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あべのハルカス美術館「広重-摺の極」

あべのハルカス美術館が開館10周年記念として開催している美術展。
3年ぐらい前に東京で「北斎展」を見た時にとても面白かったので、広重展も是非とも行きたい、と思っていた。

入場すると、まずは60余年の人生に沿って、各年代に創作されたものが4章に分けて展示されている。

第一章は20代に描かれた役者絵、美人画、芝居絵。
どれもとても躍動感があるというか、生々しいリアルさがあって、語弊があるかもしれないけど現代の漫画、劇画に近い感覚で面白い。

第二章は30~40代前期の名所絵。
永谷園のお茶漬け海苔のオマケで馴染みのある絵が並んでいる。
自分的にはとてもなじみの深い「庄野 白雨」があって、「おお!」と思う。

第三章は30~40代中後期の名所絵。
見ていると、この人、ホントに全国を歩き回ってるんだな・・・と感心する。
そりゃあ、当時は歩くしかなかったのだけど、それにしても江戸、越後、信州、関西、備前、出雲、などなど、どんだけ健脚だったんだ、などとあさっての方に関心が引かれたりする。

第四章は40代後半から没年までの名所絵。
色遣いが華やかになっていて、構図やタッチに安定感が出てきて、ひとかどの絵師としての貫禄が感じられる・・・ような気がした。

第五章は「広重の花鳥図」
どれも鮮やかな色遣いで、床の間に飾ったらさぞかし華やかであっただろうなと、江戸時代の商家の客間などを想像する。
絵具としてはとても高価だったというペルシアンブルーを多用していて、特に「鮎」の絵は美しかった。

第六章は「美人画と戯画」
これまた情景が見えるような面白い絵が多く、特に「両国 青柳」という絵は、船に乗り込もうとしている芸者さんたちやそこに料理を運んでいる女中さんが動いているのが目に見えるようだった。

Wikipedia 江戸高名会亭尽 両国

第七章は「多彩な活動」として、すごろく盤の絵や、絵本の挿絵など職業絵師・広重の作品が並ぶ。
注文があればほぼなんでも描いた、と言われる広重の作品は、感情や思想の入り込まない、単純に目に美しく楽しく面白い、当時のエンタメだったんだなと思う。

第八章は「肉筆画の世界」
版画で量産してきたカラフルな娯楽絵とは違う、繊細な筆致の幽玄な風景画が見られる。
かと思えば、墨で書かれた緻密な版下絵もある。

・・・と、展示の流れをざっと書き残してみたが、正直なところゆっくり味わえたとは言えない鑑賞だった。
とにかく人が多く、来場者の年齢層は私と似たり寄ったりの高めの人が多く、展示作品はどれも比較的小さめでどうしても目を近づけて見るので、
作品の前は常に人の頭でいっぱいで、矯めつ眇めつゆっくり鑑賞している余裕はなかった。
そして途中で、「これは版画だからそんなにじっくり見なくてもいいかもしれない」と思い、人々の頭の間からざっと見ていき、図録を購入して帰った。

この図録がとても充実している。2900円はお安いと思う。
コーヒーなど淹れて飲みながら、じっくり楽しみたい。

この広重展に比べると、先週行った東京の美術展は空いていたなぁ。
美術展はあの静謐な空間を味わうのも楽しみの一つだから、混雑するとちょっとツライ。
たくさんの人に来場してもらうに越したことはないのだけども。


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