大学とか役所とか会社とか、ジャンル別人気ランキングに収められてどこも同じと思われがちだけど、ほんまはちゃいますよね、って話。

　大学で先生のお仕事をしているんですよ。本業のお仕事の休日を使って、学生さんと関わるのは楽しいです。なんといっても教育っていうのは、未来への投資そのもので、とてもやりがいを感じるものです。そういえば大学で教え始めて、もう10年近くになりました。10年近くも続く仕事っていまどきなかなかないことだと思うので、ありがてえことです、ほんと。

　教える学校は、特により好みしたわけではなくて、これまで声がかかるたびに全部引き受けてきました。僕の働き方の場合、休日にこなそうとすると、週三コマが体力的に限界で、週二コマくらいが一番集中できるというか楽しくできる量だなあと。一方的なティーチングをする大人数講義なら事情も違うのかも知れないですけど、双方向的なワークショップなんかを交えながらやる少人数ゼミ形式の科目だと、やれなくはないけど、ヘトヘトに疲れちゃうっぽいえす。なので最近は週2コマまでと決めてお引き受けしています。

　さて、これまでいくつかの大学で教えてきて、気がついたことがあるんですよ、っていうのが今日のお話で。大学って、大学によって大事にしている考え方や、取り組みが違うんですよね。当たり前やねんけど。

　なんでこんな当たり前のことを今更書こうと思ったかっていうと、大学って、多くの人にとって最初の出会い方って受験なんですよね。だからか、どうしても偏差値で縦に並べられた一覧表で大学名をイメージしがちなんです。それ以外の情報が実感としてわかるのって、入学して実際に通い始めてからになるんですよね。だから他の大学がどうかって、案外わからないままになることも多い。そのため、大学っていうのは、どこも変わらないかのような印象が芽生えやすい気がしてます。僕自身がそういう見方を持ちがちだったというか。

　しかし、実際に大学で生活をしてみたり、働いたりしてみると改めてわかるんですけど、学生の性質とか、教員の考え方とか、事務の考え方とか、大学によって全然違ったりしますよね。もちろん、共通しているところもあるんですけど、そうじゃないところもあるというか。当然なんすけど、「違う会社」ですもんね。この辺、複数の大学で非常勤やらないと僕なんかは気づかなかったかもしれないなあと。「校風」っていうんですかね、こういうのは。

　じゃあどう違うかっていう話なんだけど、やっぱり、学生や教員の自主自立を大事にしてるっていうか、信じてる大学は居てて楽しいって気がする。それは別に大学に限った話じゃなくて、部活でも会社でも人間集団ならだいたい共通することですけどね。

　あ、その意味では、僕がまちづくりの仕事で関わる地方公共団体、いわゆる「役所」なんかでも同じで。みなさん、役所なんてどこも同じみたいに言いますけど、同じ地方公共団体でも、やっぱ別の会社ですから、似てるところももちろんありますけど、考え方や大事にしていることは、自治体によって微妙に違いますね。講師のお仕事で自治体に呼んでいただく時、僕はその自治体で取り組んでいるまちづくり政策については一通り教えていただくんですけど、やっぱりちゃいますよね、自治体によって。だから、横並びで同じと思ってのぞむと、あ、違うんだ、ってところがあって面白いです。

　多分、話をより一般的にすると、企業なんかでも同じで、当たり前ですけど同じ自動車メーカーっつっても、トヨタと日産とダイハツでは全然ちゃうんでしょうけど、一括りにされがちというか。こういう、ジャンル別「人気ランキング」的な縦軸に収められて、そこからはみ出す個性が見えなくなりがちちゅうかね。

　話を大学に戻すと、僕が院生の時なんかは、大学ならどこでも同じだし、どこでもいいから雇ってほしいなんて思ってた気がします。だけど、こういう「微妙な違い」は、いざ自分が働く場として考えると、大きいっすよね。

　全然想像やけど、偏差値的に全然有名ではないのに、すげえ学生や教員や事務方がいきいきしてて、研究も実践も教育も風通しが良くて、すげーいい職場だ、みたいな大学とかもあるんだろうなあって気がするんですよ。だけど、そういう大学って、偏差値的には表に出てこないから、みんな知らないし、中の人たちも、あえて広める必要もないから、知られないっていうね。

　情熱や信念、美意識の存在を感じる職場で働くと、勇気付けられますよね。俺もなんかせな、的な。仕事だからせなあかん、ではなく、メンバーの能動性が引き出されるというか。僕にお仕事をお任せいただいているところは、どこも中の人にそんな想いがある職場ばっかりで、ほんとありがてえ話だなあと思うばかりです。