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北京入院物語(4)


いつ電気を消されるかヒヤヒヤしていて、まったく気がつかなかったのですが、よーーく見ると同じ席の並びの一番はし、つまり窓際に、ぽつんと背の小さな男が黙って座っています。
 
 後から分かったことなのですが、この男性は空港職員で、日本航空や全日空なら機内専用の幅の狭い車椅子があるのに、中国の飛行機にはなく(多分今現在も)、仕方なく空港の片隅にある普通の車椅子をガラガラと押してくるのに時間がかかり、その時間待ちであるということが判明しました。
 
 車椅子はやってきましたが、狭い通路は通れません。
私は空港職員におんぶされエコノミー席からファーストクラスの長い通路を移動し、入り口付近の車椅子に座ることが出来ました。
そうして、やっと見捨てられることなく空港出口まで出てきたのです。

 

 費用が安いから、外国に長期入院するという発想をされる方がどれくらいおられるでしょうか?
 この点は実は私もなぜ外国で入院するのかよく分かりません。
 ただ、紹介してくれた叶琳さんが送ってくれたファックスの中に忘れることのできないようなメッセージがあったのです。
この年の5月に、両親と北京旅行をした際、両親と万里の長城のすぐそこまで行きながら、単に歩くことができないばっかりに車の中で待機せざるを得ず、「一緒に連れてって」とガイドに言い出せなかった遠慮や悔しさを察した彼女が英語でしたが、以下のようなファックスを送ってくれたのです。
これこそ北京への招待状でした。

I carry you on the top of great wall, I promise
叶琳 Yelin

(今度は)私があなたを万里の長城のてっぺんに担ぎ上げます

 万里の長城に登りたいばっかりに北京の病院をホテル代わりに利用した。
まぁ、、、このあたりが事実に近いのだと思います。
余談になりますが、彼女は共産主義の国の人で、信仰心などからっきし持ち合わせていないのですが、何通目かのファックスの中でこんなことを書いてきました。

「自分は泥で出来た泥菩薩、溶けることが分かっているのに人を助けようと川に入る」
北京入院物語(5)

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