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権威を利用した、科学者によるプロパガンダ

起源説論争の教訓”権威主義こそ疑え”」の続きです。

【前回のまとめ】科学者の方が権威主義に陥りやすいのではないか。その原因は、急激な科学の発展、技術確認による仕事の細分化。自分の専門以外の科学の知見に関して、一部の科学者は自分で判断を避ける傾向にある。そんな彼らが重視する判断材料は、権威ある科学雑誌に掲載された論文であるかどうか。科学権威主義の蔓延がコロナ関連の論争を混乱させている。

権威主義に弱い科学者を操作する科学者

今回の騒動(起源説をめぐる議論の場の破壊)の仕掛け人の1人は、感染症の権威と言われるピーター・ザダック博士です。研究所漏洩説が囁かれ始めるとすぐ、26人の科学者と連盟で医学誌ランセットに公開書簡を発表(2020年3月7日)しました。通常、医学誌に意見や論文を発表するというのは、大変困難なことですが、ダザック博士はランセットのコミッショナーの1人。前回、一部の科学者は権威に弱いというお話を紹介させていただきましたが、そういう権威に弱い科学者に対して「ランセットが研究所漏洩説は陰謀論と言っている」ということは絶大な力を発揮ます。

コロナの権威、アンソニー・ファウチ博士もまた、科学による陰謀論叩きという形の陰謀論を展開した重要人物の1人です。彼はちょうど同時期に起こったBLM運動やアジア人ヘイトの問題を巧みに利用し、研究所漏洩説を主張するトランプ大統領と、その他の科学者があたかもヘイト主義者であるかのような世論を作ることに成功しました。トランプ叩きは、メディアが積極的に展開するテーマでしたので、プロパガンダを成功させる要因にもなりました。「私へのバッシングは科学へのバッシングだ」は名言です。こう言われてしまうと、科学者どころか科学の素人は怯んでしまいがちです。

起源説について、ファウチ博士が「科学的に正しいのは自然発生説」としたことも、権威に弱い一部の科学者たちの思考を止めた要因になりました。”正義のファウチ🆚悪のトランプ”の構図は、社会的な地位が高い人たちがファウチ博士以外の説を唱えることを躊躇させました。リベラルが多い環境の中で、トランプ支持者と思われることは、危険なことでした。メディアが散々でっち上げてきたトランプ大統領のひどいイメージが力を発揮し、トランプ支持者=無能な差別主義者のレッテルを貼られるからです。他文化が混在したアメリカで、キャリアを重視するなら、スマートそうに見える、他社に寛容そうに見える・・・そんなイメージ作りは日本以上に重要だと思います。トランプ大統領と同じものを支持するということで、自らのイメージを損ねるかもしれない・・・そんなリスクを冒してまで「研究所から漏洩した」とはいえないのです。

ファウチ博士は、凄腕の政治家だと思います。これは嫌味ではなく、本心です。彼は1984年以来、NIAIDの所長であり続けていますし、大統領への感染症関係の助言は、政権6代に渡っています。科学実績も素晴らしいのかもしれませんが、政治力なしではなし得ない”継続”かと思います。意見がコロコロ変わるという非難を受けているファウチ博士ですが、このコロコロ変わった意見を法律的に「嘘」と断言できるかどうか、微妙なところとも言われています。それだけに、ランド・ポール議員ら、彼を追及している方々には頑張っていただきたいです。

ファウチ博士のメディア転がし

日本人が勧善懲悪ものの水戸黄門ストーリーが好きなのと同じように、アメリカでは、悪と戦うヒーローものに人気が集まる傾向があります。「科学を武器に悪と戦うスマートなファウチ博士と、無知で傲慢、差別主義的なトランプ」という対立構造を演出していく中で、トランプ大統領を下げていくという報道姿勢は、メディア全体にあったといえます。

例えば、ニューズウィークの2020年7月15日付け記事によると、リンカーン・プロジェクトは、ファウチ博士を”アメリカの英雄”と呼び、彼が新型コロナウイルスについて真実(自然発生説)を語ったことを称賛した。 対照的に、トランプ大統領を”ドナルド・ザ・ドープ”と呼び、同ウイルスの発生源について「嘘をついた」と述べ、有権者に次の選挙でのトランプ氏の落選を促した、としています。

今となっては、さ〜て、嘘つきはどちらだったのでしょうか? なのですが、このような記事は検索すれば大量に見つかると思います。ファウチ博士がメディアを利用したのか、メディアがファウチ博士を利用したのかはわかりませんが、自分に都合の良い科学とプロパガンダは共に協力しあい、言論の自由を破壊してきました。

次回は、今度はメディアサイドが科学の権威をどのように利用してプロパガンダを行ってきたかを紹介します。

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