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学園デスパネル2022

朗読劇「学園デスパネル2022」
初回(7/13日夜公演)を観劇しました。
自分用の備忘録と感想です。

【ストーリー】
現在、小説家としての才能を開花させた『長瀬』は新たに連載を始める出版社との
打ち合わせの席で、かつてのクラスメートと再会する。
学生時代の他愛もない話に盛り上がる二人だったが、ある事件のことを思い出す。
15年前、放課後に突然姿を消して、二度と戻ってこなかった『K.S』のことを。
それから『長瀬』は、いてもたっても居られず、15年前の失踪事件を調べるため、
かつてのクラスメート達を訪ねはじめる。
徐々に明らかになっていく、消えた『K.S』の行動と、膨らむクラスメート達への疑惑。
神隠しか。誘拐か。それとも・・・。
知りたくない真実へと、怒涛の言葉の海で一気に導く、
朗読サイコ・ミステリー『学園デスパネル』
―ラスト5分 あなたは席から立ちあがれない―。
朗読劇「学園デスパネル2022」HPより



今までも違った演者さんで朗読されていたのは知っていましたが、実際に観劇するのは初めてでした。
昔からミステリ小説を読み漁っていた類の人間なので、『サイコ・ミステリー』の言葉にワクワクしながら会場入りしました。

まずはあまりネタバレにならない感想から。
音響と、スクリーンに映る背景的な画像がめちゃめちゃいい味出してた。演出も相まって世界観にすっと入っていけました。現実味のある設定なのも後押ししたのかも。

あとはモノローグと掛け合い、どっちもたくさんあって観劇し応えがありました。セリフ量も多くて大変そう。モノローグが多いことによって、想像で補うところが多く残されるので、色々考えながら聴くことができました。
何度見ても、掛け合いとかがブラッシュアップされていき、面白いんだろうなあ……。

出演者さんの話もしましょう。個人的感想です。

主演の長瀬役、濱さん。朗読劇慣れてるんだろうなってのをめちゃめちゃ感じました。声のトーンはもちろん、表情や動きで、長瀬の素直なところがすごく出ていたと思います。何度かお芝居見させていただいたことがあるのですが、やっぱりうまいんだわ。

出版役、澤田さん。落ち着いた雰囲気が、本当に出版社にいそうだと思いました。声のトーンも落ち着くし。それでいてどこか強かと言うか、ちょっと奥底は見えないところがあってとても魅力的なキャラクターになっていたように感じます。

社長役、松田将希さん。第一印象は、お顔が整ってる方だなあ、でした。聴こえてきた声が想像していたよりもかっこよくて、でもどこかあどけなさも残っているような。悪戯好きの社長にピッタリだなと思いました。

巡査役、田中さん。仕事モードで頑張って圧を出してるところがとても良きでした。普通に話している時はどこか柔らかくて、いい人なのが伝わってくる。

リーダー役、綾切さん。純粋に、リーダーって結構難しい役なんじゃないかなって思いました。明るくて、たくさん葛藤して、人間らしさがすごく感じられました。明るくしてくれるのも、真剣なところも、どちらもかっこよかったです。

メガネ役、松田浩毅さん。もうずっと朗らか。本当に小学校の先生にいそう。表情で魅せてくれるのがわかるから見ていてとても楽しかったです。

K.S役、宮﨑さん。感情に訴えかけるような、世界観にグッと引き込まれる演技をする方だなと思いました。何書いてもネタバレになっちゃう気がするからネタバレ含みつつ後述します。

この先、

「ネタバレを盛大に含みます」

ので、これから観劇予定の方は観劇後に読むのをお勧めします。

あと、自分の記憶を頼りに書いているので違うところあったら本当にごめんなさい。先に謝ります。


物語は長瀬役、濱さんの語りから始まります。
暗闇のようなところでもがいていたところ現れるのがK.S。子どもの声?と長瀬はK.Sのことを知らない様子。
しかしK.Sはしっかりと「長瀬くん」と呼ぶのです。

モノローグ多めなんだと悟りました。そう言う物語好きなので。笑
2人が苦しそうに話すところも、どこだかわからずに若干焦って話す様子も、ぐっと世界観に入っていけました。何が起こっているんだろう、そうわくわくしていきます。

舞台も明るくなり、それが夢だと気づく長瀬。
どうやらこの後は大手の出版社と打ち合わせのご様子。
その打ち合わせ先で再開する、「出版」
小学校以来15年ぶりの再開。出版の、強引なところも、長瀬の好きなことにしか興味がないところも、何も変わっていなかった。

出版のモノローグが、長瀬とリンクしすぎていて、さすが親友、と思いました。全部お見通しやん。
久々の再会に喜ぶ長瀬が可愛かった。



出版と長瀬の2人はとある料亭へ。
その料亭で再開するのが、「社長」
大手ゲーム会社の社長らしい。2人を見かけた社長が声をかけてきたのだ。にやついてしまう悪戯好きなところが可愛らしい。
3
人で、小学校時代を語り合ったり、かつての親友が今何をしているのか話したり。
3
人で昔話をしていた時に触れられる、「K.S」の話題。
長瀬は、K.Sのことを全く覚えていなかった。
出版と社長の2人はこの話題に踏み込もうとしない。
帰り際、K.Sのことを知りたければ、彼に会いに行くといい、そう言われるのだった。

いろんな人の話題が出てきてましたね。
小学校時代の親友とはいえ、15年ぶりに会ってこんな話せる!?とも思いましたが、それだけ仲が良かった証拠。親しげなやりとりは、大きくなっても変わらないのだなぁ、帰ってくる場所があるっていいなと思いました。

この辺りで、登場人物の名前を言う際、長瀬が「この物語の上で」と言うような前置きをしていました。それを聞いた時に、これは何かの物語を読んでいて、書き手が別にいるんだろうなと思いました。長瀬本人が書いた話というより、長瀬を主人公として、誰かが書いた話なのではないかと思いながら話を聞き進めました。

辿り着いた先は、とある交番。
そこで出会ったのはこれまた小学校時代の親友「巡査」
巡査は、K.S失踪事件について、自分で色々と調べたそうだが、結論は「わからない」。ただ、1人だけ何も証言しなかった人物がいるというのだ。その彼に会いに行くため、長瀬は再びタクシーに乗る。

タクシーの停車位置を注意しようとしたら、出てきたのはなんとびっくり勝手の親友!……って顔ちゃんとわかるんかーい!の気持ちでした。そりゃあ作家大先生ともなればマスコミにも顔出しで出てたのかな???
事件について自分なりに調査していた巡査。まとめた資料を一緒に見て話すくらいだったので、この2人がどんな会話をするのか気になりますね。

巡査から聞いて会いに行ったのは、「リーダー」
昔から正義感が強かった人物だ。
どうやら彼は、最近まで服役していたそうで、現在はガソリンスタンドで働いている。服役していた理由が、集団で襲われていた女性を助けた際に、過剰にやってしまったよう。正義感が強すぎる故だ。
彼は何かを知っているようだったが、教えてくれない。
ただ、知りたければ小学校に行け、そう言うのだった。

リーダー出てくると明るくなるんだよな笑
爽やかイケメンって感じ。前のシーンで出てきていた小学生時代の話で、正義感が強いけど強すぎるが故にカッとなるのも早いのかなって思っていたので、服役の話聞いた時驚いたけど納得。
急に小学校の校歌?歌い始めたのは流石にびっくりした。
リーダーは何かを知っていて、鍵になるのだろうと改めて思ったシーンでした。話したくないのか、話せないのか。リーダーの表向きの明るさと、内側に秘めた闇が大きすぎる。
それと同時に、長瀬が何も覚えていなすぎることへの違和感も大きくなってきました。

リーダーが貸してくれた車を運転し、母校へと向かう長瀬。
母校で迎え入れてくれたのは、現在母校の小学校教諭になった「メガネ」
ちなみにレーシック手術をしてメガネではなくなっている。
2
人で一緒に校内を回る。

ふと、焼却炉を目の前にした時、長瀬は意識を失った。

いや、メガネしてないんかーい!!なんなら出版の方がメガネやんけ!!!!というツッコミは置いておく。
行ってみたら何かがわかるのだろうと思っていたが、そんなこともなかった。夜の学校なんて普通に怖くない??しかも昔子ども失踪してるんだよ??わんちゃん心霊現象かもしれないからね??なんて考えていたら焼却炉でぶっ倒れるんだからビビる。
でも、その焼却炉にK.Sがいるのかと悟った。
なんなら実は覚えていない長瀬が閉じ込めたんじゃないかと。

目が覚めると、保健室に寝かされていた。
きっとメガネが寝かせてくれたのだろうが、姿が見当たらない。
聞こえてくるピアノの音をたどって音楽室へと向かう長瀬。誰かいるのかと声をかけると響くピアノの音に、一目散に逃げ出す。偶然扉の開いていた部屋に飛び込むとそこは理科室だった。
静寂が恐怖心を煽る中、落ち着かせるために周囲を見ていると、とあることに気がつく長瀬。  
「これ、ドッキリじゃん」
昔と同じ演出でドッキリをかけられていたのだ。
気がついたことがわかり、姿を見せるメガネ。
メガネだけでなく、出版、社長、巡査、リーダーも揃っていた。

いや、普通にホラー。
ホラー展開くるのかと思った。ドッキリかーい!!
まあ流石にメガネが倒れた親友寝かせた後1人にして呑気に帰りはしないだろうと思ったけど!!
どうでもいいけどプレパラートって響きが懐かしすぎて笑っちゃった。
気がつけば全員集合してるし。15年以来とはいえこの1日濃すぎん??日付変わってるけど。

全員でかつてのクラス、6B組へ。
当時を懐かしんでいたが、話題はやはりK.Sのことになる。この話題になるとみんな口数が減る。
そんな中メガネが、「焼却炉に行こう」と口にする。
ツルハシを持って、みんなで焼却炉へと向かった。
焼却炉へと向かうと、レンガが崩れたような場所がある。
ここは、彼らが秘密基地として、かつて遊んでいた場所だった。
崩れたら危ないから、そう言って教師になったメガネはコンクリートで入口を固めたらしい。

自分たちしか入れないように、見つからないように決めたルール。
「小石を挟むこと」
それは、入り口を固める前もそのままで、どうやら15年前から変わっていなかったよう。
すなわち、失踪事件後ここは調べられていないことになる。

いや、K.Sここにいるのほぼ確実じゃん!って気持ちでした。しかも秘密基地なんて絶対みんな何か知ってる……。入ってから誰かがしめないと小石挟めないじゃん……と。やはり誰かが意図的に閉じ込めたんだと思った。

リーダーが、ツルハシを使ってコンクリートを壊す。
昔から、人が嫌がることを率先してやるのがリーダーだった。
中に入ると、子どもの遺体。
K.S
だった。
誰にも見つからないまま、15年もここにいたのだ。

あー!やっぱりー!!!ですよねーって気持ち。
あと、リーダーやっぱり何か知ってる。でもリーダー一人で閉じ込めたというわけではなさそう。そんな気がした。


K.S.
役の宮﨑さんの一人芝居。
小学生の頃の、よくある放課後の話。
いつもいつも、仲良く遊んでいたようだ。

「また明日」の無邪気さが印象的でした。
ゆうやけこやけが流れてきたら、みんなとお別れ。その音楽がこわいと感じるのだから実に子どもらしい。
K.Sは素直な良い子で、ちょっとドジ。そんな印象。ノートには何が書いてあったんだろうな、なんて。

警察が来るまでみんなを職員室に行くように誘導する巡査。ただ1人巡査とともにその場を動かない長瀬。
小石が積まれていたと言うことは、この中の誰かが外から閉めたことになる、そう気がつく。
何か知ってそうなのはリーダーだ、と言う話題を出した時、リーダーがやってくる。
リーダーが、K.Sが当時の自分の好きな人と仲が良かったから、嫉妬してやった行為だったと話すと、出版と社長がやってきて、リーダーを殴る。リーダーは気を失った。

はいきた急展開。
やっぱり誰かが何かを知っていて隠していることになるけど。リーダーの言っていることは一部正しいが、完全解答ではないのだろうと。
たぶん、ここにいる全員が共犯なんだろう、そしてリーダーは一人でその罪を背負おうとしているんだと思いました。

デスパネルごっこ。
無罪か死刑かを決める遊び。死刑とは言ってもくすぐったり、みんなの分のランドセルを持ったりするようなことだった。
その日は、リーダーが考えた暑さ我慢の刑、とのことで秘密基地に入れ、炭を焚かせた。
ただの悪ふざけだった。帰る時には、出すつもりだった。
開けた際にぐったりとしているK.Sを見て、寝ているだけだと思い込むことにして再び閉めたのだ。

いわゆる、みんな共犯だ。

ここでタイトルが回収される。
デスパネルってそういう意味だったのかと納得しました。小学生らしい遊びだなって。回想シーンで無邪気に遊ぶK.Sを見て、すごく泣きそうになった。

死んで償わなければいけない。
ただ、彼らはもう子どもではなくて、守るものがあった。
「お前が、あんな小説を書くからダメなのだ」
長瀬が書いた小説は、どうやら自分たちの小学校時代のことを無意識に描いていたらしい。
長瀬は、K.Sと共に焼却炉へと閉じ込められる。
そこで、K.Sとの再開。

あー、そういう感じ?バッドエンド?全部彼らの掌の上で転がされてた??なんて思いました。
この聞いている物語が、長瀬がかつて書いた小説?とも思ったけれど、やはり何かが違う気がした。長瀬は、主人公であって書き手ではない。
そして長瀬とK.Sのシーンではぼろぼろと泣いた。僕はちっちゃいままだけど、長瀬くんは大きくなったんだね、まずそこで泣いた。本当は忘れてほしくない、そう言って泣くK.Sが本当に、本当にしんどかった。また失敗しちゃった、って。本当に心が痛かった。
そして、もうK.Sのことは忘れない、そう誓って長瀬も目を閉じる。苦しいけれど、美しいなと思った。

舞台が暗転し、演者がはける。
真ん中に立ったのはK.S役の宮﨑さん。
「この小説を、事故で亡くなった、かつての親友、長瀬に捧ぐ」

すごく腑に落ちた。
ずっと誰かの物語を聞いているのはわかっていたが、書き手が誰なのかわからなかったから。覚えているセリフは若干違うかもしれないが、亡くなっていたのはK.Sではなく長瀬の方だったのだ、それがわかった瞬間に、なるほどなあ、と思った。

物語の中で描かれていた小学校時代の親友たちは、本当はいい奴らなのかもしれないし、本当はこれが、K.Sが物語風に書いた真実なのかもしれないし。
いろんな考え方ができる。
今考えたら、伏線も色々あったんだろうなとも思った。

本当にこの話は面白かったし、難しかった!!
理解が深まればまた、見えることも変わってくるのだろうと思いました。
これから公演を重ねて、どういう風に演じ方が変わってくるのか、楽しみです。



私もこんな物語、書いてみたい。

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