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二人で老いる【夫婦のこと】

ガンッ!

さっき、テーブルに膝をぶつけた。先週もぶつけたのに、まただ。
立ち上がろうとしただけで考え事もしていないのに、ぶつけた。
もはやぶつける気がないと無理じゃないってほど、勢いよくぶつけた。

年齢のせいか、最近そこらじゅうで何かとぶつかっている。
立ち上がろうとして膝を打ち、手を伸ばしたら肘を打つ。
物を取ろうと手をぶつけ、ただ歩いてるだけで足をぶつける。
距離感がバカになっているのだ。

私は慎重派なので、以前はそんなことはなかった。
危なそうなことは察知して、ぶつけても年に1回程度だった。
今だってちゃんと察知はしている。
したうえで、ガンガンッ!
先週は膝の上の方を打って、そのまま勢いで下の方も打ち付けた。
やっぱり距離感がバカになってる。
察知して距離も測れてるつもりだから、疑いもなく立ち上がる。
そもそもの距離が間違っているので、勢い任せに連続して打ち付ける。
年に1回だったのに、一瞬で2回…
老いるって、悲しい…

妻もよくぶつける。
もともと慎重な方でなく、むしろ色々と没頭するので、昔から本当によくぶつけている。
ガンッ!ゴンッ!ドンッ!
自分がぶつけない頃は、呆れていた。
心配もするにはするのだが、あまりにぶつけるので、
いい加減に学習したらと腹さえ立てていた。
今になって解る。
不注意だけではないんだ、注意してても避けれない。

ガンッ!
またどこかに妻がぶつかる。
ゴンッ!
しばらくしたら、私も何かにぶつかる。
二人で言い訳しながら、ぶつけたんじゃない、ぶつかるんだと共感する。
どれだけ痛かったかを自慢して、ここが痛いと湿布を貼り合う。

二人で老いるのは、悲しくも楽しい。

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