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渡る中国にも鬼はなし(22/67)
第4章 中国第3日目 蘇州->上海->昆明
みんなの配慮
そうこうする内に、列車は上海駅に近づいてきました。一般乗客がデッキまでやって来ます。はたして上海駅は右側なのか左側なのか気になります。もしこの列車が上海駅が終着駅でなく短時間の停車で発車するようですと、取り残されてしまいます。まぁそんなことは実際ないでしょうが、我が一行もまた大きな荷物を各自持っています。おまけにいうならば私も「結構な荷物」ですので、「結構な荷物」をだれかに出してもらわねばなりません。
そういうことを考えますと、できるだけ皆の時間をとらないように気を付けないといけません。そんなわけで列車が上海駅に近づくにつれ、少し緊張してきました。
![](https://assets.st-note.com/img/1683102505890-aCA1KlafEM.jpg)
結論から言うならば、たいした混乱もなく、各自の手荷物も、そして、私自体も無事にプラットホームに降りられたのですが、1メートル以上の高低差のあるプラットホームに下ろすのは大変だっただろうと思います。
中国の車イス利用者がはたしてこんな列車を利用することがあるのだろうか、そういえば駅員は一切私には無頓着(むとんちゃく)でしたし、車イスの乗客がいたこと自体分かっていませんでした。中国にはまだまだそういう環境を要求するほどの「余裕」はないように思います。
そんなわけで私たちは上海のプラットホームに降り立ちました。荷物はその場でポーターに預け、駅の外に待機している観光バスまで徒歩で移動します。
このとき面白いことが起きました。私たち訪中団は歩道の左側を歩いていたのですが、バスはさらに右奥に待機しています。ですから、当たり前であれば歩道を横切ってバスまで行けばよかったのですが、一団は歩道の切れ目までぞろぞろと歩いていき、そこからバスに向かったのです。つまりわざわざ大回りをしてくれたのです。それは車イスの私のためです。いつの間にかこういうことは訪中団の暗黙の了解事項となっていました。
その日はまたいい天気で、駅から外に出ると抜けるような青空!。この先に向かう昆明で良いことがありそうな予感がします。その予感はまもなく本当になったのですが、その話はもう少し後にしましょう。
私たちは、駅から少し離れたところに待機していた観光バスに乗り込みます。バスは上海空港の国内線ターミナルに横付けされました。現地の中国人の女性添乗員さんが用意してくれた黄色いビニール袋に入ったお昼ご飯を一人一人もらって、ターミナルで別れました。国内線の機内でも食事は出るのですが、お昼間になっていましたので、食べてみることにしました。
中身はサントリーのウーロン茶とゆで卵1個、巻き寿司1個とサンドイッチ1個という構成で、巻き寿司は堅く、サンドイッチにはたいした具は入っていなかった関係で、我々一行の中には「犬のえさだ」という不満持った人もいたようです。
しかし、私は思うのです。おそらくこれだけをパックにして売っていたわけではなく、だれかがこの組み合わせを考え、一つ一つを袋に入れ、袋を閉じて、その袋を持ってバスに乗せてくれたのだろうと。何気なくバスの最前列に積み重ねられた黄色いビニール袋に私はそれを用意した人の姿を、配慮を感じたのです。中国の食糧事情としてはこの程度の昼食でも、結構なごちそうと思って、我々に用意したのではなかろうか……と。
ドライに考えれば、現地の旅行社に渡される料金の中で、儲けから除外される食事代はできればコストをかけたくなかったかも知れません。ただし、どのように解釈するにせよ、一つ一つのビニール袋を閉じる人がいたことも、事実です。私は素直にその行為をありがたいと思いました。
用意されたサントリーのウーロン茶はどういうわけか、甘ったるい砂糖入りのウーロン茶で、日本で飲んでいる同じ物ではありませんでしたが、おなかが空いているせいか、サンドイッチは結構いけました。
渡る中国にも鬼はなし(23/67)
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