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かも知れない話

昨日、鴨料理を食べたのだが、家鴨(あひる)は鴨の何なのか、その場でググるまで恥ずかしながら知らなかった。
マガモを食用に改良したのがアヒル、そのなかでもマガモっぽく改良されてるのがアイガモ、なのだそう。つまりアヒルもアイガモもみな「鴨」なのである。クジラとイルカみたいなものか。クジラは食べちゃだめなんだっけ。

小説「ライ麦畑でつかまえて」で、主人公のホールデン・コールフィールドが、セントラルパークの池の水が凍ったらそこにいた「ducks」はどうなってしまうんだろうと気にやむシーンがある。
同書の日本語翻訳の二枚看板である野崎孝版・村上春樹版ではこの「ducks」をいずれも「家鴨」「アヒル」と訳しているが、実際のセントラルパークの写真を見てみると、池には茶色い羽のマガモっぽい鳥が浮かんでいる。
「ライ麦」を日本語に翻訳する際、訳者はみなこの「ducks」をどう訳すか、知識と教養とセンスを問われることになる。この優れた2人の訳者は、セントラルパークのducksが実は人間に飼われていて、クリスマスの時期になると食卓に並ぶものだという、ホールデンが言うところの「インチキな」世界の営みを知っていて、あえて皮肉をこめて「家鴨」と訳したのかもしれない。

…まあ、アメリカでクリスマスに食べられるのは七面鳥ですけどね。

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