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百科事典の原稿を書いている20代の私に伝えたい―40年経つとChatGPT が出現することを

 JapanKnowledgeのコンテンツの一つになっている「日本大百科全書(ニッポニカ)」には、私が大学院生の頃に書いた原稿が掲載されている。
 たとえば、「ペンクラブ」とか「日本エッセイストクラブ」いう項目である。ごく短い原稿ではあるが、事典の原稿の場合、短ければ短いほど「ブラック」な状況に陥りやすい。事典であるということを考えると、正確な事実に基づいて書かねばならず、一次資料をしっかり確認することは必須である。そしてどんなに短い原稿でも、1つの項目について過不足なく的確に説明しようとすれば、膨大な資料を踏まえて書くことが求められる。
 ペンクラブについて書いたときも、インターネットなどがない時代なので、わざわざ一般社団法人 日本ペンクラブに足を運び、入手しにくかった『日本ペンクラブ三十年史』をもらい受けたことを記憶している。大学院生たるもの、確定申告とか必要経費のようなものとは無縁なので、電車賃はもちろん自腹である。こうしたことを数え上げたらきりがない。
 足を運んで資料を入手し、コピーをしたり筆写したり。とにかく手間ひまかけて資料を積み上げ、それをもとにごく短い原稿を書く。
 原稿料は労力で決まるわけではなく、長さで決まる。
 したがって、大学院生が手にする小項目の原稿料は、きわめて些少になるわけである。
 資料を積み上げ、読み漁り、要点をおさえて短くまとめるという知的な営為によって、事典執筆は成り立っている。

 つまり!!!!! これはまるで ChatGPT ((((;゚Д゚))))

 40年近い時を隔てて気づいてしまったわけだが、私がやっていた「ペンクラブ」や「日本エッセイストクラブ」の事典原稿執筆の仕事の内実は、ChatGPTの得意技なのである。

 ChatGPTなら、あっという間に関連する数多の情報にアクセスし、その内容を指示された字数に見事にまとめてくれるはず。

 タイムマシンがあったら、20代の私に伝えたい。

 「君が誇らしい気持ちで取り組んでいるその仕事は、いずれAIがオチャノコでやっちゃう単純作業なんだよ」と。


              未 

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