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ゲームプレイ時間で遊びの価値を測ることはできるのだろうか

AUTOMATONに興味深い記事が上がっていました。ゲームストアGreen Man Gamingが、「STATS & FACTS」というゲームのプレイ時間と価格からコストパフォーマンスを示すデータを提供しているというものです。開発者やメディアからは、コスパで価値を測るのはゲームを消耗するものとして見ているという批判を受けています。

この話は自分も以前からずっと思っていました。ゲームのコスパに対する意識が、ゲーム市場に悪影響を与えているんじゃないかということです。今回問題が表面化したのに合わせ、自分の意見を書いていこうと思います。

この問題を意識するようになったのは、最近発売されたRPGの情報を辿るようになってからです。よく聞くのが、100時間というプレイ時間。クリアまでそれほどかかるRPGが思った以上に多く、率直に驚きました。自分がRPGを遊び始めた頃、クリアまでにかかったのはだいたい50時間。SFCなど更に古いRPGだと20~30時間。大人になってからの方が効率よくプレイできているという前提ではありますが、それでもやはりそこまで時間はかからないものでした。

しかし、プレイ時間に対する過度の期待度はむしろユーザーの方が強く、ときには長いプレイ時間こそゲームの価値そのもののように語る人すらいます。

ゲームプレイ時間で本当に遊びの価値を測ることはできるのでしょうか?自分の考えは、NOです。

ゲームは、作ろうと思えばいくらでもプレイヤーの時間を消費させることができます。大量のロード、コピペのように代わり映えのないクエスト、手間のかかるUI、無駄な移動、何回も聞いた似たような会話。そんなもので評価が上がるならいくらでも入れます。そういった要素を入れてもゴールを目指してくれるプレイヤーはけして少なくありません。ですが、クリア時のゲームの評価は著しく下がります。

そもそも、アクションならミドルプライスでも10時間台のものはざらにあります。なら10時間のアクションはすべてコスパの悪いダメなゲームなのかと言われたら、それは違うと言えます。そのゲームを遊んでどれだけ充実した時間が過ごせたか、魅力ある体験ができたこそ重要であり、ときに長いプレイ時間のゲームよりも高い評価を獲得することだってあります。もちろん、短くてつまらないものもありますが。

一方、長いプレイ時間が活きるゲームがあります。

こちらの記事で紹介されているような、ライフスタイルゲームです。ようは報酬などを手に入れるために同じような作業を反復繰り返すこと自体が遊びとなったゲームです。ここではMHWやDestinyが紹介されていますが、例えばどうぶつの森などコミニケーションゲーム、Skyrimのようなメインシナリオに比重が置かれないRPGもこれに当たると思います。こういったゲームはクリアが重視されていません。プレイヤーが飽きるまで可能な限りのコンテンツを提供することで、充実したプレイを与えてくれます。飽きを前提としたゲームこそボリュームが活かされますが、クリアを前提としたゲームの場合は先に飽きが来てしまうと、つまらない時間をダラダラ過ごしてしまう事態に陥ります。

非常に難しい話ではありますが、ライフスタイルゲームを除いて、本当にコスパの良いゲームは、飽きを意識し始めるギリギリ前でクリアに至れるゲームであると思います。力を注いでやり切れる、ここまで来たらもうすることはない、そのタイミングでゲームをクリアしたときの達成感や満足度は半端ではありません。もちろんプレイヤーによって飽きのタイミングは違い、どんな人にも最適なゴールを与えるようにするのは至難の技です。なのでプレイヤーのペースで終えられるよう、縦(ゴールまでの距離)と横(寄り道要素)のバランスが取れているものこそ提供してほしいと思っています。

ちなみに今年クリアしたゼルダの伝説 ブレスオブザワイルドは、明確なゴールは定められてはいるものの、薄味ながら個性のあるコンテンツと、常に変化する状況のおかげで、長い時間飽きることなく遊び尽くせました。最後まで楽しい理想のゲームに出会ったと思います(強くなったせいでラスボスは楽勝でしたが……)。

より手軽にゲームにアクセスできるようになり、セールのおかげで沢山のソフトが買えるようになった今、プレイヤーがゲームに注ぎ込める時間の価値は上がってきていると感じます。だからこそ、作り手や売り手はその時間を大切に考えなくてはいけないのかもしれません。

それでは。

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