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ショート・ショート 月と猫

月に猫は言った。もしぼくが故郷に帰るとして、そこに誰がいてくれるの。月は言った。故郷は海だよ。誰もいない海。儚い青の惑星さ。曲がり角を曲がれば、すぐそこだよ。猫は聞いた。もうすぐそこなの。ぼくは怖いよ、まだ曲がりたくない。月は言った。青は透明さ。もう君は足元まで浸かっているよ。猫は言った。さよなら惑星、永遠の月あかり。さよならお月さま。僕は行くよ。それはもう月が陰に隠れた後だった。

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