【イタリア・スイスの旅】12日目:交通大国スイスの交通博物館へ
予報どおりの雨。山には登れそうにない。前日に決めたとおり、スイス交通博物館で1日過ごすことにしよう。交通博物館は、乗り物好きの息子がこの旅行で一番楽しみにしている場所だ。半日滞在のつもりが終日滞在になったのだから、息子にとっては恵みの雨だ。
交通博物館まではバスを乗り継いで行った。バスにはエアビーでもらった宿泊者向けのパスで2日間乗車可能だそうだ。しっかりパスを準備して乗り込んだが、特に見せる必要もなかった。
交通博物館のチケットは、博物館のみ入館可能なミュージアムチケットと、スイスチョコレート・アドベンチャーというアトラクションやプラネタリウムやIMAXシアターにも入場可能なワンデーパスポートの2種類ある。終日過ごすことになったわたしたちは後者を購入して1日遊び倒すことにした。
博物館に入る前にまず目にしたのは、巨大なシールドマシン。世界最長の鉄道トンネルであるゴッタルドベーストンネルを掘るのに使われたシールドマシンの実物模型だ。ゴッタルドベーストンネルは2016年に開通した全長57キロのトンネル。(これ以前の世界最長は青函トンネルだった。)このトンネルの完成により時速250キロでの走行が可能となり、ミラノ・チューリッヒ間を約3時間で行き来できるようになったという。完成まで17年の歳月を要した一大プロジェクトだったが、残念ながら昨年の8月に脱線事故を起こして全面運休中だ。(2024年9月に復旧した模様)
館内には、このゴッタルドベーストンネルを運行する特急列車EC250の運転シミュレーターのアトラクションもある。こちらのシミュレーターは大人気で、朝早い時間にもかかわらず親子連れが何組か並んでいた。我が家も列に並んで待っていたのだが、このシミュレーター、どうやら難易度が高いようで簡単には成功(指示通りに運転し、駅できちんと停車させる)できないらしい。日本では、たとえ成功できなくても後ろに並んでいる人がいたら次の人に譲り、もう一度やりたければまた列に並ぶのが常識だと思うのだが、何度もやり続けるもんだからなかなか番が回ってこない。うちの前に並んでいた子は諦めてどこかへ行ってしまった。文化の違いなのか、その親子が非常識なのかよく分からないし、自分たちより前に並んでいる人たちも文句を言わないので黙って待った。しかし、運転シミュレーターってそんなに楽しいの?ゲームに縁のないわたしにはいまいち理解できない。
これまでに日本では京都と大宮、ヨーロッパではイギリスのヨーク、オランダのユトレヒトにある鉄道博物館を訪れてきたが、ここスイスの博物館は「交通博物館」という名のとおり、鉄道だけなく交通全般を網羅しているのが特徴だ。鉄道、自動車、重機、飛行機、船、ロケットに至るまで、ありとあらゆる乗り物が幅広く展示されている。博物館部分だけでも半日じゃとても足りない規模だった。スイスを旅行していて公共交通の充実ぶりに感心したものだが、スイス人の交通に対する誇りと情熱がこの場所に詰まっているのだろうと思った。息子が乗り物好きでなければ訪れることはなかったと思うが、息子のおかげでまたひとつ良い体験ができた。
せっかく1日パスを買ったのだからチョコレート・アドベンチャーも体験することにした。こちらは6人乗りくらいのライドに乗ってチョコレートの歴史やカカオ豆からチョコレートになるまでの工程を学ぶというアトラクションだ。「まるでチャーリーとチョコレート工場の世界」という触れ込みをどこかで見た気がするのだが、そんな奇想天外なことは起こらない。非常にまじめなアトラクションだった。
ユングフラウヨッホから下山する登山鉄道で係員さんがリンツのチョコレートを配っていて驚いたが、ここでもやはりアトラクションの最後にリンツのチョコレートがプレゼントされた。(というのも、このアトラクションはリンツが協賛している。)国中の至るところで展開されているリンツのプロモーションに触れ、子どもたちはすっかりリンツのファンになった。
チョコレート・アドベンチャーはなかなか面白かったし、他にもIMAXシアターを楽しんだが、正直IMAXやプラネタリウムはスイスじゃなくても体験できるので、博物館チケットでもよかったかもしれない。これだけの規模の博物館ならば、博物館だけで十分に1日楽しめると思う。
午後には雨が上がったので、最後は中庭でミニトレインに乗ったり、重機を使って砂を運ぶ作業をしたりして閉館時間ギリギリまで遊んだ。
湖畔にある博物館からは船でも帰ることができる。最寄りの船着場からルツェルン中央駅行きの船で帰ることにした。たった15分の船の旅だったが、遊覧船気分を味わえた。ということにして、翌日は当初予定していた遊覧船を取りやめて電車でピラトゥス山麓のアルプナハシュタットまで行くことにする。
<MEMO>船でもハーフウェアカードが利用可能。オンラインでチケットを購入し、乗船時に係員に提示した。全員分の名前や生年月日を登録しなくてはならず少々めんどくさかった記憶がある。