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北京ドタバタ旅行(30)

 両親が風呂に入り終え、しばらくしていると電話が鳴り、英語で
「今フロントに来ています」
と言う旅行会社の女性の声です。

 事前に日本にいるときから何度となくFAXで値段交渉をし、宿泊代とガイド代、タクシー貸し切り代をホテルで払う約束をしていて、その料金徴収に叶琳さんという女性が来たのです。

 実は日本にいるとき、彼女とは何度もFAXでやりとりをしていてお互い少しづつ気心が知れていたので、お金の支払いの後
「コーヒーでもご一緒しませんか?」
と誘っていたのです。

 しかしまぁそう書くときっと綺麗なチャイナドレスのオネーサンかと思われる向きがあるかも知れません。いやそれを願っていたのは他ならぬ私だったのですが、彼女は旦那さんと子供を持つ42才の既婚女性だったのです。

 その彼女がフロントで待っているというので、母同伴で1階に降りていきました。エレベーターを降りた直後に目があった女性は、やはり、奇跡は起こらず、事前に言っていたとおりの42才の女性でした。

 母にトラベラーズチェックを現金化してもらうと、その女性に部屋まで送ってもらえるか確認の上、母には先に部屋まで戻ってもらいました。そういう風にして、私は休日の夜に中国人の人妻と喫茶店で話をすることになったのです。

 当然ではありますが、わずかニーハオに産毛が生えた程度の中国語しか出来ない私は、彼女とは英語で話をすることになりました。日本からFAXでやりとりしている内に、私が立つことも歩くことも出来ない障害者であることに深い同情と関心を持っていると彼女は言っていましたし、1人の人間として話しもしてみたいという様なことも書いてきていましたので、喫茶店での話は料金の支払いよりはむしろ、個人的な話の方がはるかに長時間になり、気が付くとあっという間に夜10時になってしまい、彼女にお願いして部屋まで送ってもらいました。

 父は個室に引き上げていましたので、車椅子からベッドまでなんとか私を移動しなくてはなりません。母と彼女でなんとかベッドに移動し終えたとき、彼女は自分の夫も数年前に交通事故で障害者になったことを言いました。私はその時、なぜ彼女が私に興味を持ったか、少し分かったように思いました。

 かくして北京第1日目は無事に終了し、私と母は寝ていたのですが、その間に事件が起こっていたのです!。

北京ドタバタ旅行(31)


 


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