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ハーモニーの人、ジョージ:The Beatles「This Boy」2023年ミックスほか

昨年は、ビートルズのかつては定番だったベスト盤、通称「赤盤・青盤」の新装版が出た。1962~66年のベストである「赤」には、ジャイルズ・マーティンによる2023年ミックスがずらりと並ぶ。最新AI技術による初期楽曲の再構築。自分はYouTubeで試聴しただけで、CD購入には今のところ至っていない。AI導入による2023ミックス、とても良くて何度も繰り返し聴きたいものも多いけど、ちょっとやり過ぎに感じられたり、出来が粗かったりするものも混ざっていて、こういうのは困ってしまう。ビートルズのことになると好き嫌いが激しくなって、聴きたくないものは二度と聴きたくないのである。良いものは手元に置いて繰り返し聴きたいんだけど、聴きたくないものが混在しているCDは買いたくないというジレンマ。とりあえず今は、YouTubeで好きなものだけつまみ食いして聴いている。

「This Boy」の2023年ミックスは、断然「とても良い」方に入る。新しいミックスで良くなったことのひとつが、AI技術の効果なのか、この曲の美しい3声ハーモニーの各パートが明確に聞き分けられるようになったこと。3人の声が一体となって重なり合いながらも、ここはジョン、ここはポール、そしてここはジョージ、とそれぞれ明確な個性を持って響く。そうすると自分の耳はやはりジョージの声を追うことになって、こんなややこしいラインを歌っていたのか、と改めて驚いたりする(こうやって、ビートルズの「新曲」はこれからもいくらでも生まれるのだ)。ビートルズのハーモニーは、この曲のようにポールが上、ジョンが下、そしてジョージが真ん中に来たときが一番美しいと思う。低音はジョンの方がよく出るし、ジョージが中音域に入ると3人の声が一番いいバランスで融け合って、マジックが生まれるのである。ジョンとポールが歌っていない音を選びながら天性の勘で進んでいくラインの絶妙さ、音程の正確さ。本当にジョージはハーモニーの人だと思う。

もちろんジョージはギターでも見事なハーモニーを聴かせてくれる。「パーティーはそのままに」はヴォーカルもギターソロもハーモニーにあふれていて、何から何まで大好きな曲。ジョージはカントリーのスタイルを借りて、3声の和音が織りなす旋律を1本のギターで表現している。

ビートルズを卒業したジョージは、天から授かったスライドギターの才能を開花させ、多重録音によるギターオーケストレーションも駆使するようになって、誰もがコピーしたがる無敵のハーモニーを手に入れた。「慈愛の輝き」は今月の20日に発売45周年を迎えたばかり。

もう一人のハーモニーマン、ポール・サイモンと組んで声もギターも完璧に調和させた「Here Comes The Sun」の演奏は、ブログで何度も紹介しているけど、何度聴いても「最高」の言葉しか出てこない。ホスト役のポール・サイモンが「僕の友達、ジョージ・ハリスンです」と嬉しそうにジョージを紹介するシーンから、二人が人間としてもとても良く調和している様子がうかがえる。音楽でも人間関係でもハーモニーを大切にするジョージだから生まれた名演だと思う。

ハーモニー、調和とはあまりにも遠い現在の世界にジョージが生きていたら、どんなことを思い、発言し、行動したのだろうか。ごく月並みながらそんなことを思わずにはいられない2024年の世界で、この記事を書いたり削ったりしている間に、2月24日になった。たった今、81回目のお誕生日(1日目)を迎えたジョージ、おめでとうございます! (ジョージのお誕生日に1日目と2日目がある理由はこちら

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