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【消滅可能性都市から池袋アニメシティ構想へ】豊島区のカルチャー・ドリブンなまちづくり

こんにちは。

豊島区に在住でアニメ好きな人間なので、自宅から3キロ程度と距離感がちょうど良い池袋のアニメイトを目印にランニングや散歩をするのですが、ふと気がつくとアニメイト横にあった「池袋保健所」のビルが無くなって工事中になっていました。

豊島区のホームページによれば、池袋保健所は、サンシャインの裏→区役所本庁舎横の再開発地区に段階的に移転し、こちらの跡地は隣地のアニメイトに売却され、アニメイトの施設が建つのだとか。

いちアニメファンの私としては、当初は「アニメイトの増床ラッキー(^^)☆」くらいにしか思っていなかったのですが、ここは豊島区が力を入れて作った劇場複合施設Hareza池袋の真隣であり、アニメ・コスプレ関連のイベントが数多く開かれる中池袋公園が目の前にある重要な立地です。

※Hareza池袋はこちら。隣のtohoシネマ池袋と直結し、8つの劇場がある複合施設。

そのため、アニメファンとしても、行政職員の端くれとしても、「豊島区がアニメで賑わいを見せる重要な場所をアニメイトに売却をして、今後どのようなまちづくりを目指していくのか」という点が気になったので調べてみました。

そうすると、豊島区のカルチャー推しな『カルチャードリブン』とも言えるまちづくりの戦略に関わる動きがみえてきたので、ご紹介したいと思います。

1 保健所跡地を「総合聖地」として「池袋アニメシティ構想」へ

池袋保健所跡地がアニメイトに売却されたのは前述しましたが、豊島区のホームページに掲載されている『池袋保健所跡地活用事業に係る優先交渉権者の決定について』によれば、「国際アート・カルチャー都市構想」の実現のために、跡地については「誰もが主役になれるエリア「総合聖地」の実現」を目指し、アニメイトが跡地活用をしていくとしています。

そして、跡地活用を行うに当たってアニメイトが提案したコンセプトの一つがこちら。

メインカルチャーとサブカルチャーの共存
Hareza 池袋と一体となり、メインカルチャーとサブカルチャーの両方を備えた エリア「総合聖地」を確立し、国際アート・カルチャー都市構想の一翼を担う。

つまり、隣地の劇場=メインカルチャーを担うHareza池袋と、アニメ=サブカルチャーを担うアニメイトとを「統合」する聖地を作り、両者の共存を目指すとのことです。

完成した建物が以下のイメージになります。向かって左隣のHareza池袋との一体感のあるデザインになっています。

そして、既存のアニメイト店舗と連結し、物販スペースも拡張しつつ、イベントスペースや劇場スペースも作り、賑わいを作っていくということとなっています。

そして、コンセプトで気になる文言がこちら。

池袋アニメシティ構想の実現                        この街に来れば、マンガ・アニメを通して様々な体験ができる「池袋アニメシティ」構想の実現を図る。

構想の具体的な中身は書かれていませんが、「Hareza 池袋とあわせて年間 1600 万人の集客と周辺施設への年間経済効果 200 億円を想定」としていることから、アニメイト単体ではなく、池袋の街全体をマンガ・アニメを通して盛り上げていこうという展望をアニメイトは考えているようです。

池袋には、腐女子の聖地である「乙女ロード」はもちろん、直近では講談社やブシロードが運営する2.5次元舞台を楽しむミクサライブ東京も出来ていますし、アニメを中心としたサブカルチャーで街を盛り上げていくというまちづくりに今後も期待したいところです。

2 豊島区がアニメを推す理由(国際アート・カルチャー都市構想)

さて、アニメ関連施設が増えて、池袋のアニメがますます盛り上がるのは、アニメファンとしては歓迎すべきことですが、行政職員視点で見た「まちづくり」の観点からもう少し深堀りして考えてみようと思います。

そもそも「行政としてアニメを推す」には理由(ストーリーともいえます)が求められます。

なぜなら、行政のまちづくりは、5年から10年スパンの「長期計画(総合計画といわれます)」を定め、行政内の各部署は、その計画のコンセプトを元に1年ごとの事業を組み立て予算を要求し実行していく、というのが基本的な流れだからです。

そのため、行政がアニメというカルチャーを推すにも、そもそもの「まちづくりの計画」に反映され、そのカルチャーを推すことが市民全体の公益につながるというストーリーが必要です。

そして、そのストーリーを裏付ける計画こそが先程の豊島区発表の資料にもあった国際アート・カルチャー都市構想』になります。

国際アート・カルチャー都市構想は、平成27年(2015年)に豊島区が定めた計画です。

もともと、豊島区では既存の地域資源を活かした『文化創造都市』と安全なコミュニティづくりを目指す『安全・安心創造都市』を進めてきましたが、これらの取り組みを統合・発展させて『まち全体が舞台の誰もが主役になれる劇場都市』を目指すとしています。

そして、以下のコンセプトにもとづく取り組みを行っていくとしています。

1 多様性を活かしたまちづくり
2 出会いが生まれる劇場空間
3 世界とつながり人々が集まるまち

さらに、この「国際アート・カルチャー都市構想」を具体的戦略に落とし込んだ「国際アート・カルチャー都市構想 実現戦略』において、『サブカルチャーの集積地としての魅力の普及』を行っていくと書かれています。

つまり、『国際アート・カルチャー都市構想』で定められた『誰もが主役になれる劇場都市』のコンセプトが、『サブカルチャーの魅力の普及』という戦略に落とし込まれて、『豊島区の魅力発信のためにアニメを推す』ということに繋がっています。

なお、この「国際アート・カルチャー都市構想」は、「消滅可能性都市」への対応策の一つとして発表されたという側面も持ちます

以下、国際アート・カルチャー都市としまの特設サイトより

国際アート・カルチャー都市とは                      平成26年5月、豊島区は23区で唯一、「消滅可能性都市」と指摘されました。これを受けて、「女性にやさしいまちづくり」、「高齢化への対応」、「地方との共生」、「日本の推進力」の4本柱のもと、持続発展都市を目指した新たな取り組みを進めています。“文化の力で日本のリーダーとなるまち”、それが「国際アート・カルチャー都市」です。これまで育んできた多様な文化を生かして、世界の人々を惹きつける「国際都市」を目指します。

つまり、消滅可能性都市を防ぐためにも、アート・カルチャーを活かした街づくり、すなわちアニメ等を推して世界の人を惹きつけていこう!!ということです。

3 まとめ

以上、「保健所跡地をアニメイトに売却」から遡る形で「なぜ豊島区がアニメ推しか」までを書いてきました。

一連の動きをまとめると、

・豊島区では文化創造都市や安心安全創造都市のまちづくりをアップデートするとともに、消滅可能性都市への対応として『国際アート・カルチャー都市構想』を作成

・「国際アート・カルチャー都市構想」のコンセプトに基づき、「Hareza池袋」などメインカルチャーの拠点を整備するとともに、アニメなどの豊島区に集積するサブカルチャーの魅力も発信

・直近では、池袋保健所跡地をアニメイトに売却し、メインカルチャーとサブカルチャーとを共存させる「統合聖地」を作りつつ、「池袋アニメシティ構想」にて周辺地域も巻き込んで地域を活性化していく。

という流れとなっています。

特に、私が面白いと考えたのは、豊島区が「カルチャーに特化したコンセプトを定めたまちづくりを行っている」=「カルチャー・ドリブン・シティ」であることです。

(もちろんカルチャー『だけ』を振興するという意味では決してなく、豊島区の多様性を育んできたカルチャーを起点にした思想で、まちづくりを行っていくという意味です)

行政のまちづくりは、あらゆる主体に配慮して総花的になりがちではありますが、カルチャーに特化した計画を作ったことで、結果的に、劇場施設やアニメ関連の施設も増えて、池袋が賑わいをみせているのではないかと思います。

※コロナ禍前のニュースですが、こんな記事も。

いちアニメファンとしても、豊島区の住民としても、今後の豊島区の「アニメ・ドリブン」な取り組みに期待したいと思いますし、街にしても、何にしても「尖らせると面白い!!」と個人的に感じた話でした。



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