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【アメリカのコロナ事情Vol.9】不法移民問題は感染症と無関係か?

アメリカのコロナパンデミックに、国境に押し寄せてくる不法移民は全く関係ないという人たちがいます。バイデン 政権、ファウチ博士、そして、国境問題とは関係のない州の人たちです。彼らはSARSから何も学んでないのか?今回は科学ではなく、歴史の話、と言っても、20年くらいの話です。

新型コロナとSARSーー新型コロナはなぜ世界的なパンデミックになったのか?

新型コロナの起源説として、ラボ流出(人工ウイルス)説が出てから、SARSに関しても人工ウイルス説が出ていますが、真偽のほどわかりません。今回は、SARS収束後に行われた”SARSウイルス拡散の検証”から判明したものを紹介します。

まず、当時、言われていたのは、SARSみたいな風邪は、広東省の地方部では度々起こっていたということです。なぜ、大きな問題になったか?と言えば、”人の移動”です。香港での第1号患者であり、SARSを香港に持ち込んだのは、広東省のある男性医師。親戚の結婚式が香港であったため、来港しましたが、途中で体調が優れなくなり、病院へ。不運だったのは、このホテルのエレベータの中で、同医師とスーパースプレッター体質(発病はしていないものの、病原体に感染していて感染源となりうる人)の人が4人、乗り合わしてしまったことでした。彼らはその後、香港だけではなく、それぞれシンガポール、ベトナム、カナダにウイルスを持ち込んでしまうことになります。

SARSは一説によると、30カ国くらいに拡散したとのことですが、主な感染拡大地は中国、香港、台湾、シンガポール、ベトナムあたりではないかと思います。現在、パンデミックを起こしている新型コロナほどは広がらなかったのは、ウイルスの致死率が高かったことが理由の1つ。致死率が高いと、次の宿主に移動する前に、宿主が亡くなってしまうため、ウイルスとしても拡散できないのです。

ただ、現地に住んでいたものとしては、”人の移動”の問題は感染拡散の大きな要因の1つであると指摘せずにはいられません。2000年始めと2020年とで大きく違うもの、それは中国人の移動可能範囲の拡大、移動数の増加です。(ここで何も中国人批判を行いたいわけではありません。単純に、人の移動とパンデミックの関係性について説明する事例として取り上げています)。

SARS以前の中国では、基本的に政府が中国人の自由な移動を制限していました。2001年頃から段階的に規制緩和の方向にはありましたが、引き続き、さまざまな制限が設けられていました。一般の中国人が海外渡航が始まったのは、SARS収束の後です。SARSによる香港の経済的ダメージは大きく、また、この頃の深センはまだまだ発展途中にあり、香港は中国にとって重要な経済の要地でした。そこで香港と中国の間では同年 6 月、”香港・中国経済貿 易緊密化協定(CEPA)”が締結され、一部の都市に住む中国人を対象に香港への個人旅行が解禁されました。それ以前は団体旅行客のみが許可されており、制限もいろいろ設けられていました。CEPA締結後の1年間で、香港を訪れた中国人個人旅行客は 260 万人と、香港経済復活の大きな力となりました。この中国旅行客増に合わせて、香港での中国標準語のニーズが高まっていったのもこの時期でした(香港で使われる中国語は、広東語でかなり違います)。経済的な中国依存が強まってくると同時に、政治的な自由も失い始めたのもこの頃です。

UNWTO(国連世界観光機関)による、海外に出た中国人旅行客の統計は下記の通りです。SARSのあった2002年〜2003年と、コロナ の直前の2019年を比べると、国境を越えて移動する中国人の数は6倍です。

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これは中国に限ったことではありません。同じく、UNWTOによると、世界各国の人々が国境を越えて移動した数は下記の通りです。              (世界全体の統計が、各国の合計数が抜けている年があったのと、2012年までのデータに一部、文章で示した数字と大幅に違うものがあったため、ダウンロードした統計データは、今回は使用しませんでした。)

1950年に2,500万人だった世界際観光客数は、1980年には2億7,800万人、1995年には5億2,800万人、2012年には10億3,500万人と、時折ショックを受けながらも、ほぼ途切れることのない成長を遂げています。
2000年代初めには6億人だった海外旅行者総数(一泊以上の旅行者)は2018年には推定14億人。

2000年からの20年間で、2.3倍以上の人々が国境を越えた移動を行うようになったのです。ウイルスに感染した人が移動すれば、移動しただけウイルスは拡散していきます。今回のコロナパンデミックの要因ーーSARS時に比べて感染拡大の要因となったものーーは、”人の移動”の拡大の影響は否定できないものです。

中国人はウイルスを運ぶが、不法移民はウイルスを運ばない?

パンデミック当初、中国から新型コロナがどのように広がったかについて報じた記事です。

感染拡大の中心地は中国だが、中国からそれ以外の国に移動した人などを経由して、新型ウイルスは各国に広まった。WHOは1月30日に、「世界的な緊急事態」を宣言した。
WHOや各国政府によると3月2日までに、韓国では4335人、イタリアでは1689人、イランでは1501人、日本では239人、ドイツでは129人、それぞれ感染が確認された。各国では、感染経路が不明な人の感染も増えている。         【図表で見る】 新型コロナウイルス、世界各地で感染拡大 2020年2月28日 更新 2020年3月2日

ずばり1行目に、「中国からそれ以外の国に移動した人などを経由」と書いてあります。さらに、感染拡大した国として上がっている国、韓国、イタリア、イラン、日本、ドイツは、中国と経済的な結びつきが密接な国です。中国から移動してきた人によって、ウイルスが運ばれてきた国で、感染が拡大した・・・当然のことです。人の移動がないところで、感染症が出現しても、感染はその地域だけにとどまりますから。

人間の移動とともに、ウイルスも拡散されていく。

だから、ロックダウン政策を行ったのだと思うのですが。このような事実があるにも関わらず、トランプ大統領の”中国からの入国制限”に対しては、否定的だったファウチ博士は、”南部の感染拡大の要因になっている不法移民問題を早急に解決してほしい”というテキサス州に対しても、「不法移民は感染拡大の要因ではない」としています。そこで用いられるデータを使った説明は・・・。 

 ・不法移民の陽性率は、国境の街の陽性率と同じか低い               ・国境の町の感染者数は、他のテキサスの都市部の感染者数に比べて多くない

出された数字だけ見たら確かにそうです。ただ、ここでいう不法移民は、あくまでも確保された人のことです。この他、最低でも毎月5万人の、確保できていない不法移民がいるとされています。確保された不法移民が過去最大記録を更新し続けている中、確保されていない不法移民も爆増しているため、従来の推定値である5万人より遥かに多い数になっていると思います。これらの不法移民の人々は、より過酷な方法で入国しています。不十分な睡眠、栄養は免疫力を弱めます。不法入国後の、彼らが健康体である可能性は、高くはないと思います。

また、現在、国境の街で捕まった不法移民が滞在できる施設は、定員を大幅に越え、とても良くない状態になっています。これはバイデン政権発足後に急増した不法移民に、地元政府がとても対応しきれていないためです。ぎゅうぎゅう詰めの施設で、到着時には陽性でなかった人も、その場にいた感染者からウイルスをもらってしまう懸念は、小さくありません。

さらに、ここで亡命申請する人は、ある程度環境が整ったところに移動しますが、そうではなく、勝手にいなくなる人が少なくないそうです。”キャッチ&リリース”と揶揄されるようなバイデン 政権の移民政策ですので、このいなくなった人たちがどこで、どうやって暮らしているのかは全くわからないそうです。国境の街には、不法移民の人が就けるような仕事がありません。どこに行くのか?都市部です。国境の町の感染者数が・・・と言われても、そこにとどまる不法移民はいないのです。あくまで検査を行った時点でのウイルス量の証明でしかないPCRデータを使い、不法移民問題は、感染症対策には何の影響もないと考えるのは、おかしな話です。実際のところ、南米で猛威を奮っているというミューやラムダは、テキサス州でいち早く見つかっています。

この変異株は南米からどうやってやってきたのでしょうか?

もちろん、正規ルートで入国してきた人が持ち込んだ変異株かもしれません。しかし、アメリカが要求したプロコトールに従って入国した結果ですから、文句は言えません。さらに今、メキシコ・カナダから入国できる正規ルートは、空路のみで、陸路は”エッセンシャルワーカー”(トラック等の移動が不可欠である人)のみが出入国できるようになっています。言い換えると、合法的な旅行客の陸路は閉ざされているのです。

問題は、そういったルールを全て無視して入国した人がウイルスを拡散することを許していいのか?ということです。リベラルな人の多くは、不法入国者は”罪がない”と言います(”不法”ですでにアウトだと思うのですが)。そうであるならば、危険のある河を渡ったり、何メートルもある壁から子どもを落としたりせずにすむよう、不法入国者も正式なイミグレーションを通過させるべきです。テキサス州は不法に入国されては困ると考えているわけですから、それを容認しているワシントンDCで入国させて、ホワイトハウスでその後の対応を行えば、丸く収まります。

最近、テキサスでに大勢のハイチからの難民が押し寄せ、大騒ぎになりました。ハイチからどうやってテキサスに来たのだろう?と思ったら、南米にいたハイチの人々だったようです。”バイデン 政権がハイチ出身の不法滞在者に市民権を与えた”というような噂が広がり、南米からみんなで押し寄せたということのようです。パンデミックの中、大勢の人が集まり、衛生状態がよくない状態を続けながら、長距離を移動するというのは、移動している本人たちの健康を考えても、良くないことです。

CDCやファウチ博士は、一体何をしたいのでしょうか? 

正式なルートでも、入国を制限している国がある中、法を犯して入国する人の移動には寛容というダブルスタンダードぶり。しかも、CDCやファウチ博士自身が”デルタよりも怖い”とする変異株が出現している国からの人々であるにも関わらず、です。人が移動すれば、その移動に伴い、ウイルスもついてくる・・・これは昔から変わらない事実。感染拡大を防ぎたいのか、どうなのか・・・?疑問だらけです。

余談ですが・・・SARS時のWHOと中国

2003年頃のWHOはしっかりと機能していました。中国との利害関係のない視察団が北京入りしたため、”感染者ゼロ”を掲げていた北京当局はSARS患者をバスに詰め込み、視察団がいる間中、バスを市内で走らせ続けたという事件もありました。

中国がWHOのコントロールに興味を持ったのは、この事件がきっかけと言われています。そこから20年、現在のような力を発揮するまでに、WHO内部に力をじっとりと浸透させていったのです。中国人の知恵が詰まった兵法は、20年という長期間、じっくり取り組むことも厭わない無敵の戦術。

日本の一部メディアや言論人のように、中国は素晴らしい!を連呼し続けるのもどうかと思いますが、一方で、表に見えている様々な”アラ”だけで中国を判断するのも、危険です。それこそ兵法でいう”相手を正しく知る”ことが重要です。





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