狭い部屋(三題噺)

恋、停電、葬列

 目が覚めると、真っ暗で、停電かと思ったが、どうやら箱に閉じ込められているらしい。パニックになって周りの壁を叩くと、どうやら目の前の部分が押せば簡単に開きそうだとわかった。少し重いので慎重に蓋を開け、外に出る。

 かなり狭い部屋だった。「なんなんだ一体......」そう思いながら信じられないくらい重い扉を開いて別の部屋に出てみると、昔の恋人がいた。慌てて隠れたが、相手は気づいていないらしい。ぼうっと虚空を見つめている。すごく怖い目をしている。ちょっと気になってしまって、でも直接話すのも嫌な感じがして、親御さんに話を聞いてみようかと思い相手の家へ歩いて行った。幸い、建物から出てしばらく歩くと知っている道に出られた。

 向かう途中、遠くに葬列が見えて、珍しいなと思った。顔までよく見えないが、なんだかものすごく重い空気を纏っていた。なんとなく嫌な予感がして、相手の家に急いだ。玄関に立つと、かすかに言い争うような声が聞こえ、迷いながらインターホンを押す。反応がない。もう一度押してみるが、やはりなんの反応も返ってこない。言い争いを続けている。あまりくどいのも悪いだろうと思って、一旦自分の家に帰る。

 家には誰もいなかった。おや、と思い中に入ると、少し散らかっている。いつものように椅子に座ってテーブルの上を見ると、クリアファイルがあり、何気なく手にとると、自分の名前が書かれた火葬許可証で、死因の欄には他殺と書かれていた。「なんてことだ」私はため息をついて、再び昔の恋人を探しに行った。

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