桃好き、あまりにもエルドラド

ももたろう。

私の桃はきっとももたろうが原点なのだとおもう。子供の頃イメージしたももたろうの桃があまりにもエルドラドだから、私は桃が好き、もはやこれはディスティニー。ももたろう、それは甘い甘い束縛。

そんなわけで桃である、否、ももたろうである。物語を思い出して想像して欲しい。

大きな大きな桃が川をどんぶらこーすっこっこ、どんぶらこーすっこっこと流れてくるのだ。両手で持たないと持てないくらいの大きな桃がゆるゆると流れてくる穏やかな川。青い水面に桃色の大きな白桃がぷかりと浮かぶ。ハート型をひっくり返した小高い山のような姿で悠然と川を進む。どんぶらこーすっこっこ、どんぶらこーすっこっこ、流れてきた桃は導かれるようにおばあさんの傍に流れ着く。

じいさまは桃が好きだんべ、持って帰んべや

ずしりとした重み、果肉を潰さないようにそっとそっと、タライの脇に洗濯物を寄せて、真ん中に桃を乗せて持って帰ろう。おじいさんと一緒に食べよう。

そして、あの瞬間が訪れる。

そう、おばあさんが家に帰っておじいさんに桃を見せ、ほいだら食べんべかと、桃を2つに割ろうとおじいさんが包丁を桃のてっぺんに構えたその時!!パッカーン!!割れるのだ、桃が!!桃が自動的に割れると言う異常な事態?真ん中から光り輝く赤ん坊?いや違う、そんな事はどうだっていいんだ!二つに割れた真っ白な桃、た、た、食べたい!!ももたろうが入っていた桃のガワ?カラ?でも普通の桃にしたらいくつも分の桃がそこに!!ああ、おじいさんもおばあさんもそこの赤子に夢中ですが、あの、あのあそこに大きな桃があるんですけど。た、た、食べないなら私もらいますよー!!

と言いたかった。絵本の中の桃の白さよ。

だからわたしのももたろうは、生まれたばかりの輝くももたろう。ももたろうとの邂逅を喜ぶおじいさん、おばあさん。そして、先ほどまでメイン会場だった土間の隅で半分に割れた桃を包丁で大きく切り取り、口いっぱいに喰らう私。横目に新しくできた家族の幸せな姿を盗み見しながら、桃だ桃だ。

これが私のももたろうなのである。

(余談だが、全く同じシチュエーションの夢まで見たことがある。期待した桃は無味だった。悲しかった。)

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