友人のカツセマサヒコの小説を、読まずにレビューする【明け方の若者たち】

漫画家のかっぴーです。こういう仕事をしてると献本と言って、知人の作家さんから本を頂いたりします。「こういう仕事」と言って思ったけど、漫画家の付き合いで献本ってほとんど無い。と言うか無いかも知れない。「こういう仕事」には漫画家は含まれてない。文章の作家さんの文化なのかも知れない。漫画送ってくれ。

それで、ぼくは基本的に知らない人からの献本は受け取らない様にしています。理由は明白で、ぼくは文章を読むのがとても遅いからです。正確には読み始めると早い部類なんだけど(喫茶店一回で小説を読み切るくらい)仕事に必要で読まなきゃいけない本とか、やらなきゃいけない事、時間があればやりたい事等を溜め込む性格なので、知らない人の本を読んでいる場合では無い。

もっと言うと、知り合いのお世話になった方からの献本ですら読まずに溜め込んでしまっている。誰に対する何の言い訳か分からないけど、読む気はある。「読め」とマジックで書いたボックスに入ってる。今数えたら7冊溜まっていた。繰り返すが読む気は本当にある。だから受け取ったのだし、読みたい。自分が尊敬してる人、好きな作家さんの本なのだから読みたい気持ちは完全にある。でも、性格的にそれが2年後とかになってしまい、当たり前だけれど次の本がとっくに出てる。前作だ。前作を読んで感想をツイートした所で何の貢献にもならない。

そんな事が重なって、いよいよ「もう、知り合いからの献本すら断った方が良いのでは無いか」と思っていた矢先、友達のカツセマサヒコから6月に初めて出す小説を献本したいとメッセージが届いた。勝瀬は漫画家になった直後からの長い付き合いだし、家に招くくらい仲が良い。これだけ仲が良ければ、オレのそういう「社会人としての能力が著しく低い」事を十分理解しているだろうから、正直に「読みたいけど、きっと2年後とかになるから、ごめん」と言えば分かってくれるんじゃないか。そう言おうと決意した所で、彼はこういう表現で続けた。

「恩返しに献本がしたい」

普通、献本を受け取ったらレビューをnoteに書くのが礼儀だ。せめてツイート。画像付きのツイートだ。ハッシュタグも忘れずに。最悪インスタのストーリーでもいい。ツイッターは自分の宣伝で忙しいからと、誰も見ちゃいない宣伝ツイートで埋め尽くされたクソったれタイムラインを守るため、インスタのストーリーに情報を逃したって誰も文句は言えないだろう。それが献本の常識、暗黙の了解だ。それなのに、勝瀬の表現ではそれを感じさせない。「恩返しに献本がしたい」という言い方には、彼らしい配慮が満ちている。オレだったら「献本するから日頃の恩を返せ(圧)」と言ってしまうだろう。嘘です、言いません。献本もしないし。

思えば勝瀬はそういうヤツだ。いきなりオススメの子育てに関する本をメッセで教えてくれたりする。その本を見つけて「そう言えばかっぴーさんにも子供が生まれたな」と思い出してくれたんだろうと考えると優しい。細やかだ。その本は早速買って、すぐに読んだ。とてもタメになった。



本、すぐ読んでんじゃねぇ。

勧められた本、すぐ読んでんじゃねぇ。

届いたその日に読んでんじゃねぇ。

なに読んでんだ。



そんな、細やかで人を想う想像力を持つカツセマサヒコの本なら、きっと魅力的な物語に違いない。絶対にそうだと思う。まだ読んで無いけど絶対に読んだ方がいい。あと、ぼくは献本とは別にアマゾンで予約します。アマゾンで自分で買わないと読まないのかも知れない。もしぼくが今後誰かに献本する事があったら、本では無くアマゾンギフトカードを贈ろうと思う。恩返しだもの。


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