タッピングホールの付け方(2)
ふだん何気なく見ているアルミサッシなどのアルミ押出材のうち、一番不可解(?)に見える「タッピングホール」について解説する。
何よりも優先すべき「強度」
おそらく初っ端からクソつまらない話になる。普通に考えたら、なにより知りたいのは「あの位置になる理由」とか、「どういう原理で配置しているのか」といった具体的な「形」の成り立ちを知りたいのであって、内在する目に見えない「力の伝達」に興味がある人は、よほどのマニアではないか。
わかっている。わかっているのだが、少し考えればわかるだろう。強度を保持し、外力に対して抵抗することは何よりも重要な機能だ。タッピングホールは飾りなのではなく、純粋に機能である。想定しうるあらゆる力に対して、安全を確認する必要があるのだ。
どんな力がかかるか
とはいえ、アルミ押出形材のタッピングビスおよびタッピングホールに、どのような力がかかるかと一口にいっても、それこそ千差万別だ。
もしあなたが、例えばルーバーの小口フタをつける目的でタッピングホールを考えているなら、この項目を読むことは不要だろう。小口フタを止めるタッピングビスに強い力がかかることはまずない。
せん断力の検討
下記のような風を受ける横連カーテンウォール(以下、CW)を想定する。
なお、今回用に想定したCWであり、実現性は検討していない。
まずは、せん断力の検討から解説したい。
もし、上記の図を見てもチンプンカンプンという方は、
「ああ、とりあえず1952Nのせん断力が働くんだな」
ということがわかればよい。大変恐縮だが、「せん断力ってなに?」とか「Nってなに?」という疑問を持つ方は、言い方は大変申し訳ないが、読者の対象にしていない。(おそらく中学卒業レベルの学力があればわかるはずだ)
せん断力に対して、次の応力が発生する。
M4タッピングのせん断応力
タッピングホールの曲げ応力度
母材の支圧
これらを順番に見ていきたい。
M4タッピングのせん応力
M4タッピングの有効断面積は一般に8.78㎡。これが2本。
このタッピングがせん断力に抵抗できるかはビスの材質をSUSとした場合、SUSの許容応力度118.3N/mm2(短期)で判断する。
<タッピングビス(SUS)の計算>
τ=N/A≦118.3N/mm2より
τ=1952/(2x8.78)=111.2≦118.3N/mm2 ・・・<OK>
余力がない場合
通常は、これでOKだ、となるのだが、余力がない場合はそうもいかない。実務的に簡単にするために端折っただけで、実際にかかる力は実は他にもあったりするからだ。
今回の例では、左側と右側でかかる力が異なるために、「回転力」が発生する。
ここで求めたRa、Rbそれぞれの合力を求めて、あたらめてひとつずつ確認しなければならない。単純なせん断力の検討で余力がなかった場合は、ここまで検討する。
<Rbの計算>
ΣM=0より
810x26-1142x34+Rbx34=0
21060-38828=-34Rb
Rb=17768/34=522.6N
ΣX=0より
Rb=Ra=522.6N
√(976^2+522.6^2)=1107.2N
改めてこのせん断力で検討すると、
<タッピングビス(SUS)の計算(合力の場合)>
τ=N/A≦118.3N/mm2より
τ=1107.2/8.78=126.1>118.3N/mm2 ・・・<NG>
NGになったため、タッピングビスの本数を増やすか、M5に変更しなければならない、ということになる。
今回は3本に変更して、下記のような構成になることを得た。
(違ったらごめんなさい)
…長くなったので、タッピングホールの曲げ応力は次回にします。(続く)
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