竹中平蔵がNHKラジオで水道民営化、電力事業の発送電分離、電力自由化を主張。

 2021年1月29日6時40から6時55分、NHKラジオ第1の番組「三宅民夫のマイあさ!」の「マイ!Biz」に竹中平蔵が電話出演し、「成長戦略としての競争政策」というテーマで水道民営化、電力事業の発送電分離、電力自由化を主張しました。

 下記に、文字起こしを記載します。
 ファクトチェック、ツッコミ、素材等にご活用頂ければ幸甚です。

■ 竹中平蔵の発言(NHKラジオ第1 / 2021年1月29日6時40分から6時55分)

[ 田中孝宜(キャスター) ]
 今朝のマイ!Bizは、「成長戦略としての競争政策」というテーマで、慶應義塾大学 名誉教授で、東洋大学 教授そして、パソナ会長竹中平蔵さんにお聞きします。
 竹中さんは、菅政権が設置した成長戦略会議の有識者メンバーの1人、その会議で議論された競争戦略についてお聞きします。
 竹中さん、おはようございます。

[ 竹中平蔵 ]
 おはようございます。

[ 田中孝宜(キャスター) ]
 今朝のテーマ、「成長戦略としての競争政策」なんですけれども。

[ 竹中平蔵 ]
 はい。

[ 田中孝宜(キャスター) ]
 今、コロナで経済が疲弊している中で、なぜ、この「競争政策」が重要だとお考えなんでしょうか?

[ 竹中平蔵 ]
 コロナの問題は、ま、短期の問題として、これはこれでしっかりと対応していかなければいけないんですけれども、ま、一方で、中期的な成長力を高めるということは、あの、どんな場合にでも必要だと思うんですね。
 「成長力を高める」というのは、あの、競争力のある産業を作っていくということですけれども、じゃ、どういう産業が成長するのか、ということを考えると、すごく根本的にはですね、実は、健全な競争をしている産業が成長する訳ですね。
 競争の中で、お互い切磋琢磨して、え、そのことによって競争力がついていくと、いうのが、経済の大原則だと思うんですね。
 ただ、そういう観点からすると、今、日本の政府を見ますとですね、あの、公正取引委員会という組織があって、これは実は企業が独占をすると、消費者の利益が守られないので、どちらかというと、消費者保護のために仕事をするというのが公正取引委員会ですよね。
 一方で経済産業省や農林水産省は、産業と、まぁ、強くしたい訳ですけれども。強くする時にどうしてもですね、実は、弱いから守ろうと保護に入る訳ですね。
 しかし、本当の意味で競争力を強めるためには、健全な競争が必要な訳で、気がついてみると、日本の政府の部署に、の中にですね、え、健全な競争を通して、競争力を高めて、成長をしていこうと、そういう責任を持った部署が無いのではないかという問題提起を私からさせて頂いたんです。
 まぁ、その結果の1つとして、え、成長戦略会議の中で競争政策をもっと議論しようということになりました。それが、これまでの、少なくとも、これまでの経緯です。

[ 田中孝宜(キャスター) ]
 競争が向いている産業と、なかなか、そのー、競争が向いていない、ま、分野もあると思うんですけれども、竹中さんはどういう産業で、その競争政策を行っていこうという風にお考えですか?

[ 竹中平蔵 ]
 もっともっと、競争を激しくやって貰いたい産業と、ある程度、制限的に競争をしなけりゃいけない産業っていうのがあると思うんですね。
 例えば、非常に、今、日本では、まだ、この産業弱いけれども、今後、強くなる見込みのある産業がもし、あるとすれば、その産業はこう、いきなり競争に晒して、まだ弱いから海外の企業に負けてしまうと、いうと困りますから、ある程度保護をして、え、ある程度の力をつけた段階で競争市場に打って出て頂くと、そういうやり方が考えられる訳ですよね。
 で、まぁ、もう1つは実は、公共性の高いインフラ的な産業、まぁ、電力とか水道とかですけれども、こういうところはどちらかというと、公的な性格を持った企業が、あの、担当すると、いうことになりがちですけども、本当にそれだけで良いんだろうか、他にもっと民間の活力、ないしは民間との競争も入れて、公的な部門にももっと頑張ってもらわなきゃいけないんではないだろうか、ま、そういう発想が今、求められていると思いますね。

[ 田中孝宜(キャスター) ]
 重要なインフラですけども、交通の分野ですね、竹中さんはJALについては主に国内線に特化して、国際線はANAホールディングス1社にしたらどうかというようなこともですね、発言されたという風に報道されています。
 これ、監督官庁や現場からは強い反発もあるようですけれども、これはどういう意味合いで発言されたんですか?

[ 竹中平蔵 ]
 はい。私は、あのー、まぁ、JALが何年か前に、えー、非常に、こう、経営が悪化した時にですね、まぁ、国は徹底的にこれを助けた訳ですよね。それで、過剰な債務を帳消しにして、そして、法人税も暫く払わなくていいようなことをして、これは、あの、不公平な、あの、改定を国がしたと、当時の国土交通省がしたという風に、私は思っています。
 これじゃ、健全な競争にならないですよね。
 それで今、何が起こっているかっていいますと、コロナで、え、両方共、国際線がほとんど機能しなくなってきていると。で、考えてみると、これも競争ですけれども、国際的な競争という観点からすると、今、世界のエアライン、メガキャリアというのは、どんどんどんどん統合されていってる訳ですね。
 で、そういう風に考えると、例えば、将来的にはアジアではですね、え、中国のエアラインと香港のエアラインが一緒になるような形で、ないしは協力して、1つの勢力を作っていくでしょうと。
 南の方ではシンガポールやタイのエアラインが協力する形で、えー、1つの、これは、塊を作っていくでしょうと。
 で、そうすると、北東アジアにはですね、韓国に2つのエアラインがあって、今度、これ1つになりますけれども、日本にも2つのエアラインがあって、北東アジアっていうのは、あの、そういうメガキャリアが生まれないんじゃないだろうかと。
 だから、私は、あの、北東アジアにやはり、メガキャリアを作るというような観点から、あー、日本のその、国際線のエアラインは統合して良いのではないかという風に、前から発言をしています。
 一方で国内的には、これはこれで、実は健全な競争をして貰わなければいけませんから、大きな会社が独占してはいけない訳ですから、あー、健全な競争をして貰いたい。
 ま、したがって、JALは経営的にですね、破綻を招いたような時期に、その競争政策としてやるべきチャンスがあった。その時にチャンスを逃したという風に私は思っています。
 これと同じような分野で、これから議論しなけりゃいけない問題としては、えーっと、水道の問題とか電力の問題とか、そういう、こう、インフラ系の問題が、私、出てくると思うんですね。
 あの、水道事業っていうのは、今、日本ではほとんど自治体を中心としたところがやってますよね。
 えー、東京でも東京都水道局というのがあって、ところが、フランスではですね、以前から民間会社がこの水道事業の運営をしてるんです。
 そして、民間が上手くいかないと、また、それを公営に戻すとか、え、公営で上手くいかないと、また、民間にやるとか、そこでやっぱり健全な競争メカニズムが働いてるんですね。
 イギリスではですね、電力とか、水道とか、それぞれの、こう、インフラの分野でやってるところで、自治体とかがやるんですけども、それが独占の座に胡坐をかいて、非効率にやってないかと、ちゃんと、消費者のためになってるかということをチェックするですね機関がそれぞれの分野について設けられてるんですね。
 で、こういうことも日本の競争政策の中で、私はしっかりと議論していなきゃいけないという風に思います。
 この、電力の分野も、配電網というのは、いわゆる、ネットワークの経済性がありますから1社で、関東地方はこの1社、東北地方はこの1社、えー、この、1社が配電網を持つっていうはいいと思うんですけれども、発電の方は、別にスケールメリットも何も無いですから、沢山の会社が参入して、健全な競争をして貰う方がいい訳ですよね。
 ところが、配電を持ってる、配電網を持ってる、送電網を持ってる会社が同時に発電をしていたらですね、それは発電の分野で健全な競争にならないのではないかという議論が専門家の間で以前からあって、そういうようなことも、これからきちっと議論をしていかなければいけないという風に思います。

[ 田中孝宜(キャスター) ]
 あのー、まぁ、どうしてもですね、競争政策というと、勝ち組み、負け組みが出て来てですね、格差の問題に触れざるを得ないと思うんですけれども、あのー、以前、竹中さん、ダボス会議でも新しい形での資本主義が求められているという風に仰ってました。
 これ、競争政策は竹中さん、新しい資本主義の中に、どういう風に位置付けられますか?

[ 竹中平蔵 ]
 竹中平蔵 『「健全な競争政策」っていう風に言ってる訳ですけれども、何て言いますか、野蛮な競争でですね、格差が広がってそれを放っておくと、これはあってはならないことだと思うんですね。
 一方で、えー、寡占、独占っていうのは、これはこれで、物凄い格差な訳ですよね。特に、今、情報が重要になってきますから、情報はビッグ・データで独占力が非常に強くて、アメリカ、中国の一部の企業が非常に大きな力を持ってきている訳ですけれども、そういう状況、新しい技術環境が、新しい経済環境を、こう、作ってますので、それを踏まえて健全な競争のあり方を見直す、それが、新しい資本主義に繋がるということだと思います。

[ 田中孝宜(キャスター) ]
 竹中さん、どうも、ありがとうございました。

[ 竹中平蔵 ]
 ありがとうございました。

[ 田中孝宜(キャスター) ]
 えー、今朝のマイ!Bizは、「成長戦略としての競争政策」というテーマで、慶應義塾大学 名誉教授で、東洋大学 教授、そして、パソナ会長の竹中平蔵さんに伺いました。

[文字起こし だいたい完了]
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< 参考資料 >

■ 『三宅民夫のマイあさ! 6時台後半 マイ!Biz「成長戦略としての競争政策」』(NHKラジオ第1 / 2021年1月29日6時40分から6時55分)
https://www.nhk.or.jp/radio/player/ondemand.html?p=5642_05_2648548


■ 竹中平蔵が推進するPFI(Private Finance Initiative ; 民間資金等活用)とは何か?

 PFIとは、公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う手法であり、内閣府や国土交通省が自治体に対して推進を促している政策である。

 元々、英国のジョン・メージャー首相(保守党)が1992年に導入を開始した手法であるが、ブレア内閣(労働党)、ブラウン内閣(労働党)の下で多くのPFI事業が行われた。

 PFIは、財政規律を保ちながら、効率的に公共事業を行うことができる手法として推進されてきたが、近年、PFIの先進国である英国でも欠陥が指摘されている。

 2018年1月18日、英国会計検査院が公表した報告書「PFI and PF2」には、下記のような内容が書かれている。

・ PFIが公的な財政にプラスであるという証拠は乏しい。
・ 総じて公的に資金調達されたプロジェクトよりPFIスキームは高くつく。
・ 学校建設の分析では政府が直接ファイナンスするよりも40%割高。
・ PFIでは、公共による資金調達よりも2から4%(一部では5%も)資金調達コストが高く、さらに多額の付加的な費用(資金調達のアレンジメント・フィーが元本の1%程度、マネージメント・フィーが事業総額の1~2%程度など。)がかかる。
・ 公共部門にとっては、25年から30年という長期スパンでは費用がかさむとしても、短期又は中期的(5年程度)で見ると負債を圧縮できるので魅力的である。このため公共部門の意思決定がPFIに好意的になり、PFI事業を進めるために、VFM(Value for Money)評価が甘くなる。
・ 英国財務省はPFIのメリットとして、事業リスクを民間に移転できること、長期的なランニングコストが軽減されること、を挙げていた。しかし、実際にはこれらは概ね実現されず、PFI事業は開始時には予見していなかったコストをカバーするために高くついた。
・ 英国でのPFIのピークは金融危機直前の2007年から2008年(86億ポンド)であり、その後急速に減少。現在では1990年初頭(PFIが始まった頃)よりも案件の額が少ない。

 さらに、2018年10月29日、英国のフィリップ・ハモンド財務大臣(保守党)は、「今後新規のPFI事業は行わない」と宣言した。

 静岡県 浜松市や高知県 須崎市が下水道事業に導入した「コンセッション方式」は、「PFI方式」の一類型であり、宮城県は、上水道、工業用水道、下水道にコンセッション方式を導入しようとしている。

 竹中平蔵が社外取締役を務めるオリックス株式会社は、浜松市の下水道のコンセッション事業、関西国際空港、大阪国際空港(伊丹空港)、神戸空港のコンセッション事業に関わっている。


■ 「PFI and PF2」(英国会計検査院 (National Audit Office) / 2018年1月18日)
https://www.nao.org.uk/report/pfi-and-pf2/

■ 「PFIは終わったのか ~英国はPFI・PF2に終止符~」(馬場康郎 三菱UFJリサーチ&コンサルティング 経済政策部 副主任研究員 / 2018年11月6日)
https://www.murc.jp/report/rc/column/search_now/sn181106/

■ 『イギリスにおけるPFIの「終焉」と現在の行政民間化の論点』(榊原秀訓 南山大学 法務研究科 教授 / 2019年6月28日)
https://nanzan-u.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=2853&item_no=1&page_id=13&block_id=21


■ 「橋本淳司氏:水道民営化法案とかやってる場合ですか」(ビデオニュース・ドットコム / 2018年7月14日)
[Part1] https://www.youtube.com/watch?v=Yi-zVHaSUiY
[Part2] https://www.youtube.com/watch?v=tpVdbqJshWc

■ 「食い物にされる水道民営化・ダム・治水――国富を売り渡す安倍政権の水政策の裏を暴く!~岩上安身によるインタビュー 第745回 ゲスト 拓殖大学教授・関良基氏」(IWJ / 2017年4月25日)
https://youtu.be/f03temkkEpo?t=903

■ 『20181015 UPLAN 「私たちの命の源が危ない~水・種子・食の安全を守ろう!~」』(オールジャパン平和と共生 / 2018年10月15日)
https://youtu.be/1-yZBBMcPOM?t=789


■ 「新電力倒産で北陸電力に変更 市民病院や小学校など15施設の電力供給 岐阜・飛騨市」(岐阜新聞 / 2022年4月23日)

■ 「新電力からの切り替え受け入れ停止 東北電、企業向け」(河北新報 / 2022年4月16日)

■ 「【独自】仙台市契約の新電力破綻 2社分、新供給元探し難航」(河北新報 / 2022年4月28日)

■ 「破綻の新電力、仙台市交通局とも契約 保障制度で7200万円負担増」(河北新報 / 2022年4月29日)


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