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起承転結、3文字目半の糸

"起承転結 3文字目半の糸"という歌詞は起承転結の結という字の糸へんのことで、「糸は吉に絡まるから」という歌詞で結になる。起承転結の結でもあるし、糸結びの結びでもあります。 「蒼糸」- indigo la End (川谷絵音氏のXより抜粋) ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 小説を読む時間がないなんて嘘だ。恋だって同様だ。 最後のページを開いて1冊読み終えたあの感覚と少し似ている気がする。ぽっかりと空洞ができたかのような、部屋で風の音が聞こえるとはっきりとはしないが心の痛みを感じ

    • 大きな子どもたち

      校庭と廊下を結ぶ横に広い3段しかない階段の隅に俺と黒原先生が腰を下ろしていた。目の前には屋根が可動式になっているプールがある。水面がキラキラ輝いている。先生は俺と同じ目線を向けながら「大人になれよ、」と話を終わらす感じでつぶやいたのを思わず「大人になるって何ですか。」と返した。 「自分で考えな。」 呆れた様子にも見えたその姿の現物をわざと見なかった。 ただひたすらにキラキラと輝く水面が綺麗だった。 小学校を卒業しても校舎は同じままである。ホーチミン日本人学校に転校してき

      • 机と筆箱、そして上履き

        今でも思い出すことがある。 初日から仲良くしてくれた楓は俺が転校してきた3学期が終わると本帰国をするんだと言い出した。早すぎる別れに動揺も出来なかった俺だが、彼は親の転勤も含め中学受験の準備も兼ねてするらしい。中学受験という言葉を彼から知った身としてはそんな事は俺にとっては無縁であるが、以前通っていた学校(バンコク日本人学校)より遥かにここ(ホーチミン日本人学校)の教育水準は高い。とは言いつつも、授業のレベルや教えている先生の質が高い、という訳ではなく生徒一人一人のレベルが

        • タイ生まれベトナム育ち

          「俺、パスポート二つ持ってんだ!」 小6の修学旅行、自慢げに俺はそれが取り柄であるかのように同級生を前にそう話していた。聞き手にうんざりしてる様子はなかったが、そうなんだと一言ばかり返ってくる。タイ国籍と日本国籍の両方を持つ俺は、世間からハーフと言われる人間である。今だとダブルだと言われるみたいだが、俺にとっては気にもしない話である。 話せる言葉はタイ語なのか、日本語なのか、それとも英語なのか、言語が確立せず意味不明な言葉を滅茶苦茶に話していた幼少期の俺はまもなくしてある

        起承転結、3文字目半の糸

          春が終わる

          ちょうど二か月前に買った小説を今日で読み切った。 今年に入って三冊目だ。積読している本がたくさんあるのに本屋に行ってしまうのはどうしてなんだろう、とか思いながら書店の入り口にでかでかと「全国の書店員が選んだいちばん!売りたい本」などと書いてあるから放っておけなかった。読み易さが格段に違った本だったので本屋大賞を受賞しているのにも納得がいく。人が死ぬ小説ばかりを読んでいた俺にとって青春小説は新ジャンルの開拓だった。とはいっても大人が口を揃えていう「高校生のあの頃は楽しかった」と

          春が終わる

          先の倉庫で

          ぐるりと回った先にある倉庫を雑に開いてみる。 持っていた大きく膨らむゴミ袋を投げ込んだ。ひと仕事を終えた感じがすると同時に、辺りが暗くこのまま闇に放り込まれそうな感覚でこのまま消え去ってみたいとも思った。 消え去ってみるなら、住み込みで働かせてくれる遠い地方とかそんな場所に行ってみるのもいいのかもしれない。辛いことは沢山あるだろうけど、それよりも今の状況が辛い。自由になれていなかった。 最近になって、こんなことを考えることが多くなった気がする。何かを長々と書けば、精神を蝕ま

          先の倉庫で

          恋い焦がれ、夜の東京

          江東区?東京の?ほんとに? 町田も東京なのに。ハンドルを片手に起きながら驚いた様子でハテナの記号が語尾に張り付いてくるような声を発してくる。メーターには"2割増"と赤く光っているのをよく覚えている。 それでも快く引き受けてくれた。普段乗らないシートの感覚に慣れずにいたが、発進と同時にその気持ちは落ち着きに変わっていた。 夜の東京には何度も来ている。 普段なら何も思わないし、今も何も思ってないはずなのに。 車窓をぼうぜんと眺めている。川谷絵音が描く東京もこんな感じなのかな、

          恋い焦がれ、夜の東京

          「彼氏のいる君へ、」

          「俺さ最近ブログ書くのハマってるんだよね笑」 「えー!知ってる!なんか言ってたよね、 なになに、ポエムっぽいやつでも書いてんの?笑」 「そういう訳じゃないけど!笑 日記みたいな、それこそこの前行ったライブのレポートとかも書いたよ。」 向かい合わせた席で頼んだ料理を待っていた。 ライブハウスで出会った異性。 見ている場所は違えどコインロッカーでたまたま居合わせてその勢いで話をしてしまった。ライブハウスはそんな場所だ、余韻が止まらなければつい口元が緩んで誰であろうと話し

          「彼氏のいる君へ、」