【成仏したい】幕張の地縛霊が残すFANTASIA忘備録のかけら
なんと!この怨霊は昨年の10月から約半年間に渡り幕張メッセに縛られているのである!!
2022年9月30日から10月2日に行われた、にじさんじ公式リアルイベント「にじフェス2022」のナイトステージ「FANTASIA Day1・Day2」。にじさんじ初の3D共通衣装を着たライバー16名が出演し、歌とダンスの熱狂的なライブが繰り広げられた。そのパフォーマンスのクオリティの高さや、演出を大いに盛り上げた運営・クリエイター陣の技術力は、約半年たった現在でも各種雑誌などの媒体でレポート記事が掲載されるほどである。
この記事はそんな中で、いまだに2週間に1度は「FANTASIA ……円盤……」と呻きながら夜な夜な徘徊している地縛霊が生前に残した手記のほんの一部である……。
(地縛霊より補足:今回は「絶対に忘れちゃいけないな」と思ったセトリの一部をピックアップしたよ 時間と体力が許されたら全セトリの感想書きたかった もう霊だから体力どころか体がないよ)
(地縛霊よりもっと補足:ライブレポートというより、ライブの感想とそれに絡めての思い出を書いたものなので、ライブに直接関係しない話がたくさん出てくるよ ライブのことだけを知りたかった人はごめん)
〇「イロドレ・ファッショニスタ!」――でろーん先輩と#FANTASIAコーデ
でろーん先輩こと樋口楓先輩のオリ曲。体の内側から力が沸き上がってくるような元気な歌声でかっこよかったなあ。ダンスミュージックらしいインストの曲がバンド仕様にアレンジされているのもおしゃれで聞き心地がよかった。
普段は大先輩、怒らせたら命がないなどなど怖がられがちな樋口先輩。でも話す言葉のひとつひとつとか、普段の態度とかがすごく大人びていて、強い。FANTASIAのMCをきっちりこなす姿も、ダンスを頑張る姿も、全部が力強くて、繰り返しになるけどかっこいい。
歌詞もフェスの私服展示がおしゃれすぎてライバー・リスナー共にビビらせたほどおしゃれなでろーん先輩らしい。ここは高校生らしいお茶目さもあふれていて大好きなリリック。
噂に聞いたところ、元は1月に開催予定だったFANTASIAでお披露目となる予定だった曲とのこと。それを聞いて思い出したのが「# FANTASIAコーデ」だ。
1月に公演が中止になったときにでろーん先輩が早速立ててくれた神企画。1月公演に向けてファンがこつこつ準備してきた洋服・ヘアセット・ネイル・痛バなどなどを「# FANTASIAコーデ」に載せ、でろーん先輩と一緒に見る、というものだ。
誰が言ったかファンはライバーに似てくる。まさに16人のライバー各々をリスペクトしたファッションや手作りグッズがどしどし投稿されていて、見ているだけの自分も楽しかった。
ライバーのチャームポイントを取り入れたファッションやネイル、ネタに全振りなうちわ、愛も防御力もカンストしている痛バ、丁寧に作られた可愛いぬい……リスペクトはもちろんのこと、作った方自身が持つ個性やセンスもいかんなく発揮されていて、ライブが終わった後に眺めても全く飽きない。見てない人は見よう。
なによりファンひとりひとりのファッションに「うわ、すっごいおしゃれ~!」「なにこれどうやって作ったん?」と驚きや喜びを見せて褒めてくれたでろーん先輩が素敵だった。
コロナが猛威を振るっていたあの頃、仕方がないとはいえ、楽しみにしていたライブが直前でなくなってしまったことの喪失感が拭えなかったところに寄り添ってくれたでろーん先輩。優しい。
個人的な話、その後を過ごすモチベーションにもつながった企画だった。
私は後述する通り被疑者(シェリンのリスナー)なのだが、被疑者のファッションは、それはそれはまあおしゃれで……というか赤や黒、茶色を主軸とした気品のあるファッションがとっても「上品」かつ「優雅」で、探偵シェリンが持つ世界観に上手に溶け込んでいた。
樋口大先輩からの「この世界観すごくない!? この世界観を作り上げたシェリンもすごいけど」とのお墨付きも頂いていた(シェリン! 褒められてるぞ)。
「私もこんなおしゃれな被疑者になりたい(知らない人から見れば支離滅裂な文章)……!!」
と感動した次の日から、おしゃれやメイクを頑張るようになった。今までさんざん挑戦しては諦めての繰り返しだった筋トレもリベンジライブ直前まで続けた。体力が回復したら再開するつもりだ。
初めは「ライブのために」と悩みながら服やコスメを選んでいたけど、今は「自分のために」おしゃれを楽しむのがすごく楽しくなった。ありがとうでろーん大先輩。あなたのおかげで少し自分を変えることができました。
あのライブの主役はでろーん先輩含めライバーさんたちだったのは間違いないけれど、ファッショニスタのでろーん先輩は、応援している私たちも主役の座に引っ張り上げてくれたような気がする。ライブのために頑張るのはライバーもファンのみんなも同じや! って感じで。
〇「ここで息をして」――ファンのために努めるご主人様白雪巴・それに呼応し愛を叫ぶ小人と駄犬
可愛らしい曲やタテノリしちゃうような曲が続いてからの、女王白雪巴の御・ステージ。巴さんが喋る声って本当に色っぽくてフェミニンだけど、その雰囲気をそのまま歌声に持っていける巴さんの才能たるや。こんなにスパイスとムスクを合わせた香水みたいなパフォーマンスを全身で発揮できるのは、巴さんの才能と特権だ。
私はフルトイの「百鬼マスカレイド」と巴さんのオリ曲「SHUT-OUT」がお気に入りで、自分のプレイリストに入れてよく聞いているのだけれど、巴さん、歌うたびにどんどん大人の色気がムンムン増していってる気がする。ダンスもセクシーで目が離せなくなる。
女性はここまで美しくなれるのよ。そう語りかけるように、情熱的に歌う巴さん。そして激しく揺れる紫色の光たち。色気と熱気で頭がくらくらしていた。
実を言うと、Day1のチケットを応募するきっかけとなったのは、間違いなく白雪巴さんだ。
☝︎ライブが中止になる前の巴さんのツイート。「巴さん意外と緊張しぃなんだな」とふんわり思っていた。当日が近づくにつれてワクワクが増す自分と重ね合わせてにっこりしちゃったり。
☝︎ライブが中止になった後の巴さんのツイート。と、と、巴さん……悲しすぎるよ……!!
巴さんの悲しみ方が悲壮すぎるあまり、なんだか心配になってその後の配信を覗きに行った。
中止になったときの私の気持ちをそのまんま代弁してくれている。ただ当時はオトナなイメージがあった巴さんがすんごく悔しがっていたことにちょっと驚いていた。
何となくその理由を理解できたのは、Day1組のGartic Phoneや巴さんのライブ中止後の雑談を聞いてから。
「私が一番後輩なんだから、練習できてないのはさすがにまずい」と謙虚に、しかし忙しい中で懸命に練習を続けていたり、「先輩たちはやっぱりすごい、本当に尊敬、先輩たちの姿を自分で持って帰ろう」と周りのメンバーをよく観察していたり。
巴さんがこんなに真面目な人だったとは。同時に巴さんが社会人をしながらライバー活動をしていることや、ライブの前に大きい病を乗り越えたことを思いだした。大変な中で本当に頑張っていたのに、こういった結果になってしまったことが残念で仕方ない。でもそれ以上に、巴さん自身にとって初めてとなるライブ、かつ私もすごく楽しみにしていたライブに対して、巴さんがこんなにも真面目に取り組んでいることがすごくうれしかったし、まぶしかった。
だから振替公演が発表されたとき、推しの舞台が復活することの喜びと同時に「白雪さんの努力の成果が見たい! 」という気持ちが動いてDay1・Day2両日のチケットを思い切って申し込んだ。
白雪さんが共通衣装のレースを美しくなびかせながら踊る姿を見ることができた私は、マジで人生で起こりうる幸運の半分くらいを一気に使ってしまったと思う。あの時の決断を後悔していない。
もうちょっと語りたい。
巴さんの頑張りは他のライバーさんはもちろん、巴さんのファン――小人さん駄犬さんにも伝わっていると思う。いやそういうところに魅入られていろんな人が小人さんや駄犬さんになっているんじゃないか。
前述した# FANTASIAコーデで、彼女の「夜が似合う大人」な雰囲気を男女共にうまく取り入れていれたおしゃれな小人さん駄犬さんたちもすごかったし、フェス前日に巴さんの大きなクッションを是が非でもフェスに持って行こうとする小人さん駄犬さんが何人かバズってたのが面白かった。
巴さんって良いご主人様だな……。
SMプレイにおける主従関係で大事なのは、どんなことがあってもお互いにお互いの人生を預けられるくらいの確固たる信頼関係だそうな。巴さんはファンを絶対に裏切らない強かなご主人様で、小人さんや駄犬さんは巴さんを愛で支える忠実な僕。そんな関係が見えた気がする。
〇「脱泡ロック」――卯月コウが主人公だったことしか語れない
コウの脱泡ロック、最高だったのに何が最高だったのか上手く説明できない。語りたいのに語れば語るほど野暮に感じてしまう。そういう人他にもいるでしょ たのむ いてくれ
もうありとあらゆるライブレポートでコウの脱法ロックがなぜエモかったのか語り尽くされてしまっているので詳しくは書かない。が、本当にやばかったのだ。彼の歌は。圧倒的主人公だった。
私はこの脱法ロックの良さを語るにおいて、卯月コウについて無知すぎる。「にじさんロック」の存在は知っていたものの、それを取り巻くストーリーについては無知だった。いわゆる卯月軍団と呼ばれる人々と比べれば、初期衝動は微々たるものだったに違いない。
言えることとすれば、あのメチャクチャでトンチキ騒ぎな曲を、自分が持つ世界観もといライバーとしてのスタンスそれ自体に落とし込めるのは、どう考えたってやばい。
卯月コウの歌で印象深いのは、おりコウで歌った「君も悪い人でよかった」と、Prismatic Colorsの「再会」。しっとりとした曲でエモを演出するタイプだと思い込んでいたが、今回はエモはエモでも全然違った。こんなどんちゃん騒ぎの歌をガリっとキメつつ、コウ自身の独特な柔らかさを持った声で自分のストーリーを交えて歌い、エモに落とし込む卯月コウ、何者?
後に愛されコウくんが愛され振り返り配信で選曲について語っているのだが、「デビュー当初より幸せになった自分が歌うべきなのか」みたいな葛藤があったとのこと。
この雑談の「ロックは自己矛盾を孕んでいる」という発言にライブのコウのヘドバンくらいの勢いで頷いた。そうなんだよな、絶望を歌ってヒットしてる側はどうせ幸せだろとか思っちゃうよな。
少なくとも「(脱法ロックを歌うのはデビューして)4年目がギリギリ」と自分の中で自分を見ているコウは、いつまでもヲタクの味方なんじゃないかな。そう信じたいし、信じたい自分も卯月コウはいつまでもアングラに近い場所生きるもの、という考えに縛られる人間のひとりに過ぎないと思う。
Day2の中でもかなり強烈に衝撃を受けたのに、やっぱりうまく言葉にできない。悔しすぎて小田和正になりそう。
オレ、卯月コウ殿の文脈にもっともっと触れたいよ……。
○「爆笑」——探偵兼俳優兼エンターテイナーのシェリンのプライドと意地
前述した通り当方は被疑者なのだが、初めて爆笑を見て聴いた記憶が……ほとんど……ない……なぜ……。たぶん受けた衝撃がデカすぎた。
学んだ。人が本当に驚いた時に起こることは、笑うとか泣くとかじゃない。失神や呆然だ。
美しい発声と綺麗な発音の中に潜む荒々しさや気だるさ。なんもかんも完璧すぎる爆笑。
4869億回くらいは語られてるはずだが、改めて思う。シェリン、声の使い方がうますぎる。そして自己プロデュースの匠すぎる。
この曲は某M-1で優勝して大きな感動と物議を呈した芸人がテーマになっており、自身の笑いのスタンスに対するプライドや意地を聴者に叩きつけるような歌詞が特徴的だ。
そんな曲をシェリンが歌った。原曲のダークなイメージを尊重しつつ、自分の内面の衝動を前面に出した力強い叫び。これ最前で聴いてた人は生き残れたのか?
後の振り返り配信で「シェリンの歌はミュージカルみたい」と被疑者からも他のライバーからも指摘されていて、これは言い得て妙だなと膝を打った。ドス黒い感情さえ笑いに昇華してやろうとするコメディアンの黙示録。あの時のシェリンは探偵のように見えるが俳優で、観客の笑いだけを求める芸人だった。
爆笑は、シェリンが内包する多面的な性格と重なるところが多い。
たとえは、「努力家」の一言ではあまりあるほどのシェリンの貪欲さ。
かつてのシェリンはゲームでなかなか勝てなかった。2019年のポケモン大会やマリカにじさんじ杯、2020年のテトリス大会やスマブラ大会など、にじさんじのゲーム大会に出場してはびりっけつ。
当時は「いかに面白く、華々しく散るか? 」を念頭にゲームをしていたと本人も語っていたし、実際に負けてもとんでもない爪痕を残して大会を去っていったのは事実だ(脳内をよぎるほろびのうた)(た〜びパ〜で挑んだら〜……)。
でもその裏では彼なりに練習を重ねていて、負けるたびに「頑張ったのにな、悔しいな」「僕って本当、ゲームが……」と悔しそうに、でもそれを表に出さないように笑っていた。
そんな彼が今、にじさんじを超えてVtuber界隈の中でも頭角を表しているゲームがある。マリオカートだ。
ひょんなことから彼はマリオカートにハマり、たくさんの時間をかけてコツコツと練習を繰り返した結果、マリカアンドロイドになった。最近はマリカのやりすぎで指の皮が剥けてきたらしいので、いずれは全身脱皮して27mの超大型怪獣になるはず。それはさておき、マリカにじさんじ杯を通して、彼が直向きにタイムアタックやレート戦で腕を磨く姿に驚いた人は多いのではないか。
☝︎これはマリカのタイムアタックをやりすぎて悪夢にうなされるシェリン
これはマリカに限った話だけではない。レバガチャダイパンで毎週視聴者を楽しませたナレーション。思わず笑ってしまうさ配信のサムネイルやギミック。曲がもつ性格ごとに歌い分ける声の表現力。彼はハマると頂点まで突き進む。私は直接見ていないが、シェリンが持つスキルの裏には膨大な試行錯誤があるんだと思う。
どん底から這い上がった胆力と頂点へと手を伸ばす貪欲さ。その苦しさは敗者だった者にしかわからない。
重なるところといえばもうひとつ。この曲は芸人をテーマにしていると述べたが、シェリンもいろんな面で芸人だ。
いつも変なことばっかりしゃべってるところはもちろんそう。あと本人がラーメンズなどのお笑い好きというのもそう。個人的にはもうひとつ、芸人らしいというか、エンターテイナーらしい面があると思っている。以下は私の感じていることなのであしからず。
シェリンは自分の事をあまり喋らない。雑談配信もほとんどとらない(から、FANTASIAの後の雑談の時に多くの被疑者から広辞苑ができるくらいのメッセージが届いたらしい)。面白い経験をしても配信で話さない、ということも珍しくない。
私としてはシェリンが日々感じている事をシェリンの言葉で聞くことができたら面白いんだろうな〜と若干の歯痒さを感じなくもない。でもFANTASIAの後の雑談で、
と話していて、ああこの人は「完全体のシェリン」を見てほしいのかなと、完成した自分を笑ってほしいのかなと、なんか勝手にロマンを感じた。
たしかにそうだよな。探偵が簡単に手の内を明かしちゃ推理ショーは盛り上がらないし、芸人が自分のネタの面白いところを全部解説しだしたら、なんかおもんないもんな。
ゲーム内でメチャクチャふざけたり、かと思えば番組のMCとしてきっちり進行を務めたり。どんな時もシェリンはいつも完成系を我々の前に見せてくれるからこそ、余計なことを気にせずに笑えるという。それは徹頭徹尾芸人でいようとするシェリン独自のスタンスな気がしないでもない。でも雑談枠はほしいです(傲慢)
僕の話術で笑え。僕の歌で酔え。余計な事を考えずにゲラゲラ笑え。爆笑を歌うシェリンはそんな事を訴えていたのではないかと思わずにはいられない。私の邪推だろうか。
いや、FANTASIA直後にこんなトチ狂った配信をするんだから、奴の笑いへの執念は本物だ……!!!
涙流して誇張なしでゲラゲラ笑ってた。シェリンが板の上のたうってんのが面白くて仕方ない。シェリンが好き勝手してんのがいっちゃんおもろい。これからもどんどん好き勝手してほしい。
ああFANTASIA……円盤……FANTASIA……