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2019年11月の記事一覧
「アイとアイザワ-Magic hour-」第1話
「時間が無い。」そう聞こえた。
床の木目が、美しい蜜柑色の光で照らされていた。夕刻。
ぼやけて七色のモザイクアートに見えていたものが自室の本棚だと気がつくと、指先でつまんでいた眼鏡にやっと焦点が合った。
ぼくは目が悪い。度がキツイ眼鏡を牛乳瓶の底に例えるが、まさしくそれだ。フレームから不恰好にはみ出した分厚いレンズを、くたぶれたTシャツの裾でぬぐうと、よく女性にお褒め頂くシュッと形の整った鼻の