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なぜ、かぐや姫は生まれなかったのか(放棄竹林のお話)

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もし、現在の小田原の竹林にかぐや姫が宿るとしたら。
かぐや姫が居る、根元が光る竹を見つけても、放棄竹林であるがゆえに、翁はかぐや姫と出会えなかったでしょう。

このポスターは皆さんご存知の『竹取物語』の舞台が、小田原の放棄竹林だったら、という設定で作りました。今回はそんな放棄竹林とはどんなものか、どんな影響があるか、について書きたいと思います。

放棄竹林ってなに?

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みなさんは放棄竹林がどんなものかご存知でしょうか?

放棄竹林は、所有者の高齢化などの理由で管理ができなくなった竹林のことです。放棄竹林では、人が通るのが難しいほど竹が密集し、鬱蒼(うっそう)とした竹藪になってしまっています。だから、もしかぐや姫が放棄竹林の中に居ても、翁は行く手を塞がれ、出会うことが出来ないのです、、、

では、小田原の放棄竹林はどんな様子なのか。実は小田原の放棄竹林の面積は、小田原城址公園の約10倍もの大きさに拡大しています。なぜこれ程に拡大してしまったのか、それには大きく分けて二つの理由があります。

一つは竹の成長スピードの速さです。竹はたった2,3ヶ月で筍から大人になり、1年でなんと約8mも成長するんです!

もう一つの理由は、竹の資材としての需要の低下です。かつて小田原では、物差しや提灯といったものに竹を使っていました。しかし、加工の簡単なプラスチックの普及や安価な中国産の竹の輸入により、国内の竹は使用されなくなっていきました。

この二つの要因から、どんどん竹は増えるのに竹の使い道がなくなり、その結果、放棄竹林が拡大してしまいました。

どんな影響がある?

それでは、放棄竹林はどんな影響を与えるのでしょうか。

まず竹自身の性質によって起きる問題として、竹の成長スピードによる、他の作物への悪影響が挙げられます。竹の成長スピードが早いということは、竹林の拡大も早いということです。放棄竹林は耕作地へ侵食し、その土地の養分を吸い取ってしまいます。また、竹林の影で作物に日が当たらなくなり、結果、作物が枯れてしまったり、未熟なものになってしまったり、といった農家さんにとって多大な被害を生んでいます。

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また二次的被害として、放棄竹林による鬱蒼とした竹藪が増えることで、猪などの害獣が隠れやすくなるということが挙げられます。竹林が害獣の隠れ家となり、その隠れ家が拡大していくと、必然的に害獣と農作物の距離、害獣と民家の距離は近くなってしまいます。放棄竹林の拡大は害獣被害の増加にもつながってしまうのです。

放棄竹林によって被害を受けるのは、何も竹取の翁だけではありません。農家さんや私たちでさえも、翁の立場になり得ます。

最後に

「放棄竹林じゃ、かぐや姫は生まれなかった。」
生えすぎた竹に行く手を阻まれ、かぐや姫に出会うことができなかった翁。
放棄竹林が拡大している今、もしかしたら、あるはずのさまざまな出会いがなくなっているのかもしれません。

『竹取物語』において、翁がかぐや姫に出会えたのは、「野山にまじりて竹を取りつつ、よろづの事に使いけり」とあるように、人々が竹を色々なところで使い、人が通れるほどに竹林の手入れが行き届いていたからでしょう。

では、どうすれば小田原の放棄竹林において、翁とかぐや姫は出会えるのでしょうか。
それは次回の投稿で。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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文責:もも・あけ

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