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「ロンリネス」長考中!!

桐野夏生さんの小説『ロンリネス』を読みました。

湾岸のタワマンに住む有紗は、単身赴任から戻った旦那と娘の小学校受験や住まいの問題をめぐってギクシャクしています。ママ友の洋子はダブル不倫の道を突き進み、誰も自分を見つめてくれない。毎日が薄曇りの様な心持ちの彼女はある日、階下にに住む男性・高梨の存在が気になっていきます。。。

いや、恐ろしかった!!『OUT』みたいな怖い小説を避けたつもりだったのですが、読後感はまさにホラー。

何故かと言うとですね、階下の家庭の父親・高梨が有紗にグイグイ恋心をアピールするのですね。好きだと告げたり、辛くなるから深い仲にならないと宣言したり、でも会いたいんだ!!と、有紗をドライブに誘ったり、息つく暇もありません。

有紗と言う女性は、プライドはあるけど自分がない、傷つきやすいけど動かない女性なので、ウジウジ考えてる内、グイグイ押されて、相手のペースにはまっていきます。

一方の高梨は現在の家庭を見切っていて、家庭は維持するけど気持ちは終っちゃってるスタンスが非常に強固です。妻から愛されているのは自覚してるし、子供のサッカーの見送りなんかもしています。だだ、もう、死に場所を探す屈原並みに絶望していて、堕ちたいと思ってるし、同様に空虚な有紗を道行にしようとしてます。アリ地獄みたいに。

『携帯落としただけなのに』じゃありませんが、寂しくなることは、パートナーとの関係に難しさを感じることはこんなに怖い事に巻き込まれるような悪いことなのかしら?有紗は空っぽの心を、高梨に必要とされて流されて行くのだけど、なんだか同情したくなる様な気がします。ひとりぼっちで寂しかったのねって。必要とされて初めて目覚めた自分がいたのねって。

作者の桐野夏生さんは、こんな風に道ならぬ恋に人が落ちたとして、あなたはそれを糾弾できますか?と問いかけているのだと思いました。否、切っ先を突きつけてきている感じでした。あなたなら、どうするの?って。

もう本当、情けないですがごめんなさい関わりたくありません。死にたくありません。と逃げたくなる自分を確認できた一冊でした。

三十六計逃げるに如かず。

後、義実家のお母さんとか、ギクシャクしてる旦那とか全然悪い人たちじゃなくて、私は好きです。娘もいい子だし。

有紗は、そう言うとこ見てないよねって思います。

小学校受験させるかさせないか、とか、自分の就職先をどこにするかも、旦那と口論はしても、現実にはなんにも行動を起こしてない、そう言うとこあるよね、有紗、と呼び掛けたくなりました。

なんかもうちょっと庶民的な、フツーに愚痴を言いあえる様な身の丈に合った場所で自分で自分の人生を切り開けたら、踏み出す力があったら、こんな展開にはならなかったのにねって、私は有紗の肩を抱いてあげたかったりもする。

言葉にできたら、自分で決めて足を踏み出せたら違う未来があったかもしれない。ただ、彼女の空虚さには作者は決して触れず、それが故に彼女の空っぽさと寂しさが際立つ『ロンリネス』なのでした。

それでまた、いつかどこかで長考中にお会いしましょう。










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