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クラスルームで小1が担任教師に発砲。事件は、防ぐことができた!?: 銃と学校と教育と(1)

米国・学校を舞台とした銃撃事件、2022年は約50件

2023年が始まったばかりの1月6日、バージニア州で小学1年生が担任の教師を撃つという衝撃的な事件がありました。昨年5月には、テキサスでも州史上最悪の銃乱射事件と呼ばれた、高校生による小学校での銃乱射事件が小さな街、ユバルデで起こっています。

テキサス史上最悪の小学校襲撃事件 (2022年5月)

日本にいた頃には、アメリカも銃規制を行うべきと考えていました。今でも、人々が簡単に銃を持てる社会というものに対しては、心地良いとは思いません。しかし、実際にアメリカに住んで、さらにコロナ騒動やヘイト事件や暴動等々、明らかにおかしなことが起きているここ数年で少し意見が変わってきました。”銃規制”では銃による事件を防ぐことはできないだろうと思うようになってきたからです。

とはいえ、日本は絶対に今のまま、銃規制を行なっていくべきです。それはいったん銃社会になってしまうと、銃を禁止するというのが一筋縄で行えないと思うからです。これだけ誰でも銃が持てるようになってしまった状態で、いまさら銃規制を行なっても、規制に従う人は良心のある人のみではないでしょうか。銃を犯罪に使おうと考えている人ならば、必ずあの手この手で密かに銃を持とうとするはずです。銃規制を実現させるのであれば、秀吉が行なった刀狩りくらいの勢いで”銃狩り”を行う必要がありますが、警官の力が押さえつけられている現在のアメリカで、”銃狩り”を行うことは非現実的です。

そこで辿り着く解決法がやはり教育です。銃と学校と教育というテーマで3回に分けて、学校での銃事件の解決策について考えていきたいと思います。

(1)小1による銃事件、現在までのところでわかっている問題点
(2)事件から半年たったテキサス州での取り組みについて
(3)”争いごと”にまつわるテキサス州の学校での現状と、教育について

上記のような感じでの展開を考えています。

バージニア州・小学1年生が先生を射撃

6歳児による犯罪ということで、ニュースを耳にされた方も多いかと思いますが、バージニア州ニューポートニュースにある小学校で、女性教師(25歳)が、6歳の少年により9ミリのタウルス銃で撃たれました。弾は、女性教師の手から胸の上部に貫通したため、当初は生命に関わると考えられていたようですが、彼女の容態は改善され、安定しているようで、現在では会話もできるようになったという警察発表があったようです。

本日までに出た続報によると、少年が使った銃は両親のものでした。バージニア州の法律では、14歳未満の子どもがアクセスできる場所に弾の入った銃を放置することは禁止されているため、武器を適切に保護しなかった軽犯罪として、両親が刑事責任を問われる可能性があるようです。

そして、現在、問題視されているのは、事件の数時間前までに、少年の銃所持についての情報を学校側が持っていたにも関わらず、事件を防ぐことができなかったという点です。

ニューポートニュースの教育長によると、当日、遅刻してきた少年は、登校するために事務室に行き、署名をしていたと言います。これはアメリカの学校では、遅刻した時の通常対応です。この時に、少年のバックパックの検査を受けたものの、銃は見つからなかったと言います。この荷物検査は、おそらく通報を受けて実施されたものです。その数時間後の授業中、少年が銃を取り出し、担任の先生を撃つ事件が発生しています。

問題1:登校時の持ち物検査は適切に行われたのか?

「なぜ銃が見つからなかったのか」「誰が荷物検査を行ったのか」
「少年の衣服(身体)は検査されたのか」

この辺りの疑問点が残りますが、そこは現時点では公開されていないようです。

問題2:関係各者との情報共有は適切に行われていたのか?

ニューポートニューズ警察、そして、被害を受けた担任教師は、
この情報を事前に知らされていなかった。

報・連・相が全くうまくいっていないというのは、アメリカ職場あるある・・・とはいえ、これは学校の安全対策としてかなりまずい対応だと思います。子どもたちの通う学校でも、一度、「( )月( )日に銃撃事件を起こすぞ」というような通知を受けたことで、当日朝、学校から一斉メールが届きました。それには”学校駐在の警官だけでなく、近隣の警察署にも通報済みで、連携して対応しているところ””おそらくイタズラだと考えられること”等が書かれてありました。当日、登校したのは半分くらいの学生でしたが、学校の言う通り、脅しはイタズラだったようで、その夜、”イタズラではあったが、脅迫の犯人を捜査している””このようなイタズラは犯罪になることを、子どもたちに再度伝えてほしい”というメールが来ました。

また、別の学校のアメリカンフットボールの試合で、観客席に銃所持した人物がいた(銃所持OKなテキサス州ですが、校内への武器の持ち込みは禁止)ことが試合開始前にわかったということもありました。発見に至った詳細は分かりませんが、もともと荷物検査等が行われていなかったため、通報等があったのではないかと思われます。翌週より応援席は学校別ゾーンが設けられたり、一般観客が観戦しにくくなるためか、観客料の値上げ(4ドルが6ドルに)があったりしたそうです。

事件に”まさか!”はつきものです。イタズラだろうなと考えられる場面でも、念のため、安全確保につながる行動というのは当然のことかと思います。

ニューポートニューズ教育委員会が発表した対応策

今回の事件での”まさか!”は「小学生が事件の被害者になる想定はあっても、まさか小学生が事件の犯人になるとは!」でした。そのため、小学生が被害を受けないような対策には力を入れていたものの、小学生が事件を起こさないようにするような対策は行なっていなかったというのです。そこで、同教育委員会が発表した、小学生による事件を受けた新たな対応策が・・・

事件のあった小学校を皮切りに、全校に金属探知機を設置

わかりますよ、わかります。荷物検査で見逃してしまったのだから、金属探知機が必要だろうというのは。でも・・・すごくもやっとするものがあります、やらないといけないのは、そこなの?っと。小学生が武器にアクセスできたような、不適切な銃保管をしていた両親にも問題はあると思います。ただ、根本的な問題として、小学生がなぜ銃口を人間に向け、撃ったのか?ということなしでは解決できない問題かと思います。これまで少年の動機については発表されていませんので、女性教師に対して何らかの反発があったのか、ターゲットは誰でもよかったのか、よくわかっていません。しかし、どちらのケースでも、銃を扱うということがどういう結果を招くことなのか?理解していないことが大きな問題だと思います。

全米教育統計センターによると、2019〜2020年度に金属探知機検査を行なったでの公立学校は次のとおりです。

  • 小学校の2%未満

  • 中学校の10%

  • 高校の14.8%

ちなみに、学校のセキュリティ対策として、金属探知機だけでなく、クリアバッグポリシー(*次章に詳細)も導入するべきだという声も上がっています。確かに、それらは学校内への”武器”の侵入を防ぐという意味では、有効なセキュリティ対策だと思います。しかし、”武器”は単独では人を襲うことができません。根本的な問題として残るのは、それを使おうとする人間の問題です。

なぜ学校という場に武器を持ち込もうとする人間がいるのか?

自分が抱えている問題がどんなものであっても、”武器による解決”が物事の本当に解決にはならないことを、子どもたちには学んでほしいと思います。そうすると、武器の排除だけではなく、”武器による解決”という結論に至らないような教育も重要なのではないかと思います。

テキサス州でも昨年5月に20名以上の死傷者を出してしまった小学校襲撃事件がありました。そこから半年以上経った現在、州では様々な取り組みを導入したり、検討したりしているようです。ご存知の通り、超保守州であるテキサス州では、銃規制には反対の立場にあります。次回は、そんなテキサス州での、学校銃襲撃対策の取り組みについて紹介したいと思います。

(ご参考)クリアバッグポリシーとは?

透明で中身がわかるビニール製のトートやショルダーバッグ、リュック等がアメリカでは売られていて、スポーツ観戦等で、カバンはクリアバッグが義務付けられているケースがあります。

最初に「クリアバッグのみ入場できます」と言われた時には、「そんなバッグ、どこに売ってるのよ?」と思ったのですが、色々なタイプ・サイズのクリアバッグが存在します。それくらいこのクリアバッグポリシーが一般的に実施されているものなのだと思います。

"clear bags for stadiums"で検索した画面の一部

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