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新サービス「インスペ買取」で実現する世界観。

2019年6月24日に新サービス「インスペ買取」をリリースしましたので、私たちが取り組んでいる事業や業界、実現したい世界観について書きたいと思います。前半は業界のことを端的にまとめていますので、お読みください。

中古住宅市場の現状

現在の日本では、人口減少にもかかわらず新設住宅を乱立していることで、全国の空き家が840万戸を超えています。また、今後15年かけて2,000万戸を超える(3軒に1軒が空き家という数値です。)というシンクタンク予測もあり、国としても中古住宅流通活性化に力を入れています。

2018年4月 宅建業法改正

具体的な国交省の施策として、2018年4月1日より仲介会社は売買主に対し、インスペクションの概要説明、及び斡旋の可否を示すことが課せられました。インスペクションとは、中古住宅売買後のトラブルを未然に防ぐための「建物状況調査」を指し、売主側には契約後のトラブルリスクをなくし、買主側には中古住宅に対する不安を払拭できるメリットがあります。また、インスペクション実施者は、建築士である「既存住宅状況調査技術者」が行うことが義務付けられています。背景としては、国交省が中古住宅流通活性化を実現させるために、中古住宅の信頼性を確認することで、売買主に安心を与えることが狙いです。私たちは、この業法改正前の1月にインスペクションアプリ「インスペ」を日本で初めてリリースしています。

インスペクションの市場認知

売買主にインスペクションの認知を拡げて行くには、仲介会社による告知義務が一番レバレッジの効く方法ですが、この1年間でうまく機能していない印象を受けています。仲介会社からすると、インスペクションにより雨漏りなどの劣化事象が見つかることで売りにくくなる、誰がインスペクション費用を払うのか、そもそも面倒などの要因があり、積極的に斡旋する仲介会社は少なく、売買主まで認知が届いていません。しかし、売主心理としては、1円でも高く売りたいのは当然ですが、雨漏りを隠して(騙して)まで高く売りたくない。あとで揉めるほうが圧倒的に困るという意見が多く、売買主に認知が拡がり正しく理解してもらえればインスペクションが一般化し、「文化」になると予想しています。

改正民法で売却後の売主責任が拡大する

民法が改正され、2020年4月に施行されます。不動産業界での解釈は、今まで以上に売主の責任が拡大されます。

1. 瑕疵担保責任から契約不適合責任に変更される
2. 買主が知っている瑕疵も売主の責任対象になる
3. 瑕疵(雨漏りなど)があった場合に買主は代金減額請求ができる
4. 売主が瑕疵を知って売った場合や重大な過失により瑕疵を知らなかったときは売主の責任期間が延長になる(瑕疵を知ったときから5年間)

上記のように、改正民法は買主保護に力を入れたものになっているため、不動産を仲介で売却するときは、これまで以上に住宅の劣化状況を買主に告知する必要があります。要するに「瑕疵」という言葉がなくなり「契約不適合」という言葉に変わるため、「契約書がすべて」という認識になります。つまり、売主が「仲介」で売却を希望する時は、インスペクションを行い、建物の状況を契約書に盛り込まなければ、契約不適合リスクと向き合う必要があるということになります。また、買取会社が「買取」を行う場合は、瑕疵責任が存在しない現状有姿での取引が主となるため、売却後のリスクはありませんので安心して売却できると言えます。

いままでの不動産売却

まず、不動産の売却には、仲介会社が個人の買主を探す「仲介」と、直接業者買取を行う「買取」の二種類があります。
・仲介:不動産仲介会社が個人の買主を探す
・買取:買取会社が直接買取り、リフォーム後に再販

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一般的な不動産売却は、売主が不動産会社に売却相談をすると、高く売れる可能性がある仲介を進められますが、戸建ての平均売却期間が11ヶ月、マンションは6ヶ月(地域や物件により異なる)と言われており、なかなか思うように売れないことが多く、内見対応にも非常に大きな労力がかかります。また、売却期間が伸びれば売り出し価格にも影響し、半年で10〜20%程度下がることもあるため、査定額と売却額に大きな差異が生じる可能性があります。

また、仲介で買主が見つからず、かつ早期現金化が必要なときは、仲介会社が知り合いの買取会社を紹介し「業者買取」を行うことがほとんどです。この場合、売主の立場が弱くなっているため、安く買い叩かれる印象は拭えませんが、「売れること」が一番うれしいため、喜んで買取を選択します。

これが、現在の不動産売却のよくある流れですが、仲介では売却期間が長く、かつ労力もかかり、早期現金化を望む場合は買取というのが一般的です。

意外と知られていない手数料事情

次に、不動産売却における仲介手数料はどのように発生しているかをご説明します。

仲介の場合、仲介会社が買主を見つけると、売主と買主の両方から仲介手数料(物件価格の3%+6万円)を受け取ることができます。5,000万円の物件の場合、312万円(156万×2)となかなか高額です。

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では、仲介で買主を見つけることができず、且つ現金化を急ぐ場合、どうなるのか? 

仲介経由で買取会社が買取るので、仲介会社は売主と買取会社から仲介手数料を受け取ることができます。しかし、買取会社との契約時、リフォーム後に「仲介」をする約束を取り付けておくことで、リフォーム後に仲介会社が買主を見つけると、さらに買取会社と買主から仲介手数料を受け取ることができ、ひとつの物件で合計12%を超える仲介手数料を受け取ることができます。5,000万円の物件で624万円の仲介手数料です。

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仲介会社は、早く仲介で売れれば6%、売れずに買取会社を紹介すると12%という構図です。もちろん、後者を望んでいる仲介会社はおらず、売主利益のために早く売ることに注力している仲介会社がほとんどです。

しかし、この場合、買取会社も「買取時」と「リフォーム後の売却時」に、合計6%の仲介手数料を仲介会社に支払うため、自社の儲けを考えると買取金額から差し引く必要があるので、売主はどうしても受取り金額が少なくなってしまいます。

このように仲介で売れないときに買取会社を紹介することで、仲介会社が大きな仲介手数料を得る商流は一般的には知られていませんが、多くの買取会社は売主利益のため「直接買い取り」を希望しています。

私たちが目指す世界観

不動産売買の新しいインフラを創る。
Team Non Brokers

2018年1月にリリースしたインスペクションアプリ「インスペ」により、インスペクション情報のデジタルデータ化を実現し、また、インスペクション発注プラットフォーム「インスペマート」により、全国でインスペクションができる仕組みは構築できました。これらにご協力いただきました多くの検査会社様は、「中古住宅売買の透明化」に対する熱い想いに賛同いただいており、約2年前から今回リリースした「インスペ買取」の構想をお話し、売買主利益のため戦略的に共に走ってきました。

中古住宅売買時にインスペクションを行うべきかどうかは、売主、買主、どちらの立場から見ても答えはYESであり、合理的な社会の実現であると考えています。なお、2020年4月の民法改正では、「契約書がすべて」という認識になるため、売主にとっては、インスペクションは自分を守るひとつの方法となります。

中古住宅の売却期間の長期化についても、物件の状況を透明化することで価値が生まれ、買取会社の入札競争によりスピード買取できる世界観を実現できると考えており、実際にリリース初日の反響も大きく、本気の買取依頼が5件あり、「半年間売れなくて」「住み替えの家が決まったので早く売りたい」などのお電話もいただいています。そのうちの1件は、現在、24社の買取会社(買取対象地域である会社)が買取可否の判断をしている状況ですので、一気に早期売却の可能性が上がっているといえます。買取会社パートナーも初日のみで25社の登録があり、買取予算額785.9億と順調に伸びています。

インスペ買取では、まずは戸建て買取に特化しますが、区分マンション(2019年12月6日にマンション対応済み)、一棟収益物件、リースバック、リバースモーゲージなど、取扱いの幅を拡げてまいります。そして、現在は売主と買取会社をマッチングする「クローズドメディア」の立ち位置ですが、今後、投資家や個人の買主、不動産利活用事業者など、購入側のチャネルも増やしていき、あらゆるニーズにこたえられる「オープンメディア」となり、そして関わるすべての方々が安心して売買ができるプラットフォームを実現していきます。

※インスペ買取:https://www.insupekaitori.com


Non Brokers 株式会社
東峯一真

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