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焼鳥人間 (シリーズ人間より)
「俺だって昔はよう。」
間口の狭い、小さなカウンターだけの焼き鳥屋で、トレンチコートの男がコップ酒をあおっている。
「俺だって昔はよう。」
主人は焼き台の上から目を離さず、ときどき焼鳥の串をクルクルと回した。
「心に翼が生えてたねえ。ねえマスター。」
「そうですか。」
主人が小さく呟く。
「それが今じゃ、毎日、毎日、鉄板の上で焼かれる焼鳥になっちまったー。」
「それ、鯛焼きじゃないんですか?」
「うるせー!おかわり!」
トレンチコートの男は、飲み干したコップを、カタンと音をたててカウンターに置いた。
「旦那。今日はそれくらいにしときなよ。」
主人は焼き台の上から目を離さずに、また焼鳥をクルクルと回した。
(ssg 2019年5月投稿。加筆修正して転載)
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