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関の孫六 船坂 弘

大変興味深い本ですが、
一部だけ紹介したいと思います。

二七代孫六さんと船坂弘さんとの対話のなかで、ドイツのカミソリの会社、
ゾーリンゲンの話が出てきます。

戦時中、ドイツのゾーリンゲンの技術者が
多数来日されました。

日本に来たのは、日本刀の切れ味の謎を
解明したかったそうです。

日本刀は、西欧とは異なり、非科学的な手加減で制作されます。

しかしながら、西欧の近代的な熱処理で
作られる刃物よりも、
抜群の鋭利性を保っています。

当時、ドイツでは、スウェーデン鋼を使用していました。

実際のところ、鋼の品質は、
日本の玉鋼と同じくらい良質だそうです。


鋼を打つ工程のことを27代孫六さんが何度も説明されました。

しかし、ドイツの方々は納得されなかったそうです。

関孫六の刀の特徴は、
「折れず、曲がらず、切れる」です。

そのためには、最も手数のかかる工程が
あります。

玉鋼の制作には、
木炭の選別から始まります。
木炭が鋼を溶かし、鋼質を固める作業に3日、

さらに玉鋼を伸ばし、細かく割ります。

その後、鋼の品質を見極め、
刀のどの部分に使用するかを決めます。

選別した鋼を、それぞれの
使用目的に応じて鍛錬します。

鍛錬は、鉄を打つことで、不純物を取り除きます。

しかし、容易なことではありません。

鉄を折り返す鍛錬が、たったの一回でもうまくいかないと、

刀が出来上がった時に傷となって現れるそうです。

まんべんなく、練り上げた地鉄で刃文が冴え、
切れ味が加わってこそ名刀となのです。

このような、非常に手間がかかる工程があってこそ、
日本刀になります。( 長文になりそうなので、これでも結構省略しました。)


結局、何もわからないまま、ゾーリンゲンの技術者たちは、
名刀をたくさん購入し、ドイツに帰国されました。


全ての刀を切断、細かく科学的に分析し、
あらゆる角度から研究されたそうです。

鍛錬を機械で試みたのかも知れません。

それでも、結局、孫六や日本刀の切れ味等の理由を解明できなかった。

西欧人は、科学的に分析することに重きを置きます。

日本人が鍛える刀に魂を吹き込むようなこと、鍛錬の意味がドイツの人には、全く受け入れられなかったようです。


現在でも科学的な根拠がないと、納得しない人も多い世の中です。

このゾーリンゲンの話だけでも
全てが科学的に証明できるわけではない、
と考えざるを得ません。


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