索/質問すると有益な情報が得られるかもしれません(オレは外国語が怖いのでやってません)。
ともあれ、ここをオフにしたら再発しなくなりました。ド素人ならではの問題先送りです。
では、今度こそ本当に始めます。
「 i 」を作る
メインのウインドウ内で小文字の「i」をダブルクリックすると別タブが開かれます。この画面で、枠の中にパスを描き込みます。
中身が空の状態では、i の形が目安として薄く表示されています。とりあえずはこんな感じで長方形と円を置けばそれっぽく見えそうですね。さっそく置きます。
ウインドウ上部にツールが並んでいます。この中で、四角が描いてあるボタンを長押ししてみてください。「長方形ツール」と「楕円ツール」を切り替えられそうなことがわかります。
なお、表示を拡大/縮小したいときは、ズームツール(虫眼鏡)に切り替えてもいいですが、opt + ホイールで手早く寄ったり引いたりできます。マウスカーソルをいい感じのところに置いて、ホイールをいい感じに回しましょう。
まずは「 i 」の下部の長方形を描きます。
長方形ツールで斜めにドラッグすると、それを対角線とした矩形が描かれます。普段マウスやトラックパッドでデスクトップを掃除するのに複数選択するときと同じです。
このとき、ぜひ、是非!shiftキーやoptionキーを押しながらのドラッグも試してみてください。なんなら2つ一緒に押しながらでもいいです。それぞれ、縦横比や基準点が変わります。
取り消しはいつもの cmd + Z。何回でも、気が済むまでできます。
次に、上部の円を描きます。
楕円ツールに持ち替えて、やはりドラッグ。shiftキーやoptionキーの効果も同じです。
位置や大きさを細かく編集/制御したい場合は、方法がいくつかあります。
次回はそれらを試します。
……さすがに、そろそろ、文字だけではきつくなってきました。次からは画像を入れます。
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