「ためらい」

玄関で泣いた

どこへも踏み出せないことを泣いていた

夜のベランダで泣くときは

空か地面へ吸い込まれてしまいたかった

かなしい理由と

目的のなさと

ほとんどを苦悩に埋められた

経過だけがただあって

わけがわからなくなっていた

いつかいくつもの出口で

やはりへたばりうなだれて

何度歩けなくなっても

どんな真実より

この感情を

わかろうとしなければならない

気づいてからはもがいた

冴える器官に吐息をきざみ

自分自身を確かめる

青い旋律は無作為に降る

雨ざらしの時を延ばす

私の言葉はおぼつかず

とぎれていて崩れていて

役立たなかった

ずぶ濡れで走っても

誰かに道を尋ねても

たどり着く場所をついに選べなかった

心を体に演習させる

ここが居場所

諦めることの美しさを歌い続けていた

電波や回線に運ばれてきたもので

満足してなごむ

声を出して笑えればそれでよかった

コンビニで買う炭酸水に

さわやかで静かな音をたてて

怒りも憎しみも溶かすことができた

生きる術を身につけたはずだった

いつだろう

私は大きな入り口にいた

時々かなしくて

いつも幸せな

感情の割合が変わる

この炎の両極を

知りたくはなかったが

私は明らかに燭台を背負わされていた

当然のように火は灯された

とまどう芯が焼失するまで

探り続ける煩悶と

その確かさにほてり

私はひるんだ

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