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北京入院物語(19)

  その次に、片手に点滴の針とビンを持った看護師が「ニーハオ」と現れました。
しかし、どう言えばいいのか、プンプンした様子で静脈点滴をし始めました。
私には、気を悪くするようなことを言えるほど語学力はありません。
つっけんどんと言えばいいのでしょうか?

 時に愛想のいい看護師もいますが、大半は無愛想です。
そういえば、葉先生が「看護師が無愛想でもびっくりしないで」と忠告していたことを思い出しました。
中国の看護師は無愛想というのは、「あなたちょっと」と言うときの嫁さんは怖いというのと同じように、当たり前であることを知りました。

 こっちまで気分が悪くなりそうですが、話しも出来ませんので、じっと我慢して看護師のすることを見ていました。
 見ていると日本とは、消毒の仕方が日本とは違います。
日本ですと針を刺す前にアルコールと脱脂綿で消毒をしますが、ここではどす黒いヨード液を綿棒に浸して塗ります。
針を抜き終わって「綿棒で押さえろ」と言いますが、うまく針跡など押さえられるものではありません。

 点滴そのもののやり方をさして変わりはありませんが、ビンの中に入っているのは漢方薬を煎じた抽出液です
一般的には、漢方薬の静脈点滴と呼ばれているものです。
この聞き慣れない治療法に関してはその効果に対しても、じっくりと話をしたいと思っていましたが、残念ながら1週間で中止になりました。

 中止の理由はいたって簡単です。
たまたまある看護師が点滴の針をうまく血管に入れられず、交代した看護師も失敗し、その次の看護師も失敗しました。
私は部屋で待っていたのですが、4人目の看護師は嫌がって現れず、その日以降点滴の針とビンを持った看護師が現れなかっただけです。

 その当時の私の語学力は小学校1年生程度であり、いったいどういうことが起こったのかも尋ねることができませんでした。
しかし、こういった理由で点滴が中止されるのがまさに中国的です。
いい加減と非難されるべきかもしれません。
私は「中国ではなんでもありだ」と感じた初めての珍事でした。
北京入院物語(20)

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