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【英国コロナ事情Vol.2】ワクチンは重症化・死亡率の低下に役立つか?

デルタ株のことを知りたいなら、英国データ!

アメリカでは8月以降、「デルタよりも恐ろしい、ミューやラムダ株が来るぞ!」と言われていたものの、そういえば、その後の報道があまり聞こえてきません。どうなったのかな?と調べてみたところ、恐れられていたミュー株が消えた理由という記事がありました。WHOによると、9月21日以降、米国だけでなく世界のどこでもミュー株は検出されていないそうです。

デルタの感染力に押されて増えることができなかったのか、依然としてデルタ株が優勢であるようです(感染力の強さと、重症化は別です)。

そこで、それならば、デルタ株のアップデートを知りたいと思い、英国のデータの最新版を見てみることにしました。英国公衆衛生庁は、米国CDCのような”説得したい政策”ありきのデータを発表するのではなく、一国全体像としてのコロナ・アップデートとして出しているため、信頼ができます。

8月2日までのデータは下記になります。                   英国公衆衛生庁のデータから読み解く!デルタ株とワクチンの関係

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ワクチン完了者と未接種者・デルタ株感染・入院・死亡比較

今年2月1日から9月12日までのデータです。CDCデータのように、感染者で、接種ステイタスがわからない人や、接種後14日以内の人を、”未接種者”に入れたりせず、きちんとそれぞれの数字を出してくれています。ただ、これだとざっくりと状況を掴むのが難しいので、データを少し絞ります。

*一応、ここから取りましたよというので貼り付けてますが、実際に検討に使うのは、ワクチン接種者と未接種者それぞれの感染者数、入院率、死亡率のみですので、大元のデータが不要な方は、2つ表を飛ばして、黄緑の日本語データまで飛んでください。

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絞ったのが下記です。2回の接種が完了した人と、未接種者の2つに焦点を当て、ワクチン接種の影響について、感染・重症化・死亡の3つの項目で比較したいと思います。


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全体で見ると・・・

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アメリカのCDC等が発表しているデルタ株とワクチン接種の関係:      自らの失策により、独立記念日ホリデー期間中のブレイクスルー感染増を招いてしまったCDC、ファウチ博士は7月中旬以降、「ワクチン接種の効果は、感染しないことではなく、重症化・死亡率を抑えること」という風にアピールしなおしています。CDCのワレンスキー長官もCNNのインタビューで、「重症化や死亡に関してはデルタでも効果を発揮し続けていますが、感染を防ぐことはもうできません」とはっきり発言しています(となると、学校やオフィスのワクチン義務化はどんな意味があるのでしょうか?)。

このデータを見ると、感染者数は未接種者が完了者の1.6倍多いという一方で、重症化・死亡率はあまり変わらないように見えます。効果があるのは、むしろ感染拡大の抑制の方?とも思えます。米国CDCの発表と真逆ですが、ここはどちらが正しいのかはわかりません。

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英国公衆衛生庁が出しているデータが嬉しいのは、50歳以下と50歳以上に分けた数値も出してくれているところです。年齢によるコロナリスクは異なりますので、この区別はありがたいです。ただ・・・欲を言えば、20歳以下のデータとして、乳幼児・小学生・中学生〜19歳くらいに分けたものと、50歳以上は10年おきに区切ったデータにしてくれると、もっと対策を考えやすいのに・・・(自国の政府に頼めよ!と言われそうですが・・・)。

ただ、50歳で分けただけでも、年齢による違いが明らかです。

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感染者数については、PCRのCT値設定の仕方の問題もありますが、ここではそのような問題がない前提で比較します(*2)。

・50歳未満では、未接種者は完了者の2.9倍の感染者数だが、入院・死亡率はほぼ同じ。
・50歳以上では逆に、完了者が未接種者の8.4倍多く感染(*1)しているが、入院、死亡率とも未接種者が高くなっている。

*1:完了した人の方が8.4倍多く感染したことになりますが、その理由は、高齢者層でのワクチン接種が進んでおり、この年齢層では、ワクチン接種者の数が圧倒的に多いためとされています。このことは、念のため、最終章で検証したいと思います。

*2:アメリカのCDCは、ワクチン接種者のPCRはCT値20(従来は35)という基準を出したようですが、実際のラボがどのような運営をしているのか、わかりません。また、感染者数は、ワクチン接種者の場合には”症状がある人”のみ、未接種者はPCR陽性者(=偽陽性を含む)の数を計上していると発表していました。

50歳未満のワクチン接種の検討事項

50歳未満の場合、ワクチンを打っても打たなくても、入院・死亡、ともに確率は低いようです。ワクチン接種を検討する場合、入院するリスク1%を減らすために若者ほど強く出やすいとされているワクチンの副反応(有害事象)のリスクを受け入れるのか?ということも考慮に入れるべきかと思います。

ただ、このデータを見る限り、接種した方が感染する確率は抑えられそうです。ここで関係してくるのが、”治療法”の有無です。治療法がない感染症は、感染しない予防に最も力を入れるべきです。一方、感染しやすくても、大事に至らず、治る病気、または治療法がある病気でしたら、予防は重要ですが、感染することをそれほど恐れる必要がないかと思います。例えば、風邪は引かないに越したことはありませんが、引かないために、大きなリスクを背負ったり、家の中にじっと閉じこもるということはしないかと思います。

とはいえ、風邪も拗らせてしまうと肺炎を起こす可能性もあるため、適切な処置、治療が必要です。コロナの治療法については、イベルメクチンやHQC等を巡って意見が分かれています。アメリカで、ワクチン接種を見合わせている人(反ワクチン活動家ではない人)の多くは、これらの早期治療法が効くと考えている傾向にあります。治療法があると考えている、または、治療法へのアクセスが可能と考えている場合には、”感染リスク”の評価が変わってきます。

50歳以上のワクチン接種の検討事項

50歳以下のデータと比べれば、ワクチン接種のメリットがあるのは、この層かと思います(本当はもっと細かい年齢層で検討できれば・・なのですが)。

ただ、このデータからわからないのは、基礎疾患の有無や、早期治療の有無等です。アメリカの医師ですが、デルタによって入院者数は増えているものの、エクモを使用するような集中的な治療が必要な人はそこまで増えていないというコメントをしている人もいました。

英国の10月12日までの感染者数と死亡者数は下記の通りです。

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これを見ると、感染者数については、高い位置で波を描いている状態ですが、死亡者数はそこまで上がっていません。50歳以上のワクチン未接種者の死亡率は、完了者の3倍と言っても、同じことが今年1月で起きた場合と、10月11日時点でのケースでは死亡者の母数が変わってくるため、”死亡者3倍”の評価が変わってきます

世界のコロナデータからみた英国コロナ

最後に、英国のコロナの状況をもう少し広い視野から見てみたいと思います。Our World in Dataからのグラフです。英国の他に、日本とアメリカ、そして、英国同様、変異株による感染増が問題となった、ブラジル、南ア、インドを比べてみました。

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一番上が英国です。ちょっと気になるのが、先ほど列挙した英国を除く全ての国で、感染者数が下がっている中で、英国のみが高い位置で波を描き続けています。

ここは別途、検討してみたいと思います。

《ご参考》年齢別ワクチン完了者数について

前出「*1」(完了した人の方が8.4倍多く感染したことになりますが、その理由は、高齢者層でのワクチン接種が進んでおり、この年齢層では、ワクチン接種者の数が圧倒的に多いためとされています。)についての、念のための検証です。

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2021年10月8日時点でのワクチン接種完了者は、50歳以上、未満それぞれ半々と言ったところです。高齢者から開始されたワクチン接種ですが、接種希望者には一通り行き渡った感じでしょうか?ちなみに、50歳未満の方がやや多くなっているのは、英国人口の約70%が55歳未満だからです。

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各年代別接種完了率が出ていましたので、そちらもシェアさせていただきます。50歳未満は75.7%、50歳以上は93.9%となっています。この数字は、GoogleのCOVID情報ページに掲載されたイギリスのワクチン接種完了率とは異なるのですが、NHSが出している情報です。使用している人口統計が違うのかもしれません。

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50歳以上の93.9%がワクチン摂取をしているのであれば、ワクチン接種した感染者が未接種者よりも多いということは、指摘通り、当然のことなのかもしれません。

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