オチのないショートショート

たまに頭に湧く、とりとめのない物語。それをまた、とりとめもなくまとめていたWord文書が、そこかしこに散らばっている我がPC。
暇なのでそれを読んだら、なんか面白かったので転載しときます。
え?自分の書いた文章が面白い?
手前味噌なヤツだな…とは自分でも思いますが、数年前とかの落書きなので、書いてる本人も何を書いたんだかよく覚えておらず、ほとんど他人の作品みたいなものです。

その日~満月の夜の急襲者~

 その日、村が独特の空気に覆われていた。張り詰めた緊張感で押しつぶされそうな夜、満月を背にヤツらは現れた。

 村の腕利きの若者が応戦したが、若いその人間は相当な手練だったらしい。村の猛者であるその若者たちの腕を裁ち、脚をなぎ払い、首を撥ねた。大地は血に染まり、阿鼻叫喚の声が村中にこだました。

 恐る恐る家の戸口から外を眺めていたオイラの頭を、父上は大きな手のひらで撫でて、いつになく優しい声で諭した。

「ぼう、下がっておいで。母上を守るのだぞ」

 そう言って、金棒を担いで、戦の嵐の吹きすさぶ外へと、ゆっくりと足を踏み出した。そして、大地を蹴立てて走り出した。まるで、大きな背中でその恐怖の夜の闇へと身を投じる様に。

 その父の後ろ姿に見えたのは、ただならぬ侘しさ、虚しさ、寂しさ。そして、まるでオイラのこと、母上のことを断ち切ろうとするような寂寥感だった。抑えることのできない衝動を感じたオイラは、母上の止める声を聞かずに、外へと飛び出した。

 丘の上に立つと、丘の麓から怒号が聴こえた。雄叫びも聴こえる。父上の声だ。父上は戦っていた。父上の身の丈半分ほどしかない人間の小僧と戦っていた。
 ひと振りで竜巻を起こす父上の金棒を小僧はひらりひらりとかわし、間合いを詰めて、細い針のような刀で父上を突いている。力の差は歴然と思える。なのに、その太刀筋が鋭いのか、父上の金棒は、小僧が突くたびにその威力を見る見る失っていく。
 オイラは走った。無我夢中で走った。その小僧からなんとしてでも父上を守りたかった。オイラがやっと、父上の足元に辿り着くと同時に、父上が小僧の前で膝を折るのが見えた。土下座するような姿勢のまま、体中から鮮血をしぶきのように撒き散らしつつ、肩で息をしている。その首筋に、小僧が刀を振り下ろそうとする刹那、オイラは父上の肩に飛び乗った。

「ぼうや、何をしている!」

 父上の怒鳴る声が響いた。次の瞬間、オイラの背中に鈍いが凄まじい衝撃が走った。目の前が段々と暗くなる。無感情な小僧の声が聞こえた。
「なんだ、この小さいのは?まちがって、こやつを先に殺めてしまったわ」「おのれ、おのれ、よくも、我が息子を…!」
「ほう、ウヌの小童か。まあ、よい。ウヌもすぐにそやつの元へ届ける。せめてもの情けだ。閻魔の元で仲良く暮らすが良い」
 動かなくなった小鬼を抱きしめ、そのままうずくまる大きな赤鬼の首筋に無情に振り下ろされる剣先。ゴトリと岩が落ちるような音とともに、赤鬼の巨大な首が血に堕ちた。吹き出る鮮血を静かに眺めつつ、その若者は剣を大きく一振りし、その血を払った後、刃を鞘へと収めた。

 月明かりを背に土埃をあげつつ、白い大きな犬が迫る。その後塵よりもひときわ高く大地を弾みながら駆け寄る人程の大きさもある猿。月光を受け巨大な翼の影を大地に落としながら舞い降りてくるキジ。人の言の葉を遣うそれらが口々に戦果を報告しつつ、走り寄ってきた。

「桃太郎どの。鬼どもは全て討ち取りました。あとは、禍根を残さぬよう、女子供を皆殺しにいたしましょう」

 桃太郎と呼ばれた若者は静かに頷き、言った。
「これ以上、拙者が出る幕ではない。そなたたちに任せよう」
 鬼ヶ島が陥落した夜のことだった。
 桃太郎と呼ばれた一味は村の女子供そして、年寄りの住む家に火を放った。戦力になりうる若い鬼たちを相手にすることで疲れたため、最後の詰めが甘かったらしい。オイラは生きていた。オイラは、背骨を傷めてはいたが、死んではいなかった。オイラを抱き抱えるようにしてこと切れた父上の亡骸に守られて、その大火の中を生き延びたのだった。

 母上も、全身に火傷を負い、もう歩くこともままならない身体にはなったが、どうにか生きてはいた。他にも数十人の年寄りと、子供たちがかろうじて生きていた。時が経ち、オイラと生き残った数人の子供たちも大人になり、そして、桃太郎への報復が叶うであろう歳に成長したのだ。


数年前に書いた落書きみたいなものです。
その後、昨年(令和4年)に、水曜のカンパネラの「エジソン」にハマって、彼女たちのヒット作である「桃太郎」を初めて聴きました。
時間的には全く関連性はありませんし、そもそもその歌を知らなかったのでインスパイアもなにもないのですが、あの歌とのギャップが自分でも笑える。
多分2018年ごろに何かで見た
「ボクのおとうさんは、桃太郎というやつに殺されました。」
というキャッチコピーからの発想だったんだと思います。

こういうオチのない話は結構あるので、もし見て頂いた方たちのお声を頂けたらまた載せましょう。
というか、最近色々と迷走してるので、勝手に載せるとも思いますが。

追記
久しぶりにホント、久しぶりにnoteを利用したら、なんか #創作大賞2023 とやらをやっているようなので、それにぶら下がってみます。
この物語自体が、ノージャンルなので #オールカテゴリ部門  ということで。

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