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ペンは走らない

見た目に反して文学少年である。

僕は今日も文学少年らしい生活をすべく、なるべくシンプルな服装をして、高橋一生と星野源を足して2で割ったような表情を作り、併設されたカフェに未購入の本を持ち込みできるタイプの大型書店に出掛けた。

到着後すぐにテラスに近いソファー席に陣取った。僕は篠崎愛と野呂佳代を足して2で割ったような体系をしているため、腰が痛むのだ。おしゃれな丸椅子は固すぎる。MacBookも開かない。エンゲル係数が高すぎて高性能PCを買う経済的余裕がないからだ。

休憩や散歩を挟みつつ丸々6冊分の本を読み、気づけば5時間が経っていた。コーヒー代は470円だった。久々にギンギンにエネルギッシュな本に出合うことが出来た。

帰宅後「よし、帰ったらこのインスピレーションを何かに書き殴ろう。」と思い机に向かったが、ペンは走らない。それはそうだ。ただ本を読んだだけの素人のペンが、準備体操やアップもなく、いきなり走り出すわけがない。

ペンは走ることも歩くこともなく、まだ自宅で睡魔と格闘していた。

ペンは朝が苦手なタイプだ。8時に起きたい場合は7時45分、7時50分、7時55分、8時、8時5分…と5分刻みにiPhoneのタイマーをセットしている。さらに追い打ちをかけるようにスヌーズ機能で「マリンバ」が鳴る。眠い目をカチャカチャとこすりながら、ベッドを抜け出し白湯を飲むためのT-falのスイッチを入れた時には8時30分を過ぎていた。

「まずい、このままじゃ朝読書の時間に間に合わない、廊下で本を読まされるなんて勘弁勘弁~」

「今から行っても怒られるし、お母さんに電話して貰って具合悪いことにしちゃお~」

と、大体こんな調子に違いない。許さない。ペンのおかげで1時を回ってしまった。沢山タイマーかけて寝よ。






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