2020年 #岡崎市長選挙、#岡崎市議会議員選挙 開票後分析

画像1

画像4

 2020年10月18日(日)投開票、愛知県 岡崎市長選挙では、中根康浩 候補(無所属 新人 / 政党推薦なし / 元衆議院議員(元民進党→元希望の党))が内田康宏 候補(無所属 現職 2期8年 / 推薦: 自民党、公明党、立憲民主党、国民民主党、連合愛知 / 元愛知県議会議員(元自民党))を32,611.897票差で破り、初当選した。

 同日投開票の岡崎市議会議員選挙では、定数37に対し、立候補者50人(現職28人、元職1人、新人21人)、当選者37人(現職15人、元職1人、新人11人)、落選者13人(現職3人、新人10人)、自民系、公明党は選挙前よりも議席を減らし、次の市議会まで一時的に過半数割れとなった。


■ 岡崎市長選挙 立候補者のインターネット上での活動

中根康浩 候補
[ web ] https://www.nakanet.jp/
[ facebook ] https://www.facebook.com/yasuhiro.nakane.948
[ Twitter ] https://twitter.com/nakayasu40
[ YouTube(動画投稿) ] https://www.youtube.com/channel/UC7IvIsmJTdaKHzsdFc4af6A/videos
[ vimeo(動画投稿、ライブ配信) ] https://vimeo.com/user116849596
内田康宏 候補
[ web ] https://www.yas-uchida.jp/
[ blog ] https://uchidayasuhiro.cocolog-nifty.com/blog/
[ facebook ] https://www.facebook.com/yasuhiro.uchida.1952


■ 中根康浩 岡崎市長候補のビラ

画像2

画像3


■ 内田康宏 候補の実績

 内田康宏 候補は、2012年10月21日投開票の岡崎市長選挙で初当選、翌日、2012年10月22日に初登庁。以降、2期8年、岡崎市長を務めた。

 内田康宏 候補は、PPP/PFI(Public Private Partnership ; 官民連携 / Private Finance Initiative ; 民間資金等活用)推進派の政治家である。

 2013年1月31日付けで男川浄水場更新事業(PFI方式)の事業契約を締結。

 2015年11月、「岡崎市PFI手法導入手引き(第4版)」を作成。
 2016年10月、「岡崎市PPP/PFI手法導入優先的検討規程」を制定。
 2018年4月、「岡崎市PFI手法導入手引き(第5版)」を作成。

 2018年度、国土交通省主催の「PPP/PFI推進首長会議」に参加。

 2019年4月1日、「岡崎市 上下水道局 検針受付収納等業務」について、2020年3月31日までの期間で、ヴェオリア・ジェネッツ(株)と業務委託の契約。

 2019年度、国土交通省主催の「PPP/PFI推進首長会議」に参加し、資料を提出。
 2019年度に提出した資料には、コンベンションホール建設も記載されており、PFI(Private Finance Initiative ; 民間資金等活用)方式による建設を予定していた。

 2020年3月13日、「岡崎市上下水道局 営業業務」について、2025年12月31日までの期間で、第一環境(株)と業務委託の契約。

 2020年4月1日、「岡崎市 上下水道局 検針受付収納等業務」について、2020年12月31日までの期間で、ヴェオリア・ジェネッツ(株)と業務委託の契約。

■ 「PPP/PFIの推進について」(岡崎市役所 総合政策部 企画課)
https://www.city.okazaki.lg.jp/1550/1551/100500/p001328.html

■ 「PFI手法を活用した男川浄水場更新事業について公表しています。(平成24年2月14日以降)」(岡崎市役所 上下水道部 水道浄水課)
https://www.city.okazaki.lg.jp/1100/1184/1174/p010666.html

■ 「新男川浄水場の更新事業」(内田康宏 / 2018年1月29日)
https://uchidayasuhiro.cocolog-nifty.com/blog/2018/01/post-77a6.html

■ 特命随意契約一覧(平成31年4月~令和元年6月)
https://www.city.okazaki.lg.jp/1400/1401/p012553_d/fil/R1tokumei4-6.pdf

■ 「岡崎市上下水道局営業業務 指名型プロポーザルの結果について」(上下水道部サービス課料金係)
https://www.city.okazaki.lg.jp/1550/1573/1655/p025974.html

■ 特命随意契約一覧(令和2年1月~3月)
https://www.city.okazaki.lg.jp/1400/1401/p012553_d/fil/R1tokumei1-3.pdf

■ 特命随意契約一覧(令和2年4月~6月)
https://www.city.okazaki.lg.jp/1400/1401/p012553_d/fil/R2tokumei4-6.pdf

■ 「料金徴収・システム開発業務受託実績」(ヴェオリア・ジェネッツ(株))
https://www.veolia.jp/ja/ja/veolia-jenets/cs-business-results

■ PPP/PFI推進首長会議(平成30年度)
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/kanminrenkei/sosei_kanminrenkei_tk1_000060.html

■ PPP/PFI推進首長会議(令和元年度)
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/kanminrenkei/sosei_kanminrenkei_tk1_000041.html

■ 「夢ある新しい岡崎へ ~岡崎市における公民連携事業の取組」(内田康宏 岡崎市長 / 2019年)
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/kanminrenkei/content/001319479.pdf


■ 中根康浩 候補は懐疑し、内田康宏 候補が推進した、PFIとは何か?

 「1人5万円還元」の是非と「80億円のコンベンションホール建設」の是非に注目が集まり、あまり話題にならなかったが、中根康浩 候補が懐疑し、内田康宏 候補が推進した「PFI(Private Finance Initiative ; 民間資金等活用)」は、今回の岡崎市長選挙の隠れた争点だった。

 PFIとは、公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う手法であり、内閣府や国土交通省が自治体に対して推進を促している政策である。

 元々、英国のジョン・メージャー首相(保守党)が1992年に導入を開始した手法であるが、ブレア内閣(労働党)、ブラウン内閣(労働党)の下で多くのPFI事業が行われた。

 PFIは、財政規律を保ちながら、効率的に公共事業を行うことができる手法として推進されてきたが、近年、PFIの先進国である英国でも欠陥が指摘されている。

 2018年1月18日、英国会計検査院が公表した報告書「PFI and PF2」には、下記のような内容が書かれている。

・ PFIが公的な財政にプラスであるという証拠は乏しい。
・ 総じて公的に資金調達されたプロジェクトよりPFIスキームは高くつく。
・ 学校建設の分析では政府が直接ファイナンスするよりも40%割高。
・ PFIでは、公共による資金調達よりも2から4%(一部では5%も)資金調達コストが高く、さらに多額の付加的な費用(資金調達のアレンジメント・フィーが元本の1%程度、マネージメント・フィーが事業総額の1~2%程度など。)がかかる。
・ 公共部門にとっては、25年から30年という長期スパンでは費用がかさむとしても、短期又は中期的(5年程度)で見ると負債を圧縮できるので魅力的である。このため公共部門の意思決定がPFIに好意的になり、PFI事業を進めるために、VFM(Value for Money)評価が甘くなる。
・ 英国財務省はPFIのメリットとして、事業リスクを民間に移転できること、長期的なランニングコストが軽減されること、を挙げていた。しかし、実際にはこれらは概ね実現されず、PFI事業は開始時には予見していなかったコストをカバーするために高くついた。
・ 英国でのPFIのピークは金融危機直前の2007年から2008年(86億ポンド)であり、その後急速に減少。現在では1990年初頭(PFIが始まった頃)よりも案件の額が少ない。

 さらに、2018年10月29日、英国のフィリップ・ハモンド財務大臣(保守党)は、「今後新規のPFI事業は行わない」と宣言した。

 岡崎市長選挙は、PFIの欠陥に気付いた中根康浩 候補と、PFIの欠陥に気付かず推進する内田康宏 候補の戦いでもあった。

 岡崎市には既に、「岡崎市PPP/PFI手法導入優先的検討規程」が制定されているため、公共事業の内、「事業費の総額が10億円以上の公共施設整備事業(建設、製造又は改修を含むものに限る。)」と「単年度の事業費が1億円以上の公共施設整備事業(運営等のみをおこなうものに限る。)」については、自動的にPPP/PFI手法の導入を優先的に検討することになっている。
 加えて、検討する度に、PPP/PFI手法導入可能性調査を監査法人やコンサルティング会社に委託し、岡崎市の税金から委託料金を支払うのだ。

 つまり、今回の岡崎市長選挙は、市長がPFI手法についてどのように考えているかによって、今後、岡崎市で行われるPFI事業の件数が大きく変わるという、税金の使い道の観点から、非常に重要な分かれ道だった。


ここから先は

16,184字 / 1画像

¥ 10,000

お読み下さいまして、ありがとうございます。