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小説「botにまつわるエトセトラ」 2021/08/25

bot、bot、botのマークのbot寿司、とはよく言ったもので、二十一世紀はbotの世紀と言えよう。……本当に言えるか?

扨(さて)、ここに、botに関する随筆を綴っておこう。


──なーにが〝随筆〟だ、ただの落書きじゃねーか!!!!! と、ひとりごとを揖斐川へ叫んだところで、今、全裸でベランダのハンモックに横たわり、夜風を独り占めし乍らこのポケベルを打っている。

兎も角、Eメールにせよインターネットにせよ、自動広告やらスパムやら姦しいことであるが、やあ、Twitterでザッピング(?)をしていると、botが散見される。
Twitterで出会うbot達は、営利目的とはかけ離れたbotも多い。愉快犯。または、アニメーションキャラクターになりきって、精神を慰める〝中の人〟達。なりチャ時代の亡霊も、少なくは無いのかもしれぬ。

botを分類すると、大きく分けて下記のようになる──と打ってから、その〝下記〟の内容を考えているが、どうも、pixiv R-18Gを閲覧し乍らの作業となるので、論理の破綻は御勘弁頂きたいし、そもそも、まだ打つ内容を考えていない。


おしっこ。


射精。


陰茎も、大忙しである。


扨、botであるが……。

①原本からの抜粋(小説や新書の一説であったり、アニメキャラ等の台詞であったり、有名人の語録であったり……。)
②抜粋ではないが同内容を繰り返し投稿するもの(中には営利目的の宣伝も。)
③その他(例えば、良くも悪くも〝中の人〟が出て来過ぎていて、botというよりなりきりアカウントの類になっている等)

〝その他〟という言葉は便利で、イレギュラーな変化球はそこにぶち込んでしまえば分類は破綻せずに済む。執筆者も、心安らかにハンモックにてペニスでタッチパネルを謳歌出来るというものだ。

例えば、この①②③全てと関わる変化球として、〝自分のbot〟というものがある。自分の既につぶやいた投稿──既(き)ツイートの内、気に入ったものや、一定の性質を帯びたもの(例えば、音楽理論に関するもの、農業に関するもの、地元の愛憎に関するもの……。)等をbot化する。
それらは、膨大なレパートリーが湯のように湧き出るbotになるかもしれないし、矮小で全力疾走中の二十日鼠を髣髴とさせる短サイクルなbotになるかもしれない。
併し、まあ、度合いは兎も角、ツイートの〝かぶり〟は発生する。


扨。


嵯峨の屋おむろbot。

例えば、嵯峨の屋おむろの「初戀」や「くされたまご」を抜粋しても、嵯峨の屋おむろbotだ。
また、嵯峨の屋おむろ関係の書物を定期的にPRするのも、嵯峨の屋おむろbotだ。(レイバンサングラススパムの二番煎じをやってみるのも、いいかもしれない。いいわけねーだろ。)
嵯峨の屋おむろ「初戀」や「くされたまご」を、先程の〝抜粋〟とは違い、最初から最後まで一文ずつつぶやく行為を、〝かぶり〟無し(再放送無し)で行うのも、そりゃあ嵯峨の屋おむろbotだ。

だが。

もし嵯峨の屋おむろ(1863─1947)が、己(おの)が矢崎家の末裔に、未発表の遺稿を残していたらどうだろうか。そこに、電子社会を予見した但し書きが、
[此尓於いてハ呉々も登録された利用者同士が交流すること能う個人所有之次世代的電光掲示板型電報機器における会員制之機能にて綴りし文々を解き放つべし。]
と、あったら、どうだろうか。

その内容をつぶやく際は最早、〝嵯峨の屋おむろbot〟というアカウント名に非ず、〝嵯峨の屋おむろ〟というアカウント名であるべきである。時間の隔たりはあれど、それらの言の葉は、死んではいない。死んでなぞいるものか。公式マークだって、つけたれ。嵯峨の屋おむろの、ツイートなのである。


ハンモックは既に、二十余名の警官隊に取り囲まれている。六度の射精は両(もろ)の隣人(となりんちゅ)を通報させるのには、充分だったようだ。
「おい! キミ、服を……その前に、スマートフォンを肉棒で……いや、あの、兎に角、大人しくしろ!」
一番前の若い警官が、泣き乍ら拳銃を構えた。

俺は、答えた。

「ベランダが、落ちちゃうぜ?」

次の瞬間!

《ガリリリリリリッ……ベキミシャ……ガラガラガッガッガガガガガ!!!!!!!!!!》

築十年ではあるが欠陥工事である上、抑(そもそ)も、二十余名も乗っているのだ。ベランダは、音を立てて、その生涯を終えた。

「「「「「うわああああああああ!!!!!」」」」」

警官隊も、位置エネルギーには勝てまい。ここは襤褸アパートの二階。二階なら本来対したことはないのだが、地形がまずかった。丁度ベランダの下は崖になっており、全員、六十米(メートル)は落下を余儀無くされた。

「「「「「うわああああああああ!!!!!」」」」」

警官隊、叫ぶ、叫ぶ。私は既に脱糞して気絶済みなので叫びもしていない。

若い警官が、絶叫した。
「××××様ァ!!!!!!!!!! お助けェ!!!!!!!!!!」
×××× には、魔法少女の名が入る。渠はその魔法少女を、神と──そう、女神と、崇めているらしかった。
(尤も、渠が叫んだ名は、変身前の名であった。そこら辺の信仰の機微、塩梅は、私の知るところのものではない。)

渠の手から、拳銃が離れつつあった。

渠の拳銃と私の陰茎が、接触(こんにちは)をした。

この先、どうなるかは分からない、等と、悠長なことを考える私の陰茎では無かった。

落下という現象も、残り少ない。

数秒後には、皆が、ぐちゃぐちゃになっている。

私の陰茎は、拳銃の筒を、鍔迫り合いを行うようにして滑り、引き金を二度、刹那の裡(うち)に、思いっ切り引いた。


《パァニ!!!!!!!!!! パァニ!!!!!!!!!!》


美とも善とも無縁な、二つの弾は、通報者たる両隣人の頭蓋骨のド真ん中を見事貫通し、襤褸アパートの玄関前の花壇へと到着した。

花壇には、やはり、美とも善とも無縁な蟲共が、何やら一世一代の戦争をしていたが、二つの弾は、或る一方の軍の長(おさ)と副長(そえおさ)の生命を即座に終焉へ為し果(おお)せた。


蟲の世は、確実に変わるだろう。

蟲〝だけ〟なものか。
宇宙船地球号は、そんなに──孤独を赦す程──〝甘く〟は無い。
(貴方が死ぬその病室が、個室だとは限らない。同様に、貴方が死ぬその襤褸の小部屋に、看取りし朋友や家族なぞ居るとは限らない。)

世は、確実に変わるだろう。
何(ど)れ程? ──それは分からない。
バタフライエフェクトは、常に、どの町内会でも、毎秒、起こっているのだから。


少なくとも、陰茎は、仇を討ち、蟲を屠った。






現(うつつ)の、世と、同じ。




そこに美はない。


そこに善は無い。


真があるのみ。




〈了〉



非おむろ「botにまつわるエトセトラ」
(小説)2021/08/25

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