Kindle Unlimited流し読み5冊(#8-#12)。速記、抗菌薬、ヴェーダ数学、アウトプット術。

#8 『速記ってなに?: マンガでわかる・知れる早稲田式速記』

『速記ってなに?: マンガでわかる・知れる早稲田式速記』(ハシヤマアスカ)
https://www.amazon.co.jp/dp/B09J4HH1DS

会議や講演などでの発言を、文字で記録するための早書きの筆記術として速記がある。早稲田式・V式・衆議院式・参議院式などいろいろ流派が存在する(cf. 日本速記協会の紹介ページ)が、この本は早稲田式速記を紹介したもの。

早稲田式速記についてはネット上でも資料が散見される。たとえば:
http://sokki.okoshi-yasu.net/sb-manual.html

上記から画像を一部引用すると:

早稲田式速記マニュアル ( http://sokki.okoshi-yasu.net/sb-manual.html ) より画像引用

たとえばカ(ka)の文字をみてみる。水平の線分がカ(ka)を表す。ここでキ(ki)の文字をみてみる。カ(ka)の文字である線分の右端に、小さな丸がついているのがわかるだろう。その目で下のシ(si)を見てみると、やはりサ(sa)の曲線の右端に,小さな丸がついている。つまり、小さな丸は i 段の音を表すと推測できる。

一方、ケ(ke)を見てみると、カ(ka)の線分の長さを二倍したものに小さな丸がついている。同様の方式で,ウ段について「大きな丸」、エ段について「二倍の長さ+小さな丸」、オ段について「二倍の長さ」、とわかる。

本作品は早稲田式速記についてマンガで説明している。上で述べたような基本的な仕組みのほか、「キャキュキョ」などの拗音、「パピプペポ」などの半濁音、促音(ッ)、撥音(ン)など一通り紹介し、実際の速記の大会(!)の流れについても紹介している。

マンガ形式で段階的に表記法を導入しているので、とても読みやすい。さらなる省略法(二重母音「カイ」「サイ」)も後半で明らかになり、奥が深いこともわかる。そういう点で、入門書としてよくできていると思う。

#9 『擬武器化抗菌薬辞典~ばくてりProject外伝~ (らいふラボらいふ)』

『擬武器化抗菌薬辞典~ばくてりProject外伝~ (らいふラボらいふ)
https://www.amazon.co.jp/dp/B06VWWDFLP/

抗菌薬を武器にたとえる本。抗菌薬一つ一つのイメージからアイコンを描いているそうだ。

たとえばMPEM(メロペネム、商品名メロペンⓇ; MEPMの誤記か)はいろいろな種類の細菌に効果がある(抗菌スペクトルが広い)ことから、広範囲に攻撃範囲を広げられる薙刀をイメージしたのだという。

もう一つVCM(バンコマイシン)を挙げる。斧のアイコンになっているが、これは「他では割れないMRSAを叩き割るイメージ」(MRSAは通常使われる抗菌薬の多くに耐性のある黄色ブドウ球菌)だそうだ。

ちなみにバンコマイシンの名称の由来はvanquish(征服する、打ち負かす)から来ているそうだが、MRSAに打ち勝つという決意を表しているのだと聞いたことがある。

アメリカ人有機化学者である Edmund Kornfeld(1920-) は, 1956 年ボルネオ島のジャングルの土壌より分離された真菌 Amycolaptosis orientalis を基にバンコマイシンを開発した. バンコマイシン (vancomycin) の語源は英語の vanquish (征服する・うち負かす) に由来している.

平井由児「バンコマイシン Review and Prospect」臨床薬理.43(4):pp.215-221, 2012. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscpt/43/4/43_215/_article/-char/ja/

その他:緑膿菌に効くものは緑の炎をまとっていたり、クラブラン酸などβラクタマーゼ阻害剤は小太刀として表現したり、マクロライド系は14員環・15員環の違いに触れていたりするなど芸が細かい(ロキシスロマイシンはなかった)。

参考文献はやはりというか、『レジデントのための感染症診療マニュアル』(第3版、2015年、医学書院)や『感染症プラチナマニュアル』(2016年、メディカルサイエンスインターナショナル)などであった。
話は逸れるが『レジデントのための感染症診療マニュアル』の最新版(第4版)は1730ページと、もはや百科事典のような様相を呈している。一方、『プラチナマニュアル』(2021年9月の第7版が現在最新)のほうはハンディで参照しやすい。

#10-11 『ヴェーダ数学のマニュアル 初級版:インドから学ぶ計算法』/『ヴェーダ数学のマニュアル 中級版:インドから学ぶ計算法』

『ヴェーダ数学のマニュアル 初級版:インドから学ぶ計算法』
https://www.amazon.co.jp/dp/B07S7MB1P2/
『ヴェーダ数学のマニュアル 中級版:インドから学ぶ計算法』
https://www.amazon.co.jp/dp/B07W882L81/

インドの計算法であるというヴェーダ数学について学ぶ本。後ろのほうにサンスクリットでスートラが書いてあるのがおもしろい(たとえば『初級マニュアル』のpp.162-163)。

方法はたくさん挙げられているが、そのうち例を二つ:
「1.6 足して引くことで(初級版)」33+9 を 33 + 10 - 1として計算する、54 + 39 = 54 + 40 - 1 = 93 など、引き算に変換して計算するとやりやすい。
「第2章 2倍と半分(初級版)」「3.1 比例的に(中級版)」ある数を二倍と半分することがうまくできれば、6×14 = (6×7)×2 = 42×2 = 84 などと計算ができる。

「第2章 2倍と半分」で思い出したことだが、あの池谷祐二さんは九九ができないとどこかで(たしか『高校生の勉強法』)で書いていた。足し算に加え、二倍することと半分にすることは即座にできるため、上で挙げたような計算をすることで九九よりも柔軟に幅広く計算ができるのだという。

自分の実感としても、暗算をするときは確かに⬆のようなことをやっている覚えが多々ある。おそらく同時多発的にそういうテクニックは生み出されているのだろう。

しかしヴェーダ数学中級編になってくると、わりと状況特異的なメソッドが出現してくる印象(ただし「特異的」という表現はおそらく、現代の人間からみたhindsightではあろう)。1/19を小数に直すなどの方法が出現したり(p.49-)して、時代の要請を感じる。(コンピュータの)ライブラリがその時代の社会的な(計算機資源的な)需要に応えるために整備されるようなものだろうか。

#12 『書き出す・見直す「アウトプット思考」を通じてGTDを実践するiPad手帳術: 文章を書き、考える人のための「iPad」活用術 情報整理大全』

『書き出す・見直す「アウトプット思考」を通じてGTDを実践するiPad手帳術: 文章を書き、考える人のための「iPad」活用術 情報整理大全』(yoshinon@情報管理LOG、金風舎、2021年)https://www.amazon.co.jp/dp/B09MWG9F3Y/

  • Web上の情報は一読したあとPocket https://getpocket.com/ でタグ付けして保存する(Loc.366)

  • 読書メモはScrapbox https://scrapbox.io/ に残す(Loc.393)

  • Scrapboxで読書メモをとる際のハードルを下げる:a)スクショを使う、b)音声入力、c) iPhoneアプリのPorterを使う(Loc.413)

    • a)電子書籍で読む場合は、気になったページをスクショする。それを章ごとなどに振り返り、トリミングし、Scrapboxに貼っていく。(Loc.416)

    • b)音声入力は紙の本で。iPhoneでScrapboxを開き、そこに音声入力で入力していく。

  • GTD(Getting Things Done; 仕事術の一つ)のキモは、"「あのタスクどうだったっけ?」とモヤモヤを抱えたままでいるよりも、まずは頭の外側に出してしまう"こと。"「頭の外に出すこと」こそが、GTDの基本であり、アウトプット思考法の真髄なのだ"と。(強調は引用者による、Loc.440)

  • 付箋紙は、無印良品のアルミの名刺ケースに入れておく(Loc.454)

  • Windows用の紙copi https://www.kamilabo.jp/ が良いと。"PCでの作業では、Ctrl+kというショートカットキーで紙copiを呼び出し、その場で書いている。紙copiの素晴らしいところは、多少マシンスペックが低くても瞬間起動できるところである。Windows98のころから愛用しているのだが、今も変わらず瞬間的に起動し、思考をキャプチャしてくれる。ちなみに、Scrapboxのメインの開発陣の一人である洛西一周氏が、この紙copiの作者である。"(Loc.537)

  • 1000のオーダーの量のメモを管理するには、「タイトル付けだけをサボらずにやっていると、検索する時の手間は相当軽減される」と。「100〜200ぐらいのデータ量だと、別に好きにタイトルをつけていれば良いと思うが、これが1000〜10000ぐらいのデータ量になってくると、発見するのに時間がかかるようになる。瞬時に発見するためには、命名規則を自分なりにきちんと確立」したほうがよいとのこと(強調は引用者による、Loc.599)

⬆で挙げられている「情報の数」について。著者はこう述べている:

個人的な経験から、いくつかのマイルストーンを定義した。 「1000の壁」と「10000の壁」である。
 「1000の壁」は、アナログツールも含めて、1000個レベルの情報を扱うときに訪れる、使いづらさを感じる壁である。メモ帳に1000個の情報が入ったと仮定すれば、それを使いこなすことは容易ではないと気づくだろう。同じように様々なサービスに委ねたときに、まずは1000個入れるようにしている。そうすると、すぐさま破綻するサービスやアプリがたくさん出てくる。検索することが難しくなったり、もっさりと重くなったりして、使い勝手に関わる部分が極度に低下する症状が出てくる。個人的な感想としては、最低でも「1000の壁」を超えられるサービスでないと常用できないと判断している。
 次なる大きな壁は、「10000の壁」である。 実は、ここを超えることができるサービスは、あまり多くはない。これだけの大量の情報は、もはや人間が普通に扱える情報量のキャパを超えてしまっていると思われる(1000でも実質厳しいと思う)。したがって、完全にシステムに依存しないと、それらの情報を活かすことができなくなる。そのため、10000以上の情報を飲み込み、吐き出すことができるサービスが望まれる。好きなときに貯めることができ、好きなときに取り出すことができることが、最低求められる機能だと思うが、それらを満たすことができるサービスは非常に少ない。しかし、この「10000の壁」を超えられるサービスでないと、長い間情報をアーカイブできるサービスにはなりえないと考えて

(Loc.712-)

オーダーについての考察はあまりなくて新鮮だった。こういうサイズ感のは使ってみた人でないとわからないことが多い。

手帳のデジタル化についても試行錯誤している。はじめはScanSnapで月一回、アナログ手帳をスキャンし、クラウドに保存するようにした(Loc.761)が、その後iPadのGoodNotes 5というアプリに移行した。

著者は手帳にスケジュールやタスクを書かない。それらはGoogle CalendarやTodoistでまかなえるからである。手帳に書き込むのは、備忘録・議事録・アイディア・人の話をまとめたものなどであるという。

共通して必ず書くのは、タイトルと日付である。タイトルは、 < > で囲い、分かりやすいタイトルを記入する。例えば、会議の記録だとするならば、 < ○○検討会議 > などである。その代わり、同じ打ち合わせならば、必ず同じタイトルになるようにしている。

(Loc.919)

著者はiOSのショートカットを使って、日付をGoodNotes5に半自動で入れている。本書にそのショートカットのQRコードが載っている(Loc.923)。

手帳の使用量について。ここでもサイズ感が出てくるのがおもしろい。

紙の手帳時代は、年間100枚〜150枚程度しか書いていなかった。しかし、デジタル手帳に切り替えた2019年からは、約300枚〜400枚ぐらいと倍増している。手帳の書き方が変わったからというのもあるが、それでもデジタル化することで、上限がなくなったことのインパクトは大きい。デジタル化することでスケールしやすくなることの一例だと思う。

(Loc.970)

アウトプットで重要なのは「書き出すこと」と「見直すこと」と著者はいう(Loc.985)。特に、「見直すこと」が重要である(Loc.994)。そのために「検索しやすいようにタイトルを書く」ことと、「サムネイルによるザッピングを意識的に行う」ことを行っており、特にサムネイルによるザッピングはおおよそ週一ペースで行っているという。

ザッピング〖zapping〗
 テレビを視聴する際、リモコンを使って頻繁にチャンネルを変えること。クリッピング。

(『大辞林4.0』三省堂、2019年)

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