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北京入院物語(2)

 

 中国国際航空・北京直行便(CA928)が着陸して以降私はもう緊張しっぱなしでした。
とにかく中国語というものができないのです。

 車椅子の乗客が一番最後になることは分かっていたので、乗客が1人もいなくなっても落ち着いていましたが、今回はこのまましばらく待機してくださいというようなジェスチャーすらなく、客室乗務員も、機長たちも全員姿を消し、機内は本当に私1人になりました。


ウソォーー?
や・・・安い

半日800円でなんでもやってくれる!?
夢を見ているような数字です。
しかし、すでに中国に2回渡航経験のある私は、夢でないことも知っていました。

 日本に比べると物価が1/10なのです。
おまけにバス・トイレ付個室が1日200元(3000円)と書いてあります。
一切の諸経費込みで月15万円程度であり、全額自己負担ながら、調べてみると海外でも生命保険の入院給付金の対象病院というものがあり、その給付金で足りることが分かりました。

 この瞬間、私は漢方治療を受けようと思ったのではありません。
私の脳裏には制約の多い公的ヘルパーではなく、中国人の付き添いと北京市内を毎日遊ぶ自分の姿をありありと思い浮かべていたのです。

 不埒(ふらち)なようですが、私が北京に行こうと決意した理由は、半日800円で付き添いが雇え、北京市内を毎日遊びまわれるという理由以外の何者でもなかったのです。
治療などどうでもよかったし、効果なんてはじめから考えていなかったのです。

 表向きは漢方治療ということでしたが、実態は長期の北京観光でした。
いうなればそれは、お偉いさんの海外視察のようなものだったのです。
いや、、、多少言い訳をすれば、「母が助かるかなぁ」という気持ちもあったのです。
北京入院物語(3)

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