宇宙人間(シリーズ人間より)
スペースコロニーの無重力サウナにプカプカと浮かんだマークとチーハは今日もよもやま話に余念がない。
「この間さ、会社の社員旅行で地球に行ったんだけどさ。」
頭上に浮かんだチーハにマークが話しかけた。
「おっいいねえ地球。」
チーハも頭上に浮かんだマークを見上げた。
「それで海に行ったんだよね。」
「海。あの波が打ち寄せるっていう?」
「そうそう。その海。」
「いいなあ海、俺も行ってみたいなあ。」
「でもさあ、海の水て塩っぱいって知ってた?」
「は?なにそれ。それってなんか意味あんの?」
「なんかさあ、そういうものらしいんだよね。」
「それよりあれやった?砂に首だけ出して埋まるやつ。」
「それがさ、紫外線が強くて三十分以上外に出てると危険なんだって。」
「恐!」
「なんか場所によっては放射能に汚染されてて近寄れない地域もあるらしいんだよね。」
「それって本当に行って大丈夫だったの。」
「俺も気になって添乗員さんに聞いてみたんだけどさ。一応基準内です。としか言わないんだよね。」
「でもその人は何回も行ってるんだよね。」
「いや、その人ロボットだったから。」
「そうなんだ。」
チーハは宇宙窓についた水滴を手で払い、窓の外に小さく浮かぶ地球を見た。
「地球はこうやって遠くから眺めてるのが一番かもね。」
「俺もそう思った。やっぱり宇宙が一番だよ。」
「故郷っていいよな。」
二人はプカプカと浮かびながら、そう言って笑った。
2019/6/6にssg投稿したものを加筆訂正(2020/1/23)