見出し画像

白紙革命:中国はなぜゼロコロナ政策をやめられないのか?

白紙革命とは?

白紙革命の発端

新疆ウイグル自治区の区都、ウルムチでマンション火災が起こった際、”ゼロコロナ政策”という名の下の”監禁状態”が消火や避難の妨げとなり犠牲者を出してしまいました。

ちなみに、新疆ウイグル自治区はここ数年、共産党によるウイグル人弾圧で世界中の注目を集めている場所であり、火災のあったエリアはウイグル人の多く住むエリアと言われていますが、今回の抗議デモを行っているのは漢民族。ウイグル人の人権問題とは全く関係ありません。
共産党政府はこれまで、ウイグル人を”管理”するための人材を派遣したり、ウイグル人の人口を相対的に少なくするために、漢民族の移住を積極的に行ったりしてきました。現在、ウイグル人に対する監視はとても厳しく、例えば、外国人記者が道を歩いているウイグル人に話しかけると、共産党から派遣された中国人が即効、近づいてくる”システム”が構築されているようです。そのためウイグル人によるデモは、現在は不可能な状態と言われています。

しかし、この火災はあくまでもトリガーとなった事件であり、白紙革命の動力となっているのは、人権や命を軽視し、経済を崩壊させようとする、長期間にわたるゼロコロナ政策に対する不満です。ウルムチでのマンション火災の他にも、広東省順徳で11月24日に起こった”PCR検査に殺到したクラウドサージ(群衆による転倒、圧死事故)”もトリガーの1つとされています。

なぜ”白紙”なのか?

抗議デモ自体は、中国では実はこれまでにも頻発しています。にもかかわらず、今回のデモが注目されているのは、明らかな反政府デモだからです(*中国のデモの特徴は次章❸で触れています)。日本もアメリカも、ビックテックによる左翼的な検閲が行われている中ではありますが、本場の中国での情報検閲は取り締まりの度合いが生命の危険に直結するレベル。プラカードに書かれた内容によっては、”反逆分子”とされ、国家転覆罪等重い罪に処される危険があります。

例えば、香港の雨傘革命で”民主の女神”と言われた当時17歳だった周庭(アグネス・チョウ)さんは、日本語に堪能で、Twitter上で日本語での広報活動を行なっていたことで、当局に目をつけられてしまいました。彼女は、禁錮10ヶ月の実刑判決を受けましたが、服役させられた刑務所が、本来は殺人犯等の重罪犯が収容される大欖女子刑務所でした。

このような危険を回避するために、メッセージを書いていない白紙を掲げることで、政府に対する抗議を表現していると言われています。

今回の抗議デモでは、中国各地の大学内でも起こっているようです。
緊迫した状況の中、こんな呑気なコメントをしてもいいのか?とも思いますが、「中国の理系教育はさすがだね」と思うのが、デモに参加する学生の中には、フリードマン方程式を書いた紙を掲げている人もいるようです。方程式の意味は私には一切分かりませんので、あくまでネット上で言われていることですが、この方程式が宇宙を解放するというところから、ロックダウンからの解放を意味しているとか、”フリードマン”という響きが”フリー・マン”と似ていることから使われるようになったとか・・・言われています。

https://www.kitakaze.space/start-learning-cosmology-friedmann-eq/

また、共産党政策を疑うことなく、そのまま受け入れている学生もいますが、デモの中では共産主義がどういうものなのか?、反対勢力を押さえつけるために、中共がこれまでどのような対応をしてきたのか?ということをきちんと理解している学生も少なくないことが、デモの様子から伺えました。具体的には、反政府デモが起きると、必ず「境外(外国)勢力が仕掛けてきたデモ」ということにする中国政府に対抗し、予め、自分たちが外国勢力ではないというコールを行うのです。

「ここに誰か外国勢力はいるか?」
「いない!俺たちは中国人だ!」
「外国勢力に言われてここに集まったのか?」
「外国勢力?マルクスのことか?レーニンのことか?」

動画を見ながら思わず吹いてしまったのですが、香港の雨傘革命で多くの学生が受けたひどい仕打ちを知っているものとしては・・・、吹いた次の瞬間には「どうか気をつけて」という思いでいっぱいになりました。

ゼロコロナ政策をなぜ止められないのか?

先ほど、ウルムチのマンション火災や、広東省順徳で起こったPCR検査をめぐるクラウドサージはあくまでトリガーであり、抗議デモの動力となっているのは、ゼロコロナ政策と申し上げました。

そもそもなぜセロコロナ政策を続けてきたのでしょうか?
今回も、専門家ではない私が、”ミステリー好き超文系編集者による謎解き”として次の3つの仮説を考えてみました。

❶党幹部の自己保身

中国のゼロコロナ政策を容認する日本人、アメリカ人学者が主張するのは、日本やアメリカと比べると、資源不足が否めない中国の医療事情を盾に「やもえない」と主張しているようです。しかし、ゼロコロナ政策を止めない理由は、中国の医療事情とは全く関係ないと思います。というのも、残念ながら共産党幹部にとっては、一般市民の命には何の価値もないものだから。生存者確認も行われないまま、転倒事故を起こした電車を穴に埋めて、”大事故であるという証拠”を隠滅してしまう国です。

なぜ、ゼロコロナ政策をやめられないか?
シビアなコロナ対策への評価から自分を守るため。

1つ目の理由は、共産党員の自己保身だと思います。地方都市の感染対策は、その都市の共産党トップの責任になるため、被害規模を小さく見せようとした列車事故の時と同じ”モチベーション”がここにもあると考えられます。

共産党トップの腹心として知られる李強(次期首相候補)ですが、感染拡大を止められず、視察先で市民から罵声を浴びせられる動画まで流出した今年4月、上海市党委員会書記から更迭の観測が出ていました。粛清に次ぐ粛清で、敵の多い現中国国家主席にとって、信じられる身内で党内を固めていこうとしている最中での出来事でしたから、噂であっても、結構びっくり。それくらい、中国にとって決して失敗が許されないのがコロナ対策です。特に、”微妙なポジション”にいる地方都市幹部は、感染拡大が更迭の理由にならないように徹底した”対策”を導入しようと考えていると思います。

そして、この自己保身が必要なのは、国家主席も同じと思います。強権を振りかざす彼ですが、彼自身も安泰なポジションにいるわけではありません。彼がリードする政策は全て正しく、全て効果的なものでなくてはならないのです。

中国で、政治家にとっての自己保身がどれくらい重要か?については、日本人にはなかなか想像が難しいと思います。例えば、今後、”お注射”の問題がいろいろ出てきたとしても、”お注射”大臣(当時)が糾弾され、離島に飛ばされたり、自宅軟禁されたり・・・生命の危険を感じるような失脚をすることは、今の日本では起こりにくいことかと思います。しかし、これは共産党”あるある”です。

❷”健康一帯一路”や”中国製造2025”等、国家戦略の一環

もう1つの理由として考えられるのは、経済戦略的な都合です。中国の国家戦略としてよく知られているものに、”一帯一路”がありますが、このメディカル業界版に”健康一帯一路”とか”健康のシルクロード”と呼ばれているものがあります。ここで思い出していただきたいのが、コロナのパンデミックが始まった当初の中国の動きです。

イタリアをはじめ、PCR検査不足でパニックになっている国へ、
PCR検査器材やキット、そして検査員までマルっと一式”援助”したのが中国。

(*PCR検査は、専用のスキルと技術を持ったラボスタッフではなければできないようです)

”親切な形”での訪問者に侵入を許すと、気が付いた時には、いろいろな形での大きな負債を背負うことになっている・・・というのが一帯一路戦略。PCRの次にはワクチンでも、”健康一帯一路”を進めていました。

そんな中国にとって、”中国のコロナ対策は素晴らしい”という印象付けは、健康一帯一路戦略には欠かせないものです。共産主義利権仲間である、ファウチ博士らが「中国のコロナ対策は素晴らしい!」と称賛していた理由の1つでもあります。

■”オレが科学”のファウチ博士の宣誓証言:ビックテックとの情報検閲の共謀は記憶にない!?

中国がこれからどちらの方向に向かっていくのか?ということは、実は”表向きの目標が”公式に明らかにされています。中国政府が2015年に発表した”中国製造2025”です。ここに掲げられた”9つの重点戦略”の1つに、”重点分野における飛躍的発展の実現”というものがありますが、その重点分野の1つが”バイオ医薬・高性能医療機器”。表向きはあくまで医療なのですが、バイオ医薬や高性能医療機器は、最も注目されている軍事産業の1つです。

このような中国の国家戦略を考えると、そもそもPCR検査の輸出をタイミング良く行なった裏には、バイオ医薬に必要な世界各国からのDNA情報収集もあったんじゃないかという邪推すらあります。

いずれにしても、コロナ対策の成功は、”医療大国中国”という国際的な印象づけのためにも、今の中国には不可欠なものだと思います。

❸不満の拡大もシャットダウン

そもそも中国には抗議デモにつながりそうな”火種”が常にゴロゴロしています。基本的に中国で行われるデモの原因は、経済的な問題ーー立ち退き、企業倒産による損失発生等、自分に不利益が被りそうな時ーーが多いかと思います。そのため中国全土、あちらこちらで起こっているものの、一般的には小規模で、すぐに鎮圧され、また、当該不利益とは関係ない人は加わることがないため、広がることもないと言われていました。

しかし、このような小さな火種も数が重なっていけば・・・です。中国ウオッチャーの中では、コロナパンデミック以前から、深刻な食糧難、不動産バブルの崩壊からくる経済危機がいつ表の問題になって出てくるか?ということが度々議論されていました。もし、中国が民主的な国家であれば、おそらく10年、15年くらい前には崩壊してしまっていたと考えられますが、現体制だからこそ事実を隠し切ることができたのではないかと思います。ただし、あくまで事実を隠し続けただけで、放置しているうちに問題が片付くことはほぼほぼないでしょう。つまり・・・問題が問題を呼び・・・現在の中国では”崩壊の火種”がかなり大きく、広域に広がっていると憶測できます。

ロックダウン政策により、人を自宅に閉じ込めること、または、1つの地域に閉じ込めて、移動させないようにすることというのは、コロナウイルスだけではなく、”人々の不満”の拡大をシャットダウンすることができます。共産主義者はコロナをさまざまな形で利用してきましたから、この仮説も、全くの空論ではないと思います。

この仮説が正しければ、不満の拡大をシャットダウンするために行なったロックダウン政策が現在の抗議デモにつながったということになります。だとすれば何ともな皮肉です。

では、現在、中国各地で行われている抗議活動。この次に起こることは何でしょうか?これについては場合分けをしながら現在、どのシナリオが最も起こりうるものなのか?考えているところです。近々シェアさせていただけたらと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?