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北京入院物語(58)

 この臨時の付き添いは名前を「包」と言い、中国の発音で「バオ」と言います。
数年前から四川省から北京市に出稼ぎに来ていました。
四川省というのはパンダが唯一野山にいる省で、中国の内陸部に属します。
中国内陸部というのは、北京・上海・広州と海に近い沿岸部が大発展しているのに比べ、開発から外れた地域です。

  先の周さんより年齢も下で、なにより田舎出の素朴な人柄です。
話していて、ずるいところが感じられません。
最後の3日目には彼なら楽しい入院生活ができそうだという予想もつきました。

 ここで神様が台本を渡したのが、抗がん剤治療で入院していた北京日本人会の事務員さんでした。
 私も時々お見舞いに病室を訪ねたりしていたのですが、周さんのことで悩んでいることを打ち明け、たまたま代わった今の青年の方がうまくいきそうだというようなことを話しました。

 彼女は中国在住20年です。
中国ではこういう風にするのよというお手本を見せてくれました。
「今から電話してあげるわ」と言うと、あっという間にフーゴンの管理事務所に電話をかけ、なにやら話してたと思うと「明日からあの青年が来ることにしたから」といとも簡単に片をつけてくれました。
北京入院物語(59)

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