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渡る中国にも鬼はなし(29/67)

第4章 中国第3日目 蘇州->上海->昆明 
昆明到着


  それ以降はたいしたハプニングもないまま、飛行機は昆明に近づいてきました。ふと見ると、どう考えても機長か副機長に見える人が私の後ろの席からスリッパ姿で立ち上がり、コックピットに消えていきました。やぼなことは言いたくありませんが、この2人はコックピットから出るべき人なのでしょうか?

 おそらくボーイング767型機は自動操縦で水平飛行をしていたのでしょう。ちなみにボーイング767ー300の自動操縦の能力としては、離陸の一部を除きそれ以降すべてを自動操縦に任せることは可能です。ですから、コックピットの操縦席に犬が座っていようがパンダが座っていようが問題ないのでしょう。しかし、中国ではこういうことが流行っているのでしょうか?

 さてスリッパ姿のその人が、コックピットに消えてまもなく、降下が始まりました。なんどもつばを飲み込まないと耳が痛くなってきます。先ほどは墜落をしても良いほどの楽しい体験をしていたのですが、やっぱり降下が始まると、なんか不安になります。

 母と私は両方で1万4千円の旅行保険に入ってきましたので、残された父親には問題ないでしょうが、旅行保険に入っているということは事故に遭わないということと何の関係もありません。

 飛行機は段々と高度が下がってきて、地表の風景が目に入ってきます。この程度で事故があっても少しは助かるかなと思ってみます。車輪が着きました。まぁ半分は助かるな。強烈な減速です。これで死んだらよっぽど運が悪いな。そして、午後2時40分ころ、無事に昆明に着くことができたのです。

 中国語と英語で「本日はご搭乗ありがとうございました。またのご利用をお待ちしております」程度のことをきれいな中国人のスチュワーデスがマニュアルを見ながら話しています。

 どやどやと一般乗客が降り始めました。私は当然一番後になります。我が一行の中の車イス運搬班の方も私の座席の近くに待機しています。そしてその人たちによって車イスに無事乗り移り「またお会いしたいわ」というような目で私を見つめていた例のスチュワーデスを尻目に、私は機を後にしたのでした。

いえ!
きっとあの目はそういう目だったといまでも思っています。私はそういう人間なのです。

渡る中国にも鬼はなし(30/67)


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